15-2 お昼に倒れてしまいました
タッ、タッ、タッ……
私は、走っていた。
しまったあぁぁ、課題やって来るの、忘れましたよぅ!
こうなれば、少しでも早く教室に入って、授業の前になんとか間に合わせるしかない!
風に髪が舞い、スカートが翻る。
人目についても問題ない程度を意識しながら、可能な限りスピードを上げて。
ゴール!
教室に駆け込んだとき、中にいるのはまだ数人。
よし、いそいで課題を……
基本書とノートを開き、出された課題を確認する。
なるほど、あのへんの知識が聞きたいんですね。それなら、こういう流れでまとめるとわかり易いですか。時間がないし、全体像の理解をアピールして、細かい例示は少なめに……
ざっくり解き方をメモしていく。
よし、この要領で進めれば、今ある時間でなんとか全部消化できそうです。だいたい目処が見えてきました。
ひと息ついて、周りを見ると。
もう多くのクラスメイトが教室に来ており、何人かと目があった。とりあえず、ほほえんでおく。
「レンガ様、学院に来てから課題なんて、すごいわね」
「あ、おはようございます、アジィ様」
アジィ様が声をかけてくれたので返事をすると、一瞬クラスがざわついた、ような気がした。
なんだろう?
周りを見回すが、特に異常はない。
いや、私達、みんなに見られてる?
どうしたのだろう。私、なにかやっちゃいました?
不安になってアジィ様を見ると、なんだか恍惚の表情で立ち尽くしておられるので。
「あの、アジィ様。なにかあったのでしょうか?」
私が恐る恐るそう確認すると、アジィ様は。
「ええ。
でも、全く問題ないわ!」
クラスに響くように、そう断言されたのだった。
なんとか課題を終わらせて、提出。
綱渡りだったけれどなんとかやり遂げて、気づけばもうお昼休みだ。
隣の席を見るが、エメラルド様は今日もお休みの様子だ。
そういえば、まだお見舞いにいけてませんでしたね。今日の『研究会』で特訓をお休みできる時を確認して……
それにしても、今日はやけに寒いですね。ゾクゾクしますよ。
そんな事を考えながら、食堂にでも行こうと立ち上がりかけたときだった。
グラリ……
あれ?世界がぐるりと回ってます?
そして、ぼやける視界と、浮遊感。
でも、何が起きているのか、理解できないうちに。
ぽすん。
なんだか、温かいものに包まれた。
「レンガ様、大丈夫?」
耳元で、アジィ様の声がする。
「様子がおかしいので声をかけようと思ったら、危ないわ」
その声に続いて、目の前にアジィ様が大写しで現れる。
「顔色が、酷いわね」
そのあと、額に冷たい感触。
「いけない、熱もあるようだし。
保健室に行きましょう。
レンガ様、歩ける?」
アジィ様の肩を借りて、もういちど立ち上がる。
足がふらつく。
いつの間にか、頭と体が、やたら重い。
どうやら、昨日の風邪がぶり返してしまったようだ。
うーん、
朝走ったのが、悪かったですかね。
それとも、忘れてきた課題こなすので、頭使いすぎましたか。
そんな事を考えながら、なんとか保健室へ。
「先生は、いないようね。
とりあえず、ベッドを借りましょう」
アジィ様はそう言うと、続きの部屋にあるベッドの一番端まで案内してくれた。
ドサリ。
ベッドに、倒れ込むように横になる。
アジィ様が、制服を整えて、薄い掛け布団をかけてくれた。
顔に、アジィ様の手が迫る。
ぴたり。
額に手が添えられた。ひんやりして、気持ちいい。
「少し、待っていてね」
目を閉じたら、アジィ様の声が聞こえた。
しばらくして、
「レンガ様、頭を持ち上げて」
言われたとおりにすると、グンニャリ柔らかくて冷たい感触。
水枕、かな。
「アジィ様、ご迷惑をかけて、すいません」
やっと、お礼をいう。
「気にすることはないわ。
調子の悪い時は、誰にでもあるものだし。
それより、いまはゆっくりと休んで」
「……はい」
薄く目を開ければ、そこにはアジィ様の優しい微笑みがある。
ああ、こんなときに誰かがそばにいてくれるって、いいな。
私は、微笑みを返すと、言葉に甘えることにして目を閉じたのだった。
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