11-1 目覚め
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
「……ん……」
肌寒さに、小さく身震いして、目が覚める。
「ここは?」
なんだか、やたらと身体が軽い。
昨日の夜って、いったい何をしてましたっけね……
ハッ
昨日の死闘を思い出して、慌てて身体を起こすと。
木立の中にあった泉は跡形もなく。
木々は彼方へと一直線に削られ。
大地の色は変わってしまっている。
「……大惨事、ですね」
思わず、ほかに言いようのない感想が、口に出た。
あの巨大な鳥は、どこに行ってしまったのだろう?
最後、たしか私かみついてやったんでしたっけ。
その後の記憶が、ない。
たしか、口の中に広がる鳥の味が美味し……いやいやいや。もちろん冗談ですよ?
でも、頭を軽く振ってみても、全く思い出せそうにありませんね。
仕切り直して。
私達の全力の攻撃も、あの鳥には大して有効打になっているようではなかった。
私達が勝てそうな様子は全く無く、むしろ最後は食べられそうになったような記憶がある。
理由はわからないけれど、見逃してもらえた?
「私、美味しくなかったんでしょうか?」
誰にともなくそう言うと。
「大丈夫。レンガちゃんは、ちゃんと美味しそうに育ってるよ!」
「リャナ!?
無事だったんですか?」
「レンガちゃん、おはよ!」
耳に届いた声。
つい昨日まで聞いていたはずなのに、何故かとても懐かしく感じた。
でも、押し寄せたものすごい安堵感に包まれながら、声の方を見ると、誰もいない。
まさか、幻聴?
「こっち、こっち」
もう一度聞こえてきた声は、気持ち下の方から。
目線を下ろすと、大きさが1/3くらいになったリャナが、焼け残った石の上に座っていた。
「リャナ!無事だったんですね!」
「うん?無事なのかな?」
苦笑する、リャナ。
「でもまあ、妖精はそう簡単に消えたりしないって。
ちょっと小さくなっちゃったけど、また私の魔石に魔力を補充してくれれば、たぶん大丈夫よ」
便利なリャナで良かった。
私は、黙って泣きながら抱きしめる。
「あら。久々の泣き虫レンガちゃんね。
いいこ、いいこ」
リャナは腕を伸ばして私の頭を撫でてくれた。
すこしして。
「ありがとう」
私はリャナを離す。
「落ち着いた?」
「はい。
……そういえば、サファイア様は?
リャナ、知ってますか?」
いままで敢えて黙っていたのだろうリャナに、そう聞いた。
大丈夫だから触れなかったのか、もうどうしようもないから触れなかったのか。きっとそのどちらかだろう。
返事を聞くのが、すこし怖い。
「うん。亡くなってはいないみたい。
『大丈夫』って言ってしまっていいのかは、わからないけど。
会いに行く?」
「はい。」
私はそう答えて、歩き出す。
「ところで、なんで私、裸なんです?」
「変な趣味に目覚めちゃダメよ?レンガちゃん。
まあ、景色が変わるような戦いなら、服なんて跡形もなくなっちゃうよねぇ」
「私、着替え持ってないんですけれど。
リャナ、なんとかなりませんか?」
「自分の姿くらいならなんとでもなるけれど、さすがに服を作るとかは無理かな」
「そのリャナの大きさじゃ、買いに行ってもらうことも出来ないでしょうしねぇ」
「レンガちゃんの体に幻影を重ねて、服を着ているように見せるとか?」
「なにかの間違いで解除されたら、どうするんですか」
命があったことに比べれば些細な問題で。
くだらない掛け合いをしながら、リャナの案内に続いて歩いていく。
着いた先にいたサファイア様は、ところどころを龍鱗におおわれた裸身に封印のチョーカーをつけて眠っていた。
煌めく龍鱗が朝日を反射して、美しい。
「……きれい」
人形の肢体に龍の片鱗をまとったサファイア様は、どこか人ならざる美しさを感じさせた。
その薄い胸が静かに上下しているのを確認して、ほっと息をつく。
「手にあの封印を握っていてくれたから、私が帰ってきてすぐに首に巻いたの。
それまでは体の全部が鱗だらけだったけど、これでも殆どなくなったと言って良いくらいかな」
「サファイア様の意識も問題ないといいのですけれど」
「なにがあったの?」
「限界を越えて封印を解放した、んでしょうね。
このあたりの惨状は、ほぼサファイア様のせいだと思いますよ」
あの、ものすごいとしか形容できそうにない『龍の咆哮』を思い出す。
サファイア様は、あの龍の力を使うとき、『自分』であり続けることを賭けてくれたのだろう。
「サファイア様、待っていますから、どうかご無事に還ってきてください。
あんなにお強いんですから、龍の呪いなんて、へっちゃらですよ」
私は祈るようにそう囁いて、目を瞑った。
興味を持っていただけたり、応援をいただけるようでしたら、ぜひブックマーク・評価・感想などをいただけますと幸いです。




