11-4 戦いのあとにすること
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
「こりゃ……」
「なにこれ」
「すごいな」
「壮観ね」
「……はぁ」
『銀月』の皆さんの感想を、ガーランさんのどこか呆れたため息が総括した。
「これ、セーラ姉は戦術魔法でも使ったんだな」
戦術魔法と言えば、戦争で使われる、戦場の一局面を入れ替えるくらいの威力がある、とても強力な魔法だ。
……まあ、それでも足りないかもしれませんね。
なんといったって、本当は『龍の咆哮』ですから。
「『荷電粒子束』クラスの魔法をレンガちゃんの宝具が増幅しちゃった、位の話にしなきゃいけなさそうね。
あれが増幅されたなら、なんとかこれくらい薙ぎ払えそう。
あら?竜の魔力が残ってるわね。水竜がいたから?でも、妙ね……」
そう言ってから、セーラさんは私とネイビィ(サファイア)様の顔を順に見て、
「ま、いいか。魔法を『龍牙砲』に変更して、それに水竜もいたからってことにしちゃお」
ウインク1つで、あっさりと流してくれた。
こういうのを、気が良いっていうのかな。もう、感謝しかない。
レイランさんが周囲を確認して、さらにセーラさんが探査魔法を使ったけれど。
結局、あの鳥もその遺留物のようなものも、見当たらなかった。
ガーランさんが鳥は深刻な怪我を負い飛び去ったものと判断して、ネイビィ(サファイア)様がうなずいたことで、この件はそれでいったん終了となりそうだ。
「そうなれば、もちろん周囲の町や村には注意の情報が回るでしょうし、もしかしたら飛び去った先で実際に被害が出ているかもしれませんが」
「その時は、国をあげての討伐になりそうですね」
ネイビィ(サファイア)様の言葉は重かった。私も、とんでもないものにちょっかいを出してしまったと、今更ながら気持ちが沈む。
「依頼を進めたら思った以上の大事になるのは、ままあることです。
済んでしまったことを気に病んでも、仕方ありません。
それに、冒険者の我々にとっては、大きな討伐は名を挙げるチャンスですし」
ガーランさんは、あえて明るくそう言ってくれた。
ひと通り調べ終わった後。
「さて、これでもうここに残る理由もなさそうだ。
大分日も傾いてきたし、先程の馬車のあたりで1泊して、明日聖都に戻ってはどうだろうか?
馬車の馬がないようでしたが、私たちの乗ってきた馬が5頭ある。良かったら、繋いで使っていただきたい。
ジャックが御者も出来ます」
ガーランさんの提案に否はなかった。
みんなで馬車のところに戻る。
シャワーはもう使えないけれど、ネイビィ(サファイア)様はあのご飯をみんなに出してくれた。
『銀月』の皆さんは、みんな驚いた様子で、興味津々のようだ。
セーラさんが魔法で火を熾し、それを囲みながら賑やかで楽しい食事……となるところで。
「ねえねえ、ところでさ。ネイビィさんとレンガちゃんたちのご飯は、2人分でいいの?」
それとなく促すように、レイランさんが声をかけてくれた。
「そうですね。私達には、もう1人仲間がいるのです。皆様を驚かせないかと、控えていたのですけれど」
その配慮に、ネイビィ(サファイア)様が切り出す。
その前に、眼で私に確認をとってくれたのが、ちょっと嬉しかった。
「今更、ちょっとやそっとのことじゃ驚かないさ。
それに、お2人の仲間なら、ぜひ会ってみたいな」
「そうそう。それに、飯を食べれないんじゃ、かわいそうだ」
ジャックさんとグラントさんも、水を向けてくれるので。
もういちどネイビィ(サファイア)様と眼で確認しあって、
「ありがとうございます。それじゃあ、リャナ、出てきてください」
私はリャナに声をかけた。
「おまたせしました、お嬢様!」
ゴソゴソゴソ、と。
馬車の下から這い出てきたリャナは、優雅に立ち上がると、丁寧に私に一礼した。
それはもう、嫌味っぽく。
これは、放っておいたのをだいぶ怒ってますね。
「わ、かわいいね!
なんていうか、サイズが!」
グラントさん、その言い方は、いかがなものでしょう?
「妖精なんて、めずらしいわね。レンガちゃんの使い魔?」
セーラさんが驚いた声で聞いてきた。
「故あって、うちのメイドです」
「急速な魔力減少に身体の再構築で対応したのかしら?
良く無事に成功したわね。
すごい技術をお持ちですね」
セーラさんがリャナを見る目に、尊敬の光が揺れた。
あのセーラさんがこんな目をするなんで、もしかしてリャナってとんでもないことをしてたんじゃ?
「お嬢様のメイドですので、これくらい当然です」
そんな風に答えているリャナも、どことなく鼻高げだ。
こうしてみんなで過ごした夜は、思った以上に楽しかった。
食事が進めば、グラントさんとセーラさんがお酒を取り出し、酔ったセーラさんはその美声で何曲も歌って聞かせてくれた。それにあわせるジャックさんとレイランさんの演奏も、とても上手だ。
そんな夜も更けていけば、三々五々にみんな眠りについていく。
ネイビィ(サファイア)様は、もう馬車の中でお休み中だ。
「レンガちゃん、不寝番は私がしておくから、もうおやすみなさい」
機嫌の直ったリャナが、なかなか寝る気にならない私にそう促す。
「……そうですね。それじゃ、おやすみなさい」
名残惜しかったけれども。
私はガーランさんが貸してくれた毛布にくるまって、火からほどほど離れたところに横になる。
目を閉じれば、火の燃える音と『銀月』の皆さんの話し声や寝息が聞こえた。
そういえば、学院があったから、昔も泊りがけの依頼は受けたことがなかったですね。
受けていれば、こんな楽しい夜を過ごすことが出来ていたんでしょうか。
寝るときひとりじゃない、っていうのはこんなに暖かいものだったんですね。
いろんな事があったけど、私、来てよかったと思っています。
パパ、ママ、おやすみなさい。
そんなことを考えながら、私は眠りに落ちていった。
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