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20-2 サファイア様に会いにアカデミーに行こうかな

2023年1月22日-誤字修正。

『猫のパン』を出て、学院につく。

 つつがなく午前中の授業が終わり、昼休み。

 私はサファイア様への手土産を持って、敷地を共有するアカデミーへと向かう。


「学院で探すと目立っちゃうでしょうから、なんとかアカデミーでお会いしたいところです。

 でも、アカデミーってあまり行ったことないから、どんなふうに会いに行けばいいかもわかりませんけれど。

 とりあえず、受付かどこかで、差し入れを持っていきたいからいる場所を教えてほしいとか言えば、なんとかならないでしょうかね。

 あ、でも、まずはいらっしゃるか馬車でも探してみますか」


 ブツブツつぶやきながら、学院の馬車溜まりへと向かう。

 公爵家の馬車なら送迎のたびに戻っているかも知れないが、サファイア様の馬車はご自分のものだと聞いた気がする。それなら、学院に置いてあるかもしれない。


 馬車溜まりにつくと、馬を外した馬車がいくらか置いてある。


 !

 あれですね。


 魔力の塊のような馬車。

 そんな馬車は、2つとなかった。

 間違いなく、サファイア様の馬車だ。


「あら、レンガ。

 こんなところで、何をしているのです?」


 突然後ろから声がかかって、驚いた。

 振り向くとそこにいたのは、まさにこれから訪ねようとしていた相手、サファイア様だ。


「あ、ご機嫌麗しう!

 サファイア様に、お会いしたいと思いました!」


 考えていた言葉も頭からなくなってしまって、一生懸命口に出した言葉は、どこかおかしな感じになってしまった気もしたけれど。


「そう。私も会いたかったわ。

 いらっしゃい」

 サファイア様はそう言って、私を馬車の中へと案内してくれた。


「私を訪ねてくれたということは、この前の鳥のことかしら?」

「はい、そうです。

 でも、サファイア様の方は大丈夫でしたか?」

「問題ありません。

 すべて、大過なく対応しました」

「龍とか、いかがですか?」

「まあ、少し元気になってしまったみたいですね。

 でも、私の封印の研究のほうが、先を行っていますから」

 こともなげにそういうと、飲み物を取り出して、私にも「いかが?」と勧めてくださった。


「それで、貴女の方はなにかわかったのかしら?」

 サファイア様の問に。

「はい。実は……」


 私は、

 あの鳥は不死鳥だったこと、

 理由はわからないが私の中に取り込まれたこと、

 ユーリ様に助言いただいて魔力制御でコントロールを試みたこと、

 意思疎通が出来て、協力関係になったこと、

 ちなみに、『ヤキトリ』と名付けたこと、

 をお話する。


「わかりやすくて、なかなか良い名前ね」

 サファイア様は、どこか楽しげにそう仰ると、

「意思疎通と協力関係、羨ましいわ。

 私も、この龍とそんな関係を築ける可能性があったのかしら」

 そう言いながら、胸に手を当てられる。

 その所作は、妙に色っぽく見えた。

 でも、そのあとゆるゆると首を振り、

「その可能性は、なさそうね。

 この封印は、私の臆病さの証。

 レンガのように面と向き合うことは、私には難しいでしょう」

 首元のチョーカーに手を触れる。


 それからサファイア様は私の方に向き直り、

「レンガ。強い力と向き合うものとして、あなたを尊敬します。

 できれば、これからもお話する機会を持てると嬉しいわ」

 そんなふうに言ってくださった。


 そして、サファイア様は思い出したように。

「そういえば。レンガ、食事は?」

「まだです」

「それじゃ、一緒に食べましょう?」

「あの、差し入れにお菓子をもってきたのですけれど」

「気遣い、嬉しく思います。

 せっかくだし、いただきますね」


 そして取り出したお菓子。


「クロスロード風のお菓子ね。

 12階の甘味処で食べたことがあるけれど、これもなかなか美味しいわ」

 12階、市場の塔の最上階ですね。あそこでも食べられたんですね。

「私は、すあま、というものが気に入ったけれど」

「今度、お持ちしますね」

「お昼に、この馬車を訪ねてください。たいてい居ます」


 そんな約束をすることになったのだった。


 そうだ。

 ミイツ様に龍の呪いのことを調べてもらっているけれど。

 ご本人がいらっしゃれば、もっと良い知恵が出るかもしれません。

 サファイア様を研究会に誘ってみましょうか?

 私がそう口を開けかけたとき。


 コンコン、コン。


 妙なリズムで馬車の扉がノックされた。

「どうぞ。お入りなさい」

 サファイア様が扉を開けて中に招き入れたのは、メリーダ様だ。

「あら? こんにちは、レンガ様」

「こんにちは、メリーダ様」

 少し驚いた風のメリーダ様に、返事を返す。

「あなたたち、随分親しいのね。

 良いことだわ」

「はい。エメラルド様には、とてもお世話になってます」

「私の前ではメリーダでいいわ」

 サファイア様は私にそう許可をくださると、メリーダ様に私が差し入れたお菓子を勧められた。

「ほら、これを」

「これは、キンツバですか?」

「ええ。レンガがくれたの。美味しいわよ」

「拝領いたします」


 メリーダ様もお菓子をほおばる。

 メリーダ様の顔が、ふわっと微笑んだ。

 ……なんだか、かわいいですよ?


 甘いものは、みんなを笑顔にする。

 私はそのまましばらくお話をして、メリーダ様と一緒にクラスに戻ったのだった。


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