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11-3 冒険者パーティ『銀月』

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。



 私達が馬車を離れようとしたときだった。

「おおーい!

 だれか、いるか?」

 それほど遠くないところから、声をかけられた。

 サファイア様と私とリャナは、顔を見合わせる。


「ああして声を出しているところを見ると、そんなに悪い人じゃなさそうだと思います」

「襲うなら、こっそり忍び寄るよね」

「私が、返事をしてみましょう」

「サファイア様が最初に声をかけるなんて、危ないですよ!」

「でも、貴女もリャナも、その姿では人前に出ていけないでしょう?」

 サファイア様の指摘に、ぐうの音も出ない。

「おおーい!

 ここに、人がいますよ!」

 サファイア様は、初めて聞く大声で、そう呼びかけられたのだった。


「おおーい!」

 サファイア様の声に答えるように、人が近づいてくる気配がする。

 リャナを馬車の下に隠し、私は木の陰に移動し、サファイア様は仮面をつけて、待つ。

 そして、むこうから姿を表したのは。


「ああ、いたいた。あれ?レンガちゃん、なんでそんなところにいるの?」

 最初に顔を出したのは、背中に巨大な剣を担いだ、『銀月』のグラントさん。

「ほらね。やっぱり、言ったとおりでしょう?」

 後ろから、大きな魔石がはめられた杖を持ったセーラさんが顔を出す。

「セーラ姉の言ったとおり、俺たちも無茶して正解だったみたいだな」

 呆れたように言ったのは、いかにも剣士という格好になったジャックさん。

 それから、あと2人。

「ふふーん?」

 サファイア様と私を見た後、周囲にキョロキョロと視線を巡らせる、長身軽装のポニーテールの女性と。

「無事だったようだな。君がレンガさんか。それから、……!?」

 サファイア様を見て固まった、鎧と盾を身につけた男性。


 あ、これは、サファイア様のことを知ってますね。

 そして、仮面の効果は、あんまりないようですよ、サファイア様。

 あっさり見つかった私は、そんな事を考えながら、現実逃避をしていた。


「失礼しました。

 私はBランク冒険者パーティ『銀月』のリーダーをしている、ガーラン。

 こちらはメンバーのセーラ、ジャック、グラント、レイラン、です。

 よろしければ、お名前を伺いたい」

 再起動したガーランさんが、まずメンバーを紹介し、私達の名を尋ねる。

「私はレンガです。皆さんの中には、何人かお会いした方もいます。こちらは……」

「Cランクの冒険者、ネイビィです。この先にある泉の調査依頼を受けて、ここに来ました」

 サファイア様、改めネイビィ様が、サラリと仰る。

「……そうですか。ネイビィさ……んと仰るのですね。

 ここでお会いできたので、色々お話を伺いたいのだが、よろしいだろうか?」

「構いませんよ。それでは……」


 向こうでネイビィ(サファイア)様がガーランさんと話していると。

 レイランさんが木に隠れていた私の隣までやってきて、ニヤニヤしながら私のマントの端を軽く揺らし、小声で、

「その格好、趣味?」

 なんて、聞いてきた。

 あの顔、絶対わかって言ってますよ!?

「まさか」

 怒りと羞恥を抑えながら、私は低い声で答える。私の顔は、今真っ赤に違いない。

「あはは。前に、そういう趣味の娘もいたからさ。

 それじゃ、着替え、いる?」

 レイランさんが、女神様に見えた。

「おねがいします!ぜひ!」

「いいよ、いいよ」

 レイランさんはそう言うと、みんなに向けて、

「あ、ごめん。今から私達、『乙女の秘密』。

 覗かないでね?」

 そういって、私を連れ出してくれた。


 木立の中、みんなの姿が見えなくなったあたりで、着替え。

「ありがとうございます。でも、よく着替えなんて持ち合わせがありましたね」

「ま、どんなときでも簡単な変装衣装は盗賊の嗜み、ってわけだね。

 ぴったりじゃないだろうけど、どう?」

 さすがに下着のサイズは合わなかったけれど、借りたふんわりした長袖の上着とキュロット風のショートパンツを着てみると、大きさにだいぶ余裕はあるものの、さっきまでよりは全然マシだ。

「この御礼は、必ず!」

 私がそう言うと、

「それは、セーラにしてあげて?」

 そう言って、笑われた。


「ただいまです」

 私達がみんなの輪に戻ると、ちょうどネイビィ(サファイア)様が報告を終わったところのようだった。

 それを受けて、ガーランさんがまとめる。

「つまり、『水竜が発生していたが、調査中にちょうどそれを捕食した巨大な鳥と出くわしたので、撃退した。もしかしたら遺留品があるかもしれない。』ということですか」

「そうです」

 こう整理してみると、私達のしたことって……

「なんて、無茶なことを!」

 うん、ですよねー。

「そうですね。相手の強さの判断を誤ったと思います」

「……ともあれ、ご無事で何よりです」

「そうです。結果良ければ、全て良しです」

 ネイビィ(サファイア)様が真顔でそう言い切って、なのでそういうことになった。

「まあ、それはそれでいいけどさ。

 さすがにCランクだけでそれじゃ、やりすぎだ。もうちょっとなんとかしないとな」

 そのうえで、ジャックさんがもっともなことをいう。

「それなりに、私達がしたことにしちゃうしかないわね。

 水竜とそれを食べる鳥の発見は昨日、報告に帰還するレンガちゃんたちと討伐依頼を受けた私達が今朝鉢合わせ、みんなで鳥の撃退が今頃。それで、今からお土産の確認にみんなで行く。

 どう?」

 セーラさんから具体的な提案があって。

「それでなんとかするしかないな。

 信用の問題もあるが……」

 ガーランさんが、悩みながらそんなふうに答えた。

 冒険者が虚偽の報告をするのは、ギルドへの背信だ。

 もし本当のことが知られてしまえば、その後の活動への悪影響は大きい。

 悩んでいる様子のガーランさんに、ネイビィ(サファイア)様が助け舟を出した。あるいは、退路を断った。

「調査依頼を受けているのは私ですから、報告に誤りがあれば私の責任です。

『銀月』の皆様には迷惑をおかけしないようにいたしましょう」

 それでも悩む素振りをしたガーランさんだったけれど、結局決断したようだ。

「ネイビィ様がそう仰るのでしたら、私達も精一杯なんとかしましょう。

 まあそもそも、かなり無理矢理に討伐依頼にさせて受けてきたんだしな。

 な?セーラ」

 ガーランさんがジロッとセーラさんの方を見て、セーラさんはちょっと舌を出す。

 これも、聞いただけで結構な無理を通したんだろうと想像できた。

 どうやらそれを強行させたのはセーラさんっぽい。ありがたいですけれど、そのテヘペロは軽すぎると思います。

「よし。それじゃ、戦いの痕跡はどうしようか?」

「私の魔法とレンガちゃんの宝具のせいにしましょう。

 いちど、戦闘の現場を確認したいわ」

 ガーランさんとセーラさんが言ったので。

 それならと。みんなで泉のあったあたりに向かった。


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