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17-2 学院の男子

『猫のパン』の次は、学院だ。

 いつものように教室に入り、いつものように授業。

 午前の授業も終わった頃。


 あれ?なにか落ちてますね。

 拾うと、ノート。

 中を見てみれば、授業の流れが図になって綺麗に整理されまとめられている。

 この字、よく知っています。先生のものですね。

 先生はもう教室を出ていってしまった。私は、職員室まで届けに行くことにする。


 職員室は、事務棟の中だ。

 雨も降っていませんし、外を歩いて近道しましょうか。

 整備された道を外れて。

 きれいに整えられた花壇の間を通り、木漏れ日を落とす木の下をすすみ、向こうの方に建物が見えてきたころ。


「危ない!」

 右手遠方からかけられた声。

 なんだろうと振り向いた直後、

 キイィィィィン……

 目の前の地面に、剣が斜めに突き刺さった。

「……へ?」

 硬直する私。

 あ、あんなもの当たったら、無事じゃすみませんよ!?

 当たりどころが悪ければ、命を落とします!


「君、大丈夫?」

「なんで、こんなところに女子がいるんだよ!?」

 こちらに駆け寄ってきたのは、2人の男子。どちらもなかなかのイケメンだけれど……

 はい、あなた正解。あなたは、大失格です。

「大丈夫です。けど、何が起きたんですか?」

 大丈夫?と聞いてくれた男子にだけ返事をして、話す。もう1人は完無視だ。

「ちょっと事情があって手合わせしていたんだ。まさか人が通るとは、思ってなくて」

「手合わせって、こんなところでですか?

 しかも、真剣ですよね。刃引きはしてあるようですけれど。

 規則違反ですよ?」

「うるさい、色々事情があるんだよ!」

 うるさいのは、あなたです。

「うん。あまり練習場とか借りれる理由じゃなかったから」

「いちいち、うるさい奴だな、お前。

 俺たちの事情だ、いちいち口を挟むなよ」

「そうですか。

 でも、事故になっていたら練習場を使えなかったから仕方ない、ではすみませんよ?」

「それは、そうだね。

 これから気をつけるよ」

「おい、こっちむけよ!

 だいたい、なんで女子がこんなところ歩いてるんだよ?

 ここは男子部の敷地だ。用もないのに男子部の敷地に入った、お前こそ規則違反じゃないか!」

 ああ、もう面倒くさい。

「揚げ足を取られても、困ります。

 それに、ここは事務棟とかと同じで共用部ですよ。男子部の敷地は、そこの植え込みからです」

「!

 こいつ、ああいえば、こういいやがって!」

 なるほど。

「ああ、あの剣の持ち主は貴方ですか。

 負けたから八つ当たりは、男性としてみっともないですよ?」

 私がそう言うと、うるさかった男子は、沈黙した。

 はい、ようやく正解ですね。

「でも、君もずいぶん冷静だね。

 普通なら、もっと驚いていると思うんだけれども」

 ああ、それなら。

「驚いてますよ。

 それ以上に、怒ってるんです。特に、謝りもしない彼に」

「なるほど。そのとおりだね。

 危ない目に合わせて、本当に、すまない」

 深々と頭を下げられた。もうひとりの男子が、ずいぶんびっくりしている。

「お、おい。

 そんな、誰かもわからないようなやつに、お前が頭下げて、いいのかよ?」

 どんな理屈ですか。誰だって怪我をさせそうになったら謝る、いたって普通のことだと思いますよ。

「そういうあなた方は、誰なんですか?

 お名前をお伺いしても?」

「なんで、おまえなんかに……」

「これは失礼しました、お嬢さん。

 僕はコランダム、こちらがスピネル、と申します」

 コランダム様が、スピネル……様の発言を遮って、名乗ってくれた。

「貴女はもしかして、レンガさん?」

「!?

 レンガって、女子部の”あの”レンガ=アイセ?」

 コランダム様は、私のことをご存知だったようだ。もうひとりのことは、再度無視する。

「はい。レンガと申します」

 コランダム様に、きちんと礼をする。

「レンガさんにこんなところで会えるなんて、ラッキーだな。

 あ、でも、こんな出会い方じゃ、そうとも言えないか」

 それでもコランダム様は、なかなか素敵な笑顔でそう仰った。

「ところで、初対面で悪いのだけれど、どうしてもお願いがあるんだ。

 ……今のことを、どうか黙っていてもらえないだろうか?」

「いいですよ。事情もありそうですし。

 でも、これからは絶対しないでくださいね」

「ああ、よかった。

 理由はあるにはあるんだけれど、それでも許されるわけじゃないからね。

 本当に、貴女に怪我がなくて、良かったよ。

 でも、良かったら、そのうちきちんとお詫びもさせて欲しい」

「べつに、いりませんよ」

「そう言わないでよ。

 せっかく会えたんだ。怒ってる顔だけじゃなくて、評判の笑った顔も見たいじゃないか」


「おーい!

 コランダム様、スピネル様、こちらにおいでなのですか!?」

「誰か来ちゃったみたいだね。

 僕らはもういかなくちゃ。

 ほんとにごめんね、レンガさん!」

 コランダム様は、そう言うと声の方に向かって歩いていった。

「……すまん、悪かった」

 スピネル……様も、そう言うと同じ方向に歩き出す。


「ああ、ノートを持ってきただけなのに、どうしてこんな事になったんでしょう?」

 はっ!そうです、急いでノートを届けなければ!

 結局、無事ノートを届けることは出来たのだが、私はお昼を食べることが出来なかった。


「……あぁぁ、おなか、へりました……」

 がっくり


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