12-1 聖都へと帰る
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
「うーん……」
顔に朝日をかんじて、目を開ける。
まぶしっ!
太陽が目に入って、目を細めた。
ここは?
そうだ、昨日は『銀月』の皆さんと一緒に、野営したんだった。
起き上がって周りを見ると、ジャックさんが火の近くで何かをしている。
「おはようございます」
近づいて声をかけると、
「おはよう、レンガちゃん。朝、早いんだな」
と笑って言われた。
「いつもは、パン屋さんでお仕事してますからね」
「へぇ。たしかに、パン屋とかは、朝早いよな。みんなの朝食を作らなきゃいけないし」
「うちは、配達もありますからね」
「配達ってことは、もしかして『猫のパン』?
美味いって評判の。
行ったことはないけれど、聞いたことはあるな」
「あ、そうです、そうです。
ぜひ、いちどお店の方にも来てくださいね!」
私はチャンスとばかりに、スマイル付きで営業をしておく。
「そうだなぁ。味の勉強になるし、いちど行ってみるか」
ジャックさんは手を止めて、そんなふうに答えてくれる。
「まってますね!
……それ、スープですか?」
ジャックさんの手元を覗き込むと、鍋の中に干し肉と乾燥野菜、そして多分水と思われる大きめの袋に、なんだろう小さな袋が並んで置かれている。
「昨日もらった食事には到底及ばないけど、せめてお返しの気持ちくらい形にしておこうと思ってさ。
まあ、口に合わないようなら、俺たちで食べてしまえばいいし」
ああ、こういう、お互いが気持ちをなんかの形で贈りあえるっていうの、いいですね。
「私は、楽しみです!」
「そうか。
そう言ってくれると、作りがいがあるな」
そんなふうにお話をしていたら、段々とみんなが起きてきた。
「おはようございます、ネイビィ様」
「おはよう、レンガ。よく眠れた?」
「はい。楽しかったです!」
「それは良かったわ」
「ジャックさんが、昨日のご飯のお礼に、良かったらスープでもって。用意してくれていました」
「あら、嬉しいわ。冒険者の食事は、いろいろな工夫があって好きなのよ」
ネイビィ(サファイア)様の瞳が、楽しそうに輝いた。
「ふふふ、男の子との2人きりの会話、どうだった?」
「おはよう、リャナ。
貴女がずっと見ていたじゃないですか。料理の話とかをちょっとしていただけですよ」
「おはよう、レンガちゃん。
ジャックはああ見えて意外と博識だから、ずっと話してても楽しかったわよ?」
「へぇ、そうなんですか。
って、リャナ、もしかして夜の間ずっと話してたんですか?」
「そう。あの子、なかなかいい男だなぁ」
「ヘンな気をおこすようなら、ママに代わってお仕置きしますよ?」
「冗談よ!睨まないでよ」
でも、リャナは本当に結構楽しそうだ。
そして、みんなが起きたら、朝ごはん。
(正確には、なかなか起きなかったセーラさんを、なんとか起こして朝ごはん、かな?)
そのあと野営を引き払う準備をして、セーラさんとレイランさんの馬を借りると馬車につなぐ。
「よし、いこう」
ガーランさんの声で、ジャックさんが御者台から手綱を動かして、聖都に向けて出発した。
グラントさんがリャナを後ろに乗せながら先導し、残る女性陣4人の乗る馬車を挟んで、後ろをガーランさんが乗り手のない馬を引きながら追う。
リャナが、馬車にも乗れなければ、1人で馬に乗れそうもないので、こんなふうになるのも仕方がない。
セーラさんとレイランさんは、最初自分も馬に乗ると言っていたが、ネイビィ(サファイア)様の馬車の乗り心地を知ってしまえばこんなものだ。
馬車は、ネイビィ(サファイア)様とセーラさんとレイランさんと私、4人が乗ってもまだ余裕がある。
最初は馬車の乗り心地に驚いていた『銀月』のお2人も、そのうちすっかりお喋りに夢中になって、
「へー、皆さんは半年前に聖都に来られたんですか」
「『修行の旅』っていうやつでね。色んな所を回っているんだけど、今回の滞在はだいぶ長くなってるかな」
「聖都は、さすがに世界に名だたるだけあって、見るものも学ぶものも多いから。
まあ、ガーランの結婚の準備が整うまでの、時間つぶしの意味もあるんだけどね」
「え!ガーランさん、結婚されるんですか?」
「ええ。私達たちの出身はバゥムっていう小さな国なんだけれど」
「ああ、でも国土は小さいけれど、技術に資源に、あと温泉で有名なところですね!」
「レンガちゃん、よく知ってるわね!
ガーランは騎士の出だったんだけど、私たちがちょっと受けた依頼が予想外の大事になってね、結局王女様を助けて悪い貴族の陰謀を粉砕してしまったのよね」
それは、なんともすごい話だ。冒険者の典型的な憧れそのままですね。
「で、その助けた王女様とガーランは見事に恋に落ちてさ。
いまは、王様達が色々地ならししていて、準備ができたら呼んでくれるらしいよ」
「はぁ……、そんなことって、本当にあるんですね」
「バゥムの王女殿下は1年ほど前に聖王国を訪問されているわ。
護衛の騎士について含んでほしいということだったけれど、なるほどね」
あまり口を挟まないネイビィ(サファイア)様が、ポツリと仰った。
なるほど、将来の王族同士で顔合わせがあったんですね。だから、ガーランさんはサファイア様をご存知だったんだ。
「あー、ガーランが王女様の護衛騎士になって、ついて回ってたっけ」
「そういうことなら、1年で婚約発表、更に1年で結婚まで行ければ、上出来でしょうね」
「ということは、そろそろなにかある頃か。遠距離恋愛がんばってたし、うまくいくと良いけどな」
「しょっちゅうギルド便でなにかやり取りしているみたいだし、大丈夫でしょ。
相思相愛の、熱愛っぽいし」
そして、みんなで笑い合う。
ネイビィ(サファイア)様が出してくださった飲み物をいただきながら、そんなふうに休むのも惜しんで喋っていたら。
「そろそろ、聖都だ」
御者台から、ジャックさんの声がかかった。
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