13-4 連合国からの誘い
2023年1月22日-誤字修正。
『研究会』での特訓もおわれば、『猫のパン』での夜のお仕事だ。
「おひさ、レンガちゃん!病気とかじゃないとは聞いてたけど、大丈夫?」
「おつかれ、レンガちゃん。レンガちゃんがいなくて、寂しかったよ!」
「レンガちゃんと挨拶しないと、なんだか張り合いがでなくてさ」
「レンガさんの頑張ってるところを見てると、負けたくない、って思うのよね!」
「べ、別に、貴女のことなんて心配してなかったんだからね!」
しばらくお店を休んだ私に、みんなが次々に声をかけてくれた。なんか、嬉しいです!
マリオさんにお休みのお礼を言ってから配達に。
順調にこなすと、次はお店の中へ。
品出しや案内をしていたときだった。
「いらっしゃいま……せ……?」
入ってきたのは、いつかお店を訪れたスーツ姿の女性だった。
たしか、マーガレットさん。
「こんばんわ、レンガさん。
前に聞いた、連合国に来てみないかっていうお話。
私たちの出立が迫ったから、答えを聞きたくて来たんだけど……」
え?あれ、冗談とか社交辞令じゃ、なかったんですね。
そんなことを考えたときだった。
急にその視線に寒気を感じて、肩が震えた。
「事情がすこし変わったようですね。
私、どうしても、あなたをお招きしたくなりました。
正式に招聘させていただくわ。
準備の時間は1ヶ月位で良いかしら?」
私は、その目に射すくめられて、身動きもとれない。
ただ黙ってそれを聞いていると、
「待ってください、マーガレットさん。
その子は、うちの大事な看板娘でしてね。
抜けられると仕事にならないんで、そういうのは止めてもらえませんか?」
マリオさんがそう言いながら、私を庇うように間に立ちふさがってくれた。
しばらくお互いを見ていた、いや、あれは睨みあっていたが正しいだろうか。
お互い睨みあっていたけれど、しばらくして女性が引いた。
「失礼。素晴らしい店員さんをお持ちで、羨ましいわ。
レンガさん、もし連合国に興味が出たなら、これを持って市場の塔の支配人を訪ねてください。
最大限の便宜を図るように、言っておきます。
それでは」
そういって、なにかを書き付けた羊皮紙に封をして、私に渡してくれた。
これ以上のトラブルになっても困ると、とりあえず受け取った私に、彼女は今度は礼儀正しい笑みで「楽しみにしています」と囁いて、店を出ていった。
「……ふぅ。寿命が縮んだぜ」
女性が出ていくのを見送ったマリオさんが、座り込む。
「マリオさん、店は僕が見ておきますから、レンガちゃんと一緒に奥へ」
リンクさんがそういってくれたので、そのまま奥にはいると。
何人もの人が待っていて、みんな私のことを心配そうに見つめていた。
「なんだよ、あの女。レンガちゃんを連れて行こうなんて、ふざけんな!」
「レンガちゃん、大丈夫?もう大丈夫だからね」
「あの、レンガ先輩!どこにも、いかないでください!」
はじめ静かだったのが、だんだん騒がしくなる。
私は、思考が追いつかない。
「おいおい、おまえら。静かにしろ。
あんまり騒いじゃ、今店にいるお客様が、どうしたんだと思うだろ。
それを誤魔化さなきゃならないリンクに、あとでみっちり説教されるぞ?」
マリオさんがそう言って、ようやく騒ぎは収まった。
「レンガちゃん、悪かったな、勝手に断っちまって。
……まずかったか?」
それから、マリオさんが私にそんなふうに聞いてくれたので、
「いえ、全然!たすかりました!
これからも、どうかよろしくおねがいします!」
私がそう言うと、みんな笑顔になってくれたのだった。
ちょっと騒ぎもあったけれど、なんとか夜の仕事も終えて、家に帰る。
「ただいまですぅ……」
ドッと、疲れが押し寄せてきた。
まず、フルーツ水を口にして気分をシャッキリさせて、それから忘れないうちに制服を寝押しする準備をして。
そして、シャワーを浴びて、お湯に入る。
「はぁ~、つかれました……」
湯船に浸かると、今日あったことがぼーっと頭の中を通り過ぎていく。
朝、なんか男の子たちに声をかけられましたねぇ。
お店の常連とかに、なってくれたりしないでしょうかね。
アジィ様、今日はなんだか迫力があった気がします。
おもいだすと、なんだかちょっと恥ずかしいですよ。
『研究会』のみなさん、ほんとイザという時は心強いですよね。
みんな、けっこう正体不明ですけれど。
連合国ですか。
私はパパとママの家から離れるつもりなんて、ないです。
悪魔も、やっつけなくちゃダメですし。
それに、『猫のパン』のみんなに、学院のみんな、サファイア様に、レオくんたちに、……、……、それに、パパ、ママ……
頭の中に、色んな人の顔が巡って。
暖かさに包まれて、幸せな気分を感じていると、私の目はだんだんと閉じていった。
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