18-1 リャナに『ヤキトリ』の相談
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、リャナ」
「最近、マメに呼び出してくださって嬉しいですよ!
それで、今度はどんな困りごとですか?」
リャナはすました顔で、そんなふうに聞いてくる。
前は帰るところを見ていなかったので、少し心配しながら喚び出した。
だから、いつもどおりのリャナが現れてくれて、私は安心していたんだけれども。
いつも困ってリャナを喚んでばかり、みたいな言われようだ。
そして、それなりに当たっているので、私が返答に困っていると。
「ほら。
そんな変な顔してちゃ、男の子にモテないぞ?」
リャナは両手を伸ばして、私の頬を軽くつねった。
「べつに、男の子の知り合いだっていますよ。
それに、難しい話だから、どう話そうか少し考えただけです」
「そう?
そういえば、こないだ一緒に冒険した男の子たちは、なかなかいい男が揃ってたわよね。
ガーランくんと、ジャックくんと、グラントくん、だっけ?」
『銀月』の皆さんですね。
したかった相談に関係ないわけじゃないので、こちらも当たらずしも遠からずですか。
まったく、リャナは勘が鋭いんですかね。
「全く関係ないわけじゃないですけど、とりあえず先にこの前の『怪鳥』の話です」
「『怪鳥?』
ああ、この前戦った、大きな鳥?
なにかわかったのなら、力になるよ」
リャナは真剣な顔になって、私の方を見た。
私は、これまでのあらましを、正直にリャナに伝える。
「なるほどね。
妖精は他の妖精を取り込んだり、他のもっと強い存在に取り込まれたりすることもあるから、レンガちゃんにもそれが起きたのかな」
「人間では、あまりそういう話は聞きませんね」
「ほら、あのとき一緒にいた、サファイアさんだっけ?
あの人もどうも龍あたりと関係が深いみたいだったけど、レンガちゃんと似たような状態なのかも」
そういえば、リャナは倒れたサファイア様の姿を見てるんでしたね。
封印のこともすぐわかったみたいでしたし、妖精特有の感覚でもあるんでしょうか?
「なるほど。
そういえば、あれからサファイア様にはお会いしていませんけれど、なにか関係があるのかもしれませんね」
「いちど、相談してみたら?」
「でも、そんなに簡単に会える方じゃないですよ。
なんといっても公爵令嬢様ですし。
たしかに同じ学院生ですけれど、なかなか声をかけることも難しいです」
「あら、そうなんだ。
じゃあ、他にどこか出会えるところとかは、ないのかな?」
「うーん、お宅は無理でしょうし、貴族の方なら王宮やどこかのパーティとかなら会えるかもですが、私に行くアテがないですし。
街で偶然出会うなんで、狙ってできるものじゃないですよね。
あ、でも、サファイア様は、アカデミーの……
それなら、たしかになんとかならないこともなさそうですかね?」
「ふふふ。レンガちゃん、なんだか悪いことひらめいた顔してる!」
「そんなこと、ないですよ!
ちゃんと、きちんと問題のない方法で訪ねてみようかと思っただけです」
「はいはい。レンガちゃんは、品行方正ですこと」
リャナに笑われている。
「いちど今その『ヤキトリ』さん、喚んでみる?」
「うーん……
魔力制御の練習は、始めたばかりですし、まだ手応えもありません。
まんがいち暴走なんてことになったら洒落になりませんし、今はやめておきたいと思います」
「私の魔石みたいに封じるとか、できないのかな?」
「私の知る限り、妖精を魔石に封じるなんて例は他にないです。
さすが、神殿騎士の中でも最高位だったママの技術、なんでしょうか。
それに、それ以前にリャナの魔石と同じサイズのものなんて、どこでいくら出せば買えるかもわかりませんよ」
「ふぅ……ん。
それじゃ、ちょっと打つ手が思いつかないね」
「私もです。
とりあえず、いまはユーリ様のアドバイス通り、黙って続けてみようかと思っています」
「そのユーリさんって、信用できるの?」
「掴みどころのない方ですけれど、信用できると思ってます。
ママのいた『神殿』の偉い人でもあるみたいですし」
「そか。
お嬢様がそうお考えなら、私は精一杯お手伝いしますよ」
リャナはそう言うと、優しく微笑んでくれたのだった。
「それで、ギルドへの報告なんかでもお世話になってますし、『銀月』さんにも相談に行こうと思っているんですけれど」
「ふぅん。
どこまで話すつもり?」
「中途半端に話すと、却ってややこしいことになりそうな気がします。
もう『ヤキトリ』との戦いを誤魔化すのを手伝ってもらっちゃいましたから、全部話して最後までつきあってもらえないかと」
「なるほどね。
まあ、良いと思うよ。
私も、野営の夜や帰りの馬の上で話した感じじゃ、いい人たちだと思ったし、
レンガちゃんもけっこう人を選ぶ方だと思うから、レンガちゃんがそう思うなら、たぶん大丈夫でしょ」
「私って、そんなに人を選んだりします?」
「私は、レンガちゃんに厳しく選ばれた自信持ってるけどね?
大丈夫。レンガちゃんも、もっと自信持ちなよ」
リャナはそう言うと、私を優しく両腕で包んでくれたのだった。
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