19-4 『ヤキトリ』とはいったい?2
私が自身の魔力を全然理解していないと、ヤキトリは言う。
「それでは、私がご主人さまの魔力制御をサポートしてみたら、いかがでしょうか?」
私から与えられる魔力が少ないと文句を言っていた『ヤキトリ』が、そんな提案をしてきた。
「いちど試してみませんか?
ご主人さま、魔力制御というのをやってみてください」
『ヤキトリ』も、自分の栄養のためだからか、随分と熱心だ。
それじゃ、やってみますか。
これで魔力制御が進めば、私にもありがたいですし。
「わかりました。いきますよ?」
私は、もう一度魔力制御を試みる。
「…ふーん?
なるほど」
それを見ていた『ヤキトリ』は、何やら少し考えたあと。
「ご主人さま、いちど私の目でご自身をご覧ください」
『ヤキトリ』の姿が炎へと変わり、私の体を包む。
驚いて、身構え目を閉じた私に。
「大丈夫です、ご主人さま。
どうぞ、目を開いてください」
『ヤキトリ』の声が、優しく響いた。
ゆっくりと目を開ける私。
すると。
私の体は、身長の数倍はある炎に包まれていた。
燃え盛る炎は激しく、その溢れんばかりの力を伝えてくる。
でも、この姿。これは、いつか見た『ヤキトリ』の……
「あらためまして、ご主人さま。
ご一緒できて、光栄です」
本当に嬉しそうな、ヤキトリの声が聞こえる。
「いまご主人さまの眼には、ご主人さまの魔力が炎になって見えていると思います。
ご主人さまの魔力の多くが私由来で、魔力的には炎属性になっているので、そのようにしてみました」
これが、『ヤキトリ』の魔力!
魔力のある場所と量と流れが、目に見えてわかる。
キョロキョロと周りを見回して、その力強さと呆れるほどの量に、感心とともに納得した。
腕を持ち上げてみると、炎の翼が舞い上がり。
…そして。
ごく僅かに。
炎の内側、私の体にまとわりつくような、黒く不定形のなにか。
「ご主人さま本来の魔力は……すいません、私でもはっきりと把握できませんでした。
いまは、黒いものが体にへばりついているように見えているかと思います。
たしかに、こちらは私の力にくらべたら、ごく僅かのようです。
ご主人さまは、私の魔力を見ることなく、ご自身の魔力だけをご覧になっていたのではないでしょうか?」
『ヤキトリ』の、真摯と思える声が続く。
「ご主人さま、私を見てください。
ご主人さま、私を受け入れてください。
経緯はともあれ、いまはもう、私とご主人さまは一体の存在。
私は、ご主人さまのために、この力を使うことを惜しみません」
「それが、あなたの気に食わないことでもですか?」
「それは、相談しましょう?
これから一緒、時間はありますよ。
でも……」
ヤキトリの言葉が、一瞬止まる。
私は、聞き返す。
「でも?」
「でも。
もしご主人さまがどうしてもと望むのなら。
私は、自分の意思に反していても、ご主人さまの力となりましょう。
そのくらいの覚悟は、ありますよ?」
私を包む炎が、笑って揺れたように感じた。
「……わかりました。
ありがとう、『ヤキトリ』。
そして、今までひどい態度だったと思います。ごめんなさい。
どうかこれからは、私と一緒に生きてください」
私がそう言うと。
目の前の炎は消え、私の前には平伏する『ヤキトリ』。
その姿が、私にはこの上なく厳粛なものに見えた。
「では、あなたを喚ぶ時は、あなたと一緒に魔力管理をしましょう。
あなたに与える魔力は、あなたが勝手に持っていくんですか?」
「それは、ちゃんと許可をもらいますよ」
『ヤキトリ』は微笑って言う。
「でも……、なんというか。さっきまでのご主人さまの所業は。
持っていた食料の全てを取り上げられて。
その後与えられるのは、今をなんとか生きていくのが精一杯の、雀の涙ほどの食料。
それはもう、虐待というべきものでした」
「ウフフ。
不死鳥の涙が流れてしまうところ、でしたか?」
「はい。
命の炎も消えてしまうかと思いました」
そんな冗談を言いながら、笑いあう。
ちょっとすれ違いもありましたけれど。
私達、どうやらいい関係を作っていけそうですね。
「それではご主人さま、今回はこれにて失礼しますね。
どうぞ、またお呼びください」
最後に『ヤキトリ』がもう1度平伏して燃えるように姿を消すと。
気がついたら、いつもの私の部屋。
目の前には、さっきまで読んでいた私の本。
「ああ、この現象についても、『ヤキトリ』に聞いておけばよかったですかね」
でも、もう焦りは感じない。
『ヤキトリ』には、いつでも会えますから。
さて。お洗濯とか、しなきゃですね。
家の用事、学院の課題、次の家庭教師の準備もしていたら、いつの間にかもう夜だ。
食事をして、入浴をして、ベッドにはいる。
そして、いつものように肖像画に挨拶。
「パパ、ママ、新しい友達ができました。
ううん、友達というより、相棒でしょうか。
仲良くやっていきますから、みててくださいね」
そして私は、目を閉じたのだった。
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