13-3 『研究会』で報告会
「こんにちは、皆様。
……どうか、されたんですか?」
午後の授業が終わって『研究会』に顔を出したら、ほかの5人の方はもうすでに来られていて、やってきた私は全員の視線にさらされた。
「こんにちは、レンガちゃん」
最初にミイツ様が笑顔を浮かべて、挨拶をしてくださる。
「順当じゃない?」
なんのことか良くわからないけれど、シリル様はそう言って、紅茶に口をつける。
「わたしは、ふまんなのよ?」
そう言うユーリ様の口は、いかにも不満というように尖っていたが、それが逆に本気らしくない。
「まあ、これからもよろしく、だね」
なぜかラー様にそんな挨拶をされたと思ったら、
「それで、休みはどうでしたか?」
ミズナ様から質問があって。
私はすこし悩んだけれど、この休みのあいだにあったことを、全部素直に話すことにした。
報告を終わると。
「そうだったの。包み隠さず話してくれて、嬉しいわ」
まずはミイツ様がそう言った。
「何らかの事情で、レンガちゃんにその鳥が取り込まれたんだろうね」
「いまのところ、レンガの魔力におかしいところはないから、当面問題はないと思うわ」
「力を得てしまったのならば、使いこなすしかないのでは?」
ラー様、シリル様、ミズナ様と、順にそう仰って、最後にユーリ様が、
「とりあえず、レンガちゃんは魔力制御の特訓からかなぁ。
リルちゃんがいちばん得意だと思うから、見てあげてくれるかな?」
こうして、私はシリル様に魔力制御を学ぶことになった。
「魔力制御といっても、イメージと感覚に負うところが多いわ。
そもそも、どこも特殊技術として秘匿しているものだし。情報の分断が、体系化を妨げているのよ。
私の方法が合わないようなら、おとなしく諦めなさいね?」
そんなことを仰りながらも、シリルさまは丁寧に教えてくれた。
「まず、自分の中の魔力を感じる。
次に、どこにどれだけあってどう流れているかを把握する。
それから、その流れを管理して、魔法の働くところに集まる量と時間を管理する。
言葉にすると、そんな感じかしら」
いままでなんとなくでやって来たことを、意識して管理する感じなのだろうか。
まず自分の魔力を感じるところはスムーズにできたと思うけれど、場所と量と流れを把握するところで躓いた。
なにこれ。纏まりないし、動き続けてつかめないし、複雑に絡み合いすぎですよ!
「暴走なんてことにならないよう、早めに身に付けた方がいいでしょうね。
お頑張りなさい」
こうして、魔力制御の練習の日々が幕を開けたのだった。
はあ……、はあ……
1時間ほど後。
私は、ぐったりしながらテーブルに倒れて、ユーリ様のハーブティをいただいていた。
「お疲れ様、レンガ。その手の練習はポーションが効かないから、辛いよね」
「ラーちゃんの練習も、最初はこんなだったもんね。この短期間で10倍に伸びたのは、すごいと思ってるのよ、わたし」
「ユーリのお褒めをもらうと、あとが怖いよ」
「べつに、わたしはこわくないよー。ひどいいわれようなのよー」
ラー様のかけてくれた言葉に返事をする元気もなく、頭の上で続くラー様とユーリ様の会話を聞くともなく聞く。
どうやら、私が今していた魔力制御やラー様の射撃練習での疲労には、回復のための有効なポーションがないみたいだ。
これは、本当に地道な継続が必要なようですね。
「リルちゃんの魔法薬に、効くのはないの?」
「この程度のことでエリクサーを使おうというわけではないわよね?
他に疲れを感じなくする薬くらいあるけれど、今の自分が大事なら、あまりお勧めしないわ」
「あー、みっちゃんがよく使ってるヤツだ」
「人聞きの悪い」
ユーリ様とシリル様の会話に、ミイツ様が苦笑する。
どうやら、シリル様はお薬を扱っているみたいで、
……って、エリクサー?伝説の万能薬、ですよね?
実在、するんでしょうか?
もしそんなものあったら、国宝級どころか、歴史の基本書に名前が出ますよ……
って、シリル様、もう絶対零度の使える伝説級の人でしたね。
なんだか、『研究会』にいると、だんだん感覚がおかしくなっていく気がします。
「そういえば、私達が戦った被害とか、サファイア様とか、銀月の皆さんとか、大丈夫だったんでしょうか」
まだ重い頭を起こしながら、私がそうつぶやくと。
「サファイアちゃん以外は、大丈夫でしょ」
意外なことに、ユーリ様からそんな答えがあった。
「サファイアちゃんは、真面目だからねー。
変に、思いつめちゃうんだな」
そんなふうに続けてから、ユーリ様は珍しく真面目な表情で私を見て、
「レンガちゃん、なんとかできるといいね?」
そう仰った。
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