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17-3 ミイツ様のお耳にはいるのは

「ふぃ~、つかれましたぁ~……」

 授業が終われば、いつもの研究会。

 ミイツ様が持ち込んだお茶請けのマドレーヌを食べて、魔力制御の練習を頑張った私は、ぐったりとテーブルに覆い被さっていた。

「おちゃ、どぞー」

 いつものようにユーリ様がお茶を出してくださる。

「まだまだね。

 でも、仕方ないわ。あなたの魔力は、人よりも掴みにくいもの。

 たゆまずにすることね」

「焦っても、仕方ないわよ。

 お疲れさま」

 シリル様とミイツ様が、声をかけてくださった。

 ラー様とミズナ様は、今日はご不在のようだ。


「そういえば、みっちゃん。

『アレ』のほうは、最近どうかな?」

 ユーリ様の問いに、私はうつ伏せたまま、耳を澄ます。

「変わりないわね。

 連合国の代表に1つ狩られたくらいかしら。

 とくに新しい発見は、いまのところないかな。

 怪しい事件も、おきていないしね」

 それを聞いて、私はびっくりする。


 連合国の偉い人たちが、先日から聖王国を訪れていたことは知っていたけれど。

 まさか、『アレ』と遭遇して、倒してしまうなんて。

 お怪我とかはなかったんでしょうか?

 それに、聖都のなかで『アレ』に襲われたなんて、国際問題とかになるんじゃ?


 私がそんな事を考えていたら。

「あー。

 連合国の代表は、そーいうの好きだものね。

 わざわざ探し出して狩ったりするんだから、こちらの面目がないのよ~。

『アレ』に襲われたって、ちらちらアピールするし。

 外交してるみんな、お話するの、だいぶめんどくさそうだったのよ」


 なるほど。

 わざわざ接触しておいて、それを外交交渉のカードに使われた感じなんでしょうか。

 でも、聖都に『アレ』がいることを、他国に知られているなんて。

 連合国の情報能力が優れているのかな?

 それとも、『アレ』の存在は、そこまで厄介なものだったのでしょうか。


 それにしても、ほかに手掛かりが見えなくなってしまったのは、私としては残念ですよ。

 適当に歩いてたらそこらへんにウロウロしているようだと、探すのも楽なんですけれどねぇ。


「しいて怪しい事件といえぱ、レンガ様がやらかした鳥の件くらいね」

 考え事をしていたら、ミイツ様が刺しに来た。

 ぐさりと。

 ミイツ様の言葉が心をえぐる。

 ……魔力制御の練習頑張ってますし、許してほしいです。


「冒険者ギルドは、サファイア様と『銀月』の報告を丸呑みしたわ。

 聖都周辺は、通称『怪鳥』対策で警戒態勢ね。

 国と冒険者ギルドが動いているわ。費用は、サファイア様が私財をそれなりに出すかたちで手打ちかな」

 ミイツ様は、いつもの笑顔で続ける。

「警戒しても空振りは確定だけど、被害にあう人や物がないなら、目くじら立てなくてもいいんじゃない?

 とはいえ、エメラルド様もサファイア様の尻拭いで、大変ね」

 ミイツ様はそう締めくくると、紅茶を一口含まれた。


 なるほど、メリーダ様がしばらく学院を休んでいたのは、『怪鳥』つまり私の中の『ヤキトリ』のことで、サファイア様のお手伝いをしていたのもあったみたいですね。

 ということは、メリーダ様もサファイア様の『龍の呪い』についても、ご存知なのでしょうか?


 それとは別に。

 もう『ヤキトリ』は私の中に居て、つまり襲ってくる怪鳥はいないから、それに備える皆さんには申し訳ない気がします。

 私も、サファイア様と一緒に少しはお金を出したほうがいいでしょうか?

 手元にそんなにお金ないですから、いちど学院長先生にパパとママの遺産のことをお伺いするしかないかもしれません。


「レンガ。

 もしあなたも費用を支払おうと思うなら、僭越よ。

 公爵家の絡む遣り取りなのだから、貴女は言われるまでは謹んでいるべきだわ。

 でないと、あちらで取りまとめた絵を壊すことになりかねない。

 邪魔になるのよ」

「シリル様は手厳しいですね。

 サファイア様のご厚意を無にすることはない、と仰りたいのよ」

 シリル様に心を読んだような指摘をされてしょんぼりした私に、ミイツ様のフォローが温かい。


 ミイツ様の言葉はたまにチクリと刺さることもあるけれど、基本的にいつも優しくて、そのお話は興味深い情報でいっぱいだ。

 どこからそんな情報を手に入れてきているんでしょう?


「ミイツ様は、お耳がはやいですよね。

 どこでそんなお話を聞いてこられるのですか?」

「みっちゃんの耳は、ウサギのお耳!

 大きくて、どんな噂も耳に入っちゃう!」

 ユーリ様が茶化しておっしゃる。

 ミイツ様のお耳は、普通の大きさですよ。

 きれいで、整った形をしてらっしゃいます。

「みっちゃんは、カムロ使いだよー」

 次にユーリ様は、よくわからないことを仰った。

 なんか、有名な探偵が使う武術に、そんな名前のものがあったような。

 一瞬、素手で『アレ』を倒すミイツ様を想像する。

 返り血に染まりながら、口元だけ笑うミイツ様を幻視した。こわい。


 それはさておき。

「カムロって、なんですか?」

「カムロは、情報関連を専門にする傭兵組織ね。

 神の狼という意味らしいわ」

 素直に聞いてみたら、ミイツ様から答えがあった。

「お知り合いなんですか?」

「そうね」

「ミイツ様って、意外なお知り合いがいるんですね」

 驚いて正直にそういうと、むこうでシリル様がクスリと笑われた。

「だから、もし知りたいことがあったら、いちどみっちゃんに聞いてみるといいのよー。

 でも、それなりの代償は覚悟しておくのよー」

 ユーリ様がそんなふうに仰るので。

「あの。

 それじゃあ、サファイア様の龍の呪いをなんとかする方法とか、わからないものでしょうか?」

 そんなふうに聞いてみると。

「レンガ様は、代償の意味をわかってらっしゃるのかしら?」

 ミイツ様は少し困った笑顔でそう仰った後、

「いちど、調べてみるわね」

 そう約束してくださった。

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