10-3 巨鳥との死闘
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
2021年10月02日-字句などを修正。後書きを削除。内容に変更はありません。
巨鳥の巻き起こした風に煽られて、身動きの取れなくなる私達。
「クアッ!」
巨鳥は甲高い声を上げると、次は風に乗ったように素早く迫り、そのくちばしがサファイア様の方へと伸ばされる。
くっ! 私の宝具は直接攻撃に効果は小さいですが、それでもっ……!
なんとか割り込めないかと、意識を向けて宝具を動かすよりわずかに早く。
サファイア様が首につけた青いチョーカーに似た封印を、外した。
どくん!
一瞬広がった魔力の波に、視界がぶれた気がするほど。
サファイア様の秘めた力は、強い。
どがあァァァ……ン
サファイア様が巨鳥のくちばしにカウンターを合わせ、巨鳥の首が浮き上がる。
そのままサファイア様は巨鳥の下に潜り込み、頭上に広がるその腹を連打した。
高く浮き上がる巨鳥の体、チラと私を見るサファイア様の眼。
サファイア様と巨鳥の距離が近すぎて、間違って当たるのを恐れ宝具からの射撃ができなかった私だったけれど。
その合図と同時に、宝具を全力射する。
並の攻撃など受け付けないオーガですら撃ち抜く魔力の光を12本いちどに浴びて、巨鳥の体が燃え上がった。
普通なら。竜種であろうと、無事ではすまないだろうその攻撃。
だけれど。
次第に龍の魔力に蝕まれ、その顔に龍鱗が浮き出たサファイア様と、
全力射を終え、次の動きに備えながら宝具に再び魔力を通す私と、
巨鳥の動きを見落とすことの無いよう、私達に「認識力向上」の加護を付与したリャナの前で。
巨鳥は炎に覆われたまま平然とゆっくり翼を広げ、首を天に向けて持ち上げた。
その一瞬の後。
クイィィイィイィィン!
私の宝具が3回、高い音をたてる。
「『流星召喚』!? ははっ、たまらないわね!」
その音を聞くやいなや、即座に巨鳥に飛び込んでいくリャナ。
『流星召喚』は、天上の星を呼び寄せてぶつける、伝説級のスキルだ。
いまのは予備動作もほぼないものだったから私の宝具で止まったけれど、
しっかりと溜め撃たれたら、私の宝具でも無事でいられるかわからない。
だから、リャナは……
「レンガちゃんは、最後まで姫様のエスコート!
粗相のないようにねっ!」
……だめだ、いけない。
リャナは、自分が時間を作っている間に、私たちを逃がす気だ。
くっ!
いちかばちか。
私は宝具の1枚を手元に呼ぶと、両手で掴む。
結局あれから調整もできませんでしたが!
宝具を魔力で覆って殴る、あの技。
片手であの悪魔を倒す威力なら、両手で持って全部の魔力を注ぎ込めば!
ぱしぃぃん……
リャナと、迎え撃つように振り上げられた巨鳥の爪がぶつかり、妙に軽い音をたてた。
さっきまで全身に広がっていた炎も消えかけて事も無げな巨鳥と、身体のところどころが掻き消えた姿で空を舞うリャナの姿。
ダメージで大量の魔力を失い、リャナがもうきちんと姿を保てなくなっているのだ。
「……! ……! ……!
うわああぁぁぁぁぁあ!」
頭に血が昇る。目に映るものから、なにか現実感が消える。
ゆっくりと近づく私に、巨鳥は翼を揺らして、無数の鋭い羽を飛ばしてくる。
けれど。
クィン、クィン、と。
羽はまだ宙に浮く宝具たちに弾かれ、私に届くものはない。
もう、巨鳥までわずかな距離に迫る。
先程リャナを吹き飛ばした爪が、今度は私に迫ってくる。
「ええぇぇぇぇぇい!」
その爪を。
正面から、魔力をまとわせた宝具で殴りつけた。
ぐしゃあ、と。
わずかな鈍い手応えがして、巨鳥の爪を2つに裂きながら足首までめり込む、ママの宝具。
「ギャァァァァ……!」
巨鳥は。
はじめて怒ったような声をあげて、首をもたげ。
私めがけて、振り下ろしてきた。
左の肩から、激しい衝撃が走る。
リャナのくれた加護でそれを認識しながら。私は、くちばしを避けることなく、右手だけに持ち直した宝具を振り上げる。
目の前に飛び散る赤と、吠えるような巨鳥の叫び、そして前から迫ってくる影。
私の一撃は、巨鳥の胸を、大きく斜めに切り裂いていた。
でも、これは私の肩もおなかも、ダメですね。
巨鳥のくちばしで砕かれた肩。
続いて、たぶん爪で蹴られたのだろう、脇腹が削れて中身が覗いているのが、目の端に映る。
それに、蹴られたときに飛ばされて、背中から木に激突した。身体全身が痺れて、もう動ける気がしない。
えへへ、でも、やりましたかね?
これでサファイア様だけでも、聖都まで戻ることができれば……
私は、だんだんと霞んでいく目で巨鳥の様子を見つめた。




