表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/316

16-4 ある晩の『猫のパン』

2023年1月22日-誤字修正。

「おはようございます!」

 今日は学院で魔力制御の練習を頑張ってきたから、実はけっこう疲れていたけれど。

 また心配をかけたくないので、元気に挨拶して『猫のパン』の夜のお仕事にはいる。


 配達の仕事は、問題なく終わって。

 お店で品出しをしていたら……


「やっほ、レンガちゃん!」

「わあっ、セーラさんじゃないですか!」

「レンガちゃんが『猫のパン』で仕事をしてるって聞いてたから、来てみたわ」

「うれしいです!

 どれも自慢の美味しいパンですから、どうぞ召し上がってください!」

「レンガちゃんも、食べてるの?」

「いつも、食べてます!」

「店員さんがいつも買ってるパンなら、ぜひ試してみたいわね」

 セーラさんは楽しそうにそう言うと、店内のパンを眺めだした。


「なぁ、あれって『銀月』のセーラじゃないか?」

「あの、バゥム救国の英雄冒険者の1人の?」

「ゼルロー会戦でものすごい魔法を使って、相手の軍隊を潰走させたっていう、あの?」

「吟遊詩人とかが歌ってる通りの見た目だし、弟の持ってたカードのイラストにも似ているし」

「もし本物なら、すげぇな!」

 あちこちでひそひそ話が沸き上がる。

『銀月』さんって、本当に有名なんですね!

 さすがBランク、というか、Bランクでもここまで有名な冒険者さんは少ないんじゃ?

 いまから考えれば、凄い出会いをもらってたんですね。

 今更ながら、なんだか嬉しくなった。


「こんど、また私達の宿を訪ねてね。

 この前の報告も、したいし」

 セーラさんはパンを買ったら、私にそう言うと、ウインクをして帰っていった。

 私も、『ヤキトリ』のことを伝えないとですね。

 また近いうちに訪ねよう、そう思った。


「こんばんわ、レンガさん!」

 セーラさんを見送った私に、また声がかけられたので。

 見てみると、グレコくんとディエゴくんとハルメンスくんの3人が立っていた。

「もう来てくれたんですか?

 ありがとうございます!」

 朝『また来る』といってくれたけれど、まさかこんなに早く来てくれるなんて。

『猫のパン』を気に入ってくれたみたいで、嬉しいです。

「僕、フレンチトーストとクリームコロネと焼きそばパンとメロンパン、買います!」

「はい、ありがとうございます!」

 グレコくんが笑顔で言ってくれると、こちらまで笑顔になる。

「僕は、シチューに合うパンがほしいんですけれど」

「それなら、こちらのパンがおすすめです!」

 ディエゴ君のリクエストに、私はカウンター横のバスケットまで案内する。

「すいません、甘いパンはどのあたりになりますか?

 祖母と母と妹に持っていきたいので」

「タルトがあのあたり、シフォンとかがあのあたり、その他に焼き菓子があのあたり、ですね」

 ハルメンスくんは家族思いの優しい子なんですね。

「それじゃ、レンガさん、また!」

 そして、3人はそれぞれお目当てのパンを買うと、私に手を振って帰っていった。

 私も手を振って見送る。


「ふぅん。

 レンガはああいう男の子が、好みなんだね」

 扉がしまって振る手を止めた私に、かけられた声は含み笑いが混じっていた。

 えっ?

 よく知った声だったけれど、この場所で聞くのは意外だったので。

 すこし驚いて、振り返る。

「ラー様!

 どうしてここに?」

「昨日、レンガがうちの店を訪ねてくれたじゃないか。

 だから、こんどは私が訪ねてやろうと思ってさ」

 こういうのは、負けず嫌いというのでしょうか?

 ……なにか、違うような気もしますが。

「どれも、美味しそうだね。

 さて、どれをいただこうかな」

「買っていかれるんですか?」

 大商会の会頭が、町のパン屋でお買い物?

 私が驚いてそう聞くと、

「パン屋に来てパンを買わなかったら、どうするんだい?」

 それはそうなんですけれど、そうじゃないというか。


「これをください」

「ありがとうござ……!?」

 ラー様がいくつかパンを選んで持っていくと、ちょうど会計に出ていたマリオさんは絶句した。

「マリオさん、うちの食材でいつも美味しいパンを作ってくださって、ありがとう」

 ラー様かそう声をかけたら、マリオさんはずいぶん恐縮してるようだった。

「これからもよろしくお願いしますね」

 そう言うと、ラー様は買ったパンの包みを手にとって、店を出ていかれた。


「ふぃー、ビックリしたぜ」

 店の中ではマリオさんが汗を拭っている。

「すいません、すこし前によろしくと言伝を預かってたんですけど、忘れてしまってました」

 私がマリオさんに謝ると、

「レンガちゃんがラー会頭と知り合いなのも、ビックリだよ。

 いやぁ、カーン商会にはいつも世話になってるんだが。

 まさか、会頭がいらっしゃるなんてなぁ」

 2人でしばらく驚いていると。

「ふたりとも。驚いたのはよくわかりますけど、そろそろ戻ってきてくださいね?」

 リンクさんに言われて、慌てて仕事に戻った。


 そんなことがありつつも、仕事を無事終えて。

「ただいまです!」

 帰宅して、お風呂にはいって、牛乳を飲んで、学院の課題を済ませて、ベッドにはいる。

「パパ、ママ、今日も色々ありました。

 でも、『アレ』のこと、忘れてませんよ。

 もうすこし、待っていてくださいね」

 そう言って、眼を閉じる。

 肖像画のパパとママは、微笑んで私を見守ってくれているような気がした。

興味を持っていただけたり、応援をいただけるようでしたら、ぜひブックマーク・評価・感想などをいただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ