19-3 『ヤキトリ』とはいったい?
「はぁ~。
不死鳥、ですか」
今日、学院図書館から借りてきた本を眺めながら、私は巨大なため息をつく。
「ほかにも、鳥の魔物はありますけれど。
ハーピーとかセイレーンは違いますよね。泉であった時は完全な鳥型でしたし、頭の中では完全な人の形みたいでしたし。
コカトリスは、サイズも違いますし、毒の攻撃はなかったので、ないと思います。
ロック鳥。サイズは合いそうですけれど、『ヤキトリ』は大きさだけじゃなかったですよね。
ガルーダなんかは怪しいですけれど、あの炎をあげながら回復していくところが、ちょっと違うような気がします」
そんなふうにたどり着いた、とりあえずの結論に。
「『ヤキトリ』が不死鳥なら、私の怪我とか治りませんかね?」
指の先を、ちょっと傷つけてみる。
いたい。血が出ました。
『ヤキトリ』みたいに、傷が治っるとき血が燃え上がったらどうしよう?あつくないかな?
とかちょっと緊張したけれど、そんなことは全然なく。
ポタ、ポタ、……
しばらく指の上でゆっくりと大きくなってから落ちる紅い雫を見たあとで、あわてて布を当てて強く押す。
なんですか!
期待したわけじゃないですけれど、ただ痛かっただけじゃないですか!
責任者、出てこい!
私が声も出さずにそんな文句を言ったら。
「私を呼ばれましても。
責任者は、ご主人さまだと思います」
私の後ろに、ヤキトリが立っていた。
「どうして!?
別に呼んでないですよ?」
「私を意識しながら、出てこいと仰ったんじゃないですか?」
あ、なるほど。
全身から抜けていく力に、私はあわてて魔力制御を試みる。
相変わらず、混沌ともいえるような魔力の中……1つ、随分とわかりやすい魔力の流れを感じた。
とりあえず、この部分だけでも魔力を絞って節約すれば、前みたいに倒れなくてすみませんかね。
そっと優しく包むイメージで抑え込んで見る。
「どうしたんですか、ご主人さま?
あぁ、私の力をもう少し抑えたほうが良いですか?」
「おねがいできますか?」
「それでは」
『ヤキトリ』がそういったかと思うと、さっき感じた魔力の手応えが小さくなり、体の脱力も鈍くなる。
「あの、もうちょっと、抑えてください」
もう少し、もう少しを続けて。
「これじゃ、私なにもできませんよ?」
『ヤキトリ』は不満そうにそう言っているが、私の脱力はようやく止まったのだった。
「ご主人さま、いくら私でも、なにも食べなければ死んでしまいます」
「『ヤキトリ』は、不死鳥じゃないんですか?」
「まあ、そうです」
「それなら、死なないんじゃ?」
「……言葉のアヤです。
正確には、活動休止状態になって、行動も思考もできなくなるかんじになりますね。
再生も復活もできない、ある意味、死よりもタチが悪い状態です」
「それは、さすがに悪いですね。
このくらいじゃ、足りませんか?」
「はっきりいって、だいぶひもじいです。
ご主人さまはこんなに魔力の蓄えがあるのに、どうして出し惜しむのですか?
ケチ」
えっ?
「出し惜しみなんて、してないですよ。
ただ、これ以上魔力を取られると、この前みたいに倒れちゃいそうなだけです」
「……ないわー」
ものすごいジト目で見られる私。
そんなことを言われても。
無い袖は振れないと、見つめ返す私。
一瞬が無限とも感じる時の中、見つめ合う私達。
先に目を伏せたのは、ヤキトリの方だった。
「ご主人さまが残念な方だということを忘れていました」
「鳥は3歩歩いたら忘れるといいますからね」
「酷い言われようです。
でも、ご主人さまは本当にその莫大な魔力をお持ちなことを、自覚されていないのですか?」
それでも『ヤキトリ』は、まだ私に問うてきた。
でも、その目はとても真剣なものだったので。
「……はい。
正直に言いますけれど、全然そんなふうには思っていません。
最近魔力制御の練習をしていても、とらえどころがないとは感じますけれど、莫大な大きさなんて感じませんし」
「……どういうことでしょう?」
すると『ヤキトリ』は、真剣な面持ちのまま、なにか考え込むようにして呟いた。
しばらくすると、顔を上げて、改めて私に問いかける。
「ご主人さま、気付いておられますか?
『不死鳥』たる私を内包したのですよ?
その魔力量は、本来なら人の身で受け入れられるものではありません。
それだけの魔力を、もうお持ちなのです」
いわれてみれば、そうかもしれません。
私は『ヤキトリ』のいうことに、少し考え込む。
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