18-2 『銀月』のみなさんに『ヤキトリ』の相談
晴れた休日の午前、私は大通りを歩く。
南へ、南へ。
旧城門を抜けると、それまでの石畳とレンガ造りだった街の景色が一変する。
木造、レンガ、石造り。白、黒、茶。
均一性は失われ、なんでもありの勢いが生まれだす。
やっぱり、新市街は賑やかですね!
たまにトラブルに巻き込まれたりもするけれど、私は大好きです。
おそらく許可など得ていないだろう、大通りの道端で営業している馬車の露店なんかを眺めながら、私は『銀月』さんの泊まる宿屋『ドーメル』へと歩いていく。
宿屋にはいると、吹き抜けの中空にある魔石から流れ落ちる水の音が心地良い。
「いらっしゃいませ」
「レンガと申しますが、『銀月』のどなたかはいらっしゃいますか?」
私が受付で用件を告げると、スタッフの人が確認に行ったようで、しばらくして『銀月』の皆さんが来てくれた。
「レンガちゃん、さっそく来てくれて嬉しいわ!」
セーラさんが抱きつく勢いで、挨拶してくれる。
「やあ、レンガちゃん。お互い元気そうでなによりだね」
グラントさんが、ニカっと気持ちのいい笑顔を浮かべる。
「おはよう、レンガちゃん。セーラ姉さんにパンもらったよ。美味かった」
ジャックさん、いえたぶん皆さんで、うちのお店のパン食べてくれたんですね。嬉しいです!
「おはよ、レンガちゃん。今日の服、カワイイね!」
レイランさんが褒めてくれ……たのかな?そういえば、学院の制服で来ちゃいましたね。ま、いいか。
「来てくれてありがとう、レンガさん。
すまないが、部屋を1つ借りれるだろうか?」
ガーランさんが宿の人に打ち合わせ用の部屋を借りて、みんなでそちらに移った。
「あらためて。よく来てくれたね、レンガさん」
借りた部屋から宿の人が出ていくと、ガーランさんが口火を切る。
「この前の討伐依頼は、魔物の討伐確認ができないということで達成にはならなかったよ。
でも、別の魔物にすでに倒されていて、脅威はなくなっていたことを確認したということで、討伐依頼の取り下げと特別報酬が出た。
ちなみに、ネイビィ様の調査依頼は達成扱いだ」
なるほど。
ネイビィ様が討伐対象を水竜と確認、
『銀月』さんが水竜退治の依頼を受けたけれどそれは別の魔物に倒された後だったから依頼取り下げ、
そこで『ヤキトリ』を発見したので特別報酬、
というかんじですか。
『ヤキトリ』の討伐失敗で依頼未達成にならなくて、良かったです。
依頼の未達成が増えると、冒険者としての信用が下がっちゃいますし。
「報告内容については、ギルドからの追求はあまりなかった。
まあ、実際に現場を見ても、なかなか他に説明もつかないだろうしね」
たしかに、まさか『龍の咆哮』が使われたなんて、なかなか考えもつかないでしょう。
そのあと、もう少し詳しい説明があった後。
「こちらの状況はこのくらいかな。
それじゃ、そちらで何かあれば教えて欲しい」
ガーランさんに促されて。
「実は……」
私は、説明していく。
どうやら、水竜を食べるほどの強力な鳥の魔物は、私の中に取り込まれてしまったこと。
原因はよくわからないこと。
名前は『ヤキトリ』になったこと。
その正体もまだ不明であること。
学院の知り合いに相談したこと。
『ヤキトリ』は私の中で安定している様子であること。
封印具の使用は避けて、魔力制御を学ぶことでコントロールしようとしていること。
「そんな強力な魔物が、レンガちゃんの中にいるの?
……その割には、たしかに魔力の乱れなんかは、ないわね」
話を聞いて、いちばん驚愕の表情を浮かべていたセーラさんは、しばらく真剣な顔で私を見つめた後、少し安心したようにそう言った。
「でも、そんな力を抱え込んじゃったら、色々トラブルも増えるわ。
レンガちゃん、無理せずに私達も頼ってね?」
それから続けてそう言うと、心配そうに瞳を揺らして、私の肩を柔らかく抱いてくれた。
セーラさんって、優しいですよね。情に厚いっていうか。なんだか、ママってこんなふうだったのかな、って思っちゃいます。
「だいじょうぶ、レンガちゃんなら、きっとすぐ飼い馴らせるって!」
グラントさんが笑い飛ばす。
根拠もなにもないけど、私の気持ちを軽くしようという気遣いが伝わってくる。
やっぱり、『銀月』の皆さんは、気のいい人ばかりだ。
「でも、話してくれて嬉しいよ。
まえに『悪魔』を調べていた時は、ずいぶん警戒されていたし。
少しは信用してもらえたかな?」
そういえば、そんなこともありました。
だけど、『銀月』の皆さんにはだいぶお世話になっちゃいましたし、それに皆さんいい人たちだってわかりましたから。
今は、できればずっとお付き合いいただきたいなと思うくらいには、信用してます。
「でも、『ヤキトリ』って!
レンガちゃんも、なかなかいいネーミングセンスしてるね!」
レイランさんは、聞いたときからずっとクスクス笑っている。どうやらツボに入ったらしい。
……べつに、狙ってつけた名前というわけじゃないですよ?
なんというか、なりゆきというか。
『銀月』の皆さんからは色々な反応があったけど、どれも温かいものだった。
でも、それがおさまるのを待ってガーランさんが切り出した話に、私はドキリと襟を正した。
「なるほど。
それじゃ、次はいま俺たちが冒険者ギルドから受けている依頼をどう進めるか、打ち合わせよう。
レンガさんにも参加して欲しい。
内容は、『怪鳥の調査』だ」
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