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14-2 学院の図書館

『猫のパン』を出て、学院まで歩く。

 昨日の疲労が抜けていないのか、そのままお風呂で寝てしまったせいか、まだ頭と体が重い。

 なんとか学院の建物に入った頃、ザァザァと雨が降り出した。

 来る途中に降られなくて、良かったですよ。……でも、そういえば傘もってきてませんね。帰りどうしましょう。

 少し困りながら、教室に入る。


 あれ?なんだか、人数少なくないですか?

 そういえば、学院をここまで歩いてくる間も、どうもすれ違う人とかが少なかったような。

 席について改めて教室を見回すと。

 いつも余裕を持って教室に来られているアジィ様の姿がない。

 隣のエメラルド様も、まだ来られていないようだ。

 どうやら、貴族の方にお休みが多い気がする。

 どうされたのだろう?


 すると、ヒスイ様と目があった。なにかご存知ないだろうか?

 私は、ト、ト、ト、と歩いていくと、周りを覗いながら話しかけた。

「あの、ヒスイ様。お伺いしたいことが。」

「な、なんでしょうか? レンガ様」

 なんだか緊張した声が返ってきた。

「今日はお休みの方が多いように思うのですけれど、どうされたのでしょう?」

「ああ、それなら。

 この国を訪問されていた連合国の貴賓の方が明日お帰りになるので、今夜は滞在を締めくくる王家主催のパーティがあると聞いています」

 ああ、なるほど。

 そういうことなら、特に呼ばれた貴族の方たちは、その準備で大わらわだろう。

「そうだったんですか。教えていただき、ありがとうございます」

 私は、感謝の笑顔でお礼を言う。

「どういたしまして」

 そう言ったヒスイ様の顔は、どことなく上気しているように見えた。


「あ、あの。

 ところで、レンガ様はどこか調子がお悪いのでは?」

 ああ、やっぱりヒスイ様にもわかっちゃいましたか。

「はい、そうなんです。

 今朝から、頭と身体がずいぶん重くて」

 私は素直にそう答える。

「!

 それは、いけませんね。

 保健室にいかれますか?」

「大丈夫、それほどのことはないですよ」

 安心してもらおうと、ヒスイ様の目をじっと覗き込みながら、にっこり微笑んでそう答えたら。

 ヒスイ様は、逆にヒスイ様のお体が心配になるほど真っ赤な顔をされながら、しばらく固まった後、

「あの、その、……どうかお大事にしてくださいね」

 そう心配してくださった。


 昼休み。

 なんだか、あまり食欲もわきませんねぇ。

 食堂に向かおうかと歩いていたけれど、目的地を変更する。

「ちょっと、図書館に行ってみますか。

『ヤキトリ』がいったいどんなものなのかも、気になりますし」

 雨の中を渡り廊下伝いに、図書館まで歩く。


 図書館の中は、今日は一段と人が少ないようで、シンとしていた。

 向こうには、ひたすら本棚が並ぶ、何層ものフロア。

 めまいがしたように感じたのは、体調のせいか、その本の量に圧倒されたのか。

「これは……。

 蔵書が多いとは思っていましたけれど、いざ探しものをしようとすると、思わず途方に暮れますね。

 関連の本が見つかる気がしませんよ。

 いったい、どこにあるんでしょう?」

 少し呆然として、奥を見ていると

「あの、なにか本をお探しですか?」

 横から声がかけられる。

 見ると、紫がかかった灰色の髪を後ろで2つに括った、大人しそうな女子が立っていた。

 胸に『図書委員・アンバー=ライト』の名札がついている

 図書委員ということは、司書の先生を手伝う学院生の方ですね。

 それなら、本に詳しいだろう。

「あの、大きな鳥について調べたいんですけれど」

「それなら、まず生物のコーナーですが、物語とかに出てくるものなら神話・伝承や精霊のコーナーになるかも知れません」

 そういうと、それぞれの本棚の場所を教えてくれる。

「よろしければ、案内しますよ」

 本の量を見て戦意喪失していた私は、頼もしい援軍に、喜んで力を借りることにした。


 サファイア様は、あの鳥を『龍』と同種の神獣かもしれないと仰っていたような気がする。

 それなら、生物とかのコーナーよりも、まず精霊のコーナーを探してみよう。

「それなら、こちらになります。

 あの本と、あの本と、あの本と、……、思いつく限りでは、このあたりでしょうか」

 7冊も紹介してもらいました。どれだけの本の情報が、頭の中に入っているのでしょう。

「そんな。

 私まだ予科生なので、先輩たちほど詳しくなくて、すいません」

 私が感心してお礼を言ったら、驚くようなことを言われた。

 それならたぶん私より年下なのに、きっとすごい読書量なのだろう。

「貸し出しもしていますけれど、どうされますか?」

 アンバーさんはそう言ってくれたけれど、私は帰りにも『猫のパン』の仕事があるので。

「帰りに予定があるから、今日は止めておきます。

 今度、休みの日にでも借りに来ることにしますね」

「それでは、予約だけされますか?

 あと、もし良かったら、思いつく本のメモをお渡ししますよ」

 なんとも、至れり尽くせりの提案をもらって、ありがたいことこの上ない。

 ひとまず予約をお願いすると、手続きのため必要と言われて学生証を手渡した。

「!?

 レンガ=アイセ様、ですか?

 去年まで予科にいらっしゃった、あのレンガ様、ですか?」

 静かな図書館に、少し大きめな彼女の声が響いた。

 学生証を確認したアンバーさんはずいぶんと驚いた様子だ。

 どうしたんだろう?

 まさか、変な噂でも広まっているんじゃないだろうか。ちょっと心配になる。

「失礼しました。お会いできて、光栄です。

 それでは、手続きをしますので受付の方に」

 大声を出してしまったせいか真っ赤になった彼女は、少し慌てたような様子でそういうと、先に歩き出した。

 ホッ。

 彼女の話し方からするに、どうやら悪い噂とかではなさそうなので、少し安心しながら後に続く。

「はい、手続完了です」

 受付では、魔道具の上に学生証を乗せながら指先で何かを書く様子の後、そっと学生証を返してくれた。

 きっと、あれで貸し出しの予約を学生証に記録したのだろう。

 私はそれを受け取ると、見送る彼女に手を振って、教室へと戻ったのだった。


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