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7-2 その大きさの秘密はね

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-字句などを修正。後書きを削除。内容に変更はありません。


 『猫のパン』の朝の仕事も終わって、店を出る。

 朝の太陽の光は明るいが、どこか肌寒い気がして仕方がない。

 学院へと歩く間も、目は物陰などを意識して巡ってしまう。

 そんなかんじで学院の門までやってきてしまった。

 そのまま、まだ整理をしきれずに、教室へと向かう。


「おはよう、レンガ様。

 ……なにか、あった?」

 教室に入り席につくと、アメジスト様がやってきた。

「え? あはは、まあちょっと。

 でも、たいしたことはないですよ?」

 本当は、ちょっとたいしたことだとは思っているけれども、

 アメジスト様の心配そうな顔はあまり見たくなかったから。

「私にも力になれることがあるかもしれないし、遠慮なく相談してね」

 アメジスト様は、いつものように優しく気遣ってくれる。

「ありがとうございます。

 なにかあったら、そのときはお願いします」

 その優しさに感謝して、私はお礼を言った。


 私の緊張も、授業が進むうちにだんだん落ち着いてきて。

 そして、お昼休み。

「レンガ様、お弁当をいただきましょう」

 エメラルド様が、それは大きなお弁当箱を持ってきて、そう仰った。

「え? そのお弁当、全部エメラルド様のですか? 2人分位ありますよ?」

 驚いて私がそう聞くと、

「ええ。私の体調を気遣った料理人が、少し勢い余ったみたいなの。

 さすがに、この量は食べ切れないわ。

 だから、レンガ様。申し訳ないけれど、お手伝いいただけないかしら?」

 なるほど。そんなこともあるのか。

「わかりました。でも、最近いつもごちそうになっている気がして、申し訳ないです」

 有り難くいただくことにするけれど、うん、今度なにかすこしでもお返しをしよう。

「レンガ様は、お気になさらなくていいわ。

 どちらかと言うと、申し訳ないのは私の方」

 と目線を彷徨わせながら仰ったのだが、その表情にどことなく自慢げな雰囲気を感じたのがよくわからない。


「うわ、おいしい!」

「たくさん食べられるよう味にはこだわったらしいから、きっとそのせいね」

「ほんとうです、いくらでもお腹に入りそうですよ!」

「遠慮なく、食べてね」

 エメラルド様のありがたい言葉に、私は本当に遠慮をなくして、次々とお弁当に手をのばす。

 ふと顔をあげると、エメラルド様はそんな私を見て、ニコニコと笑顔を浮かべていた。

「あら?

 頬になにかついてるわ」

 エメラルド様は笑いながら手を伸ばしてそれをひょいととると、すこし悪戯っぽい顔をしてそれを自分の口のなかに運ばれたのだった。


 エメラルド様のお弁当をいただきながら、ふっと周りを見ると。

 何人ものクラスメイトと視線が合って、少しびっくりする。

 エメラルド様のお弁当を取ってしまったから、みんながこちらを見ているのだろうか?

 それにしては、エメラルド様がどことなく誇らしい様子なのが不思議だ。


 そんなふうに、ご飯を食べながら、楽しくエメラルド様とお喋りしていた時だった。

「レンガ様のお仕事の配達、明日もいつもどおりにできるとよいのだけれど」

「……え?」

 びっくりするような発言に、一瞬言葉に詰まる。

 エメラルド様は、朝の配達での出来事を、なにかご存知なのだろうか?

 そう思って固まっている私の目を、エメラルド様は数瞬覗き込んだあと、落ち着いた様子で続けられた。

「明日から連合国の首脳が来訪されるのよ。

 それなりに町の警備も厳しくなるわ。

 それで、配達のお邪魔になったりはしないか、と思ったのよ」

 なんだ、朝の一件とは関係ないらしい。

 ……ん? まてよ?

 朝の女性は、連合国に多いというスーツ姿だった。関係者の可能性もあるかもしれない。

 そんな可能性に思い至り、なんとなくすこし腑におちた気がしつつ、ご飯をもぐもぐといただく。

 気付くと、私の顔を覗き込んでいるエメラルド様とふたたび目があって、

「お役に立てたようで、嬉しいわ。

 よかったら、お茶をもう一口いかが?」

 エメラルド様はニッコリと微笑みながら、コップを私の方に勧めてくれた。

 珍しい緑色のお茶はさっぱりとしていて、口の中も私の気持ちも、どちらも洗い流してくれるような気がした。


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