12-2 お家に帰るまで
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
2023年1月22日-誤字修正。
「それじゃ、お嬢様、また後日!」
このあたりからなら帰れるから大丈夫というリャナを、人目につかないうちに送還する。
小さいままじゃ、さすがに町に入る時のチェックをごまかせそうになかったですし。
リャナは私にウインクを残すと、かき消えるように姿を消す。
それから町の入口でチェックを受けて、新市街へと入る。
『銀月』さんは聖都でももう有名なようで、あっさりと通過できた。
「さて。それじゃ、レンガちゃんはここまでだな」
人通りの少ない小路地に入ると、そういってジャックさんが馬車を止める。
「みなさん、よろしくお願いします」
冒険者ギルドへの報告は、それぞれ調査と討伐の依頼を受けている、ネイビィ(サファイア)様と『銀月』の皆さんだけですることになった。
私のことは、偶然居合わせた謎のイレギュラーということで、名前は出さない予定だ。
私は頭を下げて馬車を見送ると、新市街の南街区を北に、旧城門へと向かって歩く。
あまり目立たないようにと、裏路地を進んでいたら。
前に立ちふさがるように、3人の若い男が姿を現した。
「ちょっと待ちな、お前」
これは、後ろにもいますね。上とか、射撃武器をもっているのがいなければいいんですけれど。さすがに宝具を使うわけにはいきませんし。
いちおう後ろを振り向くと、案の定、もう3人が現れて道を塞がれた。
「ここは『関所』だ。通行料をよこしな!」
「なぁ、こいつ、ものすごく可愛くね?」
「俺、あの胸、たまんねぇ!」
すぐに男たちの目つきが、いやらしいものに変わる。
「金を貰う前に、まずは身体検査だな」
リーダーと思われる男1人を残して、前から2人と後ろから3人が近づいてきた。
人数の差に、負けることなど考えていないようで、警戒心のかけらもなく。
タッ、ダン!くるり、スタッ。
私は、地面を蹴って跳び上がり、迫ってきた前の先頭1人の顔を踏み台にして更に高く跳ぶと、残っていたリーダーの頭上を跳び超えて、その後ろに着地した。
空中で1回転したのは、ついでです。
パシ!パシ!パシ!パシ!
着地した私の背後で、地面が鳴る。たぶん、小石か何かが、高速で4つ当たったようだ。
パチンコでも持った誰かが、そのあたりの屋根の上にでも潜んでいるんでしょうか。
でも、後ろに6人と屋上に4人で、あわせて10人。これ以上の人数がいるなら、よほどの大手ですね。
これ以上さらに妨害する人数はいない、そう判断した私は、遠慮なくそのまま走って逃げることにした。
「なんだ、あいつ!」
「は、速えぇ!」
そんな声も、あっという間に遠ざかる。
裏路地を走るのがめんどくさくなって、道の端に置いてあった箱を足場に屋根の上に跳び上がる。そのまま少し屋根の上を走り続ければ、もう追ってくる相手はいなかった。
「逃げるに如かず、ってやつですね」
誰もいないことを確認すると、屋根から降りて、どこか知らない路地裏に。
そこから大通りに出るまでには、さすがにまたヘンなのに出くわすということもなく。
あとは大通り伝いに、なにごともなく旧城門までついたのだった。
旧城門から旧市街に入ったら、まず向かうのは『猫のパン』だ。
今日のお昼は、ぜひいつものパンが食べたいと、私のお腹が強く主張する。
「こんにちは!」
「いらっしゃいませ!
あれ、レンガちゃん?今日は珍しい格好しているね、似合ってるよ」
店に出ていたリンクさんが、にっこりスマイルで挨拶してくれた。
「ありがとうございます。結構長くお休みをいただいて、すいませんでした」
「たしかに、レンガちゃんがいないのはけっこう痛手だったなぁ。
いつも、頑張ってくれてたんだね。わかってたつもりだったけど、改めて感じたよ。
いつも、ありがとう」
そんなふうに言われたら、照れてしまう。
「明日から、またがんばりますね!
今日は、お昼を買いにきたんです」
「それなら、ちょっと待ってくれないかな。
僕が作ってみた、新作のグリッシーニがあるんだ。
よかったら、また感想を教えてもらえない?」
「いいですよ。では、ありがたく!
そういえば、前に頂いたパンは、味はそれなりと言った感じだったですけれど、なんというか香ばしさがすごく良かったです!」
「なるほど、とても参考になるよ。それじゃ、今回のグリッシーニの感想も、期待しようかな?」
私の感想はリンクさんのお気に召したのか、嬉しそうに奥に行くと、グリッシーニの包みをもってきてくれた。
「こちらこそ、美味しいものをいただけて、ありがとうございます!」
「それじゃ、また明日」
グリッシーニを渡してくれたリンクさんと挨拶すると、リンクさんはなにか探している風のお客さんの方へと向かった。
私は扉を開いて、家に帰ることにしたのだった。
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