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10-2 竜を喰らうもの

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-字句などを修正。後書きを削除。内容に変更はありません。


 野営の中とは思えない、暖かく楽しい食事も終わろうというとき。

「「!?」」

 私とサファイア様が、同時に顔を上げて同じ方向を見る。

「レンガちゃん!」

 続いて間髪を入れず、リャナが張ってある幕を持ち上げて、外から私を呼んだ。

「……すごい魔力、ですね」

 サファイア様が緊張した声で、確認する。

「これは、なかなかの大物、って程度じゃないわよ?」

 リャナが言いながら、私に目線で確認に行くのかと問う。

「もしあたりに被害が出るような可能性があれば、騎士団の動員もありえる規模だと思います。

 でも、対応が遅くならないように、まずここにいる私達が迅速に調査すべき、でしょうね。

 たぶん、あとから下手な調査人員を連れてくるより、安全性も高いと思うから。

 行きましょう」

 サファイア様はすぐにそう結論すると、私達に指示を出した。


 野営のため張った幕もそのまま、中にいたゴーレムも置き去りにして、魔力を追う。

 体を低くしながらできるだけ速く静かに進むと、木陰と草むらを抜けたところで視界がひらけた。


「クエエェェェ!!」

 大きな泉のほとり。

 そこで見たものは、勝ち誇るように翼を広げた巨大な鳥と、その爪で引き裂かれくちばしでついばまれる水竜の死骸だった。

 水竜は下位種とはいえれっきとした竜族だ。単体でもBランクの冒険者パーティで討伐する対象である。

 そして、水竜は私の身長の5倍はある長さで、十分に成体だ。

 それを屠るとなると、あの巨鳥の強さは十分騎士団が動くレベルと言えた。

 大きさも、高さは私の3倍程度だが、翼を広げたその幅はいま食べられている水竜に勝るとも劣らないように見える。

 相当の巨体だ。


「ずいぶんと、興奮しているようですね」

「食事をとても楽しんでいるみたいだけど、さすがに食べ過ぎよ。

 あんなに育っちゃったら、合う服を探すのも大変じゃないかしら?」

 私の言葉に、リャナが軽口で返す。

「そこにデザートがやってきましたからね」

 サファイア様が、硬い声で仰った。

「どうやら私の龍の魔力に感づかれたようです。

 封印から漏れ出る魔力はいくらもないはずですが、かなり鋭い感覚をもっているようですね。

 竜種の魔力とはいえずいぶん弱く感じるでしょうから、今食べている水竜の子供か何かだと勘違いしているんじゃないでしょうか」

 その時、サファイア様が言い終わるのを待っていたかのように。スッと、巨鳥の首が滑るように動いた。

 その先にいるのは、私達だ。

「……狙いを定められたようです。私が逃げるのは、難しそうですね」

 そう言ってサファイア様は、私達を背にかばうようにしながら、指示を出す。

「貴女達は、聖都に戻って報告を」


 それを聞いた、私は思う。

 私たちに報告に戻れという、サファイア様の指示は、妥当だろう。

 たしかに、誰かがこの異変を知らせなければいけない。

 でも!

 昨日から一緒に過ごしたサファイア様の姿が脳裏を通り過ぎる。

 私には、ここに彼女を置いていくことなんて、できない!


「別に、倒してしまっても、構わないんでしょう?」

 宝具を起動して立ち上がり、私は宣言する。大丈夫、怖くない。

 こうすれば、きっと巨鳥はサファイア様ではなく私の方を気にするはずだ。

 思ったとおり、巨鳥は姿を露にした私に視線を固定して、次第に口を開いていく。

 でも、近距離まで近づきさえしなければ、ママの宝具はきっと私を守ってくれるはず。

 まけるものか。私は巨鳥の目を睨みつける。


「レンガちゃん、迂闊よ!」

 リャナが叱責の声を上げながら私と違う方向に飛び出して、巨鳥に『呪』を放った。

 眼に映る程の強い妖精の呪いは、命中したものの身体と精神を蝕み、死に至ると言われている。

 その威力は、単体相手であれば1流であるBランクの魔術師が使う攻撃魔法にだって劣りはしない。


 しかし。

 巨鳥はちらりとリャナの方に首を向けて、羽をただ一振りだけした。

 それにより起こされた魔力を伴う風が、リャナの撃ち出した『呪』を、まるで小さなロウソクの炎のように吹き消す。

 そしてそのまま、あたりは強風に覆われた。




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