6-4 日輪騎士団の拠点
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
2021年10月02日-字句などを修正。内容に変更はありません。
2023年12月24日-「感じた」→「覚えた」に訂正
『猫のパン』をでたら、大通りに出て南に南にと向かう。
旧城門を超えて、更に南に。町も終わるかというところで、右手に広い敷地が見えてくる。
聖都周辺の防衛と治安を管轄する日輪騎士団の拠点だ。
近づくと、小さな屋根の下、防水のマントで体を覆った騎士さんが入り口に2人立っている。
「あの、すみません」
「おや、どうされましたか?」
「私はレンガ=アイセと申します。学院からのお使いで、ミズナ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「ミズナ副隊長に御用ですか。
副隊長は、この時間でしたら書類を作られている頃か」
「たぶん、そうですね。
私が知らせてくるので、お嬢さんにはあちらで少し待っててもらってもいいでしょうか?」
そういいながら、騎士さんの1人が私についてくるようジェスチャーする。
「ありがとうございます」
頭を下げてとりあえず後に続くと。
「ところで、君って『猫のパン』の”あの”レンガちゃん?」
「?
どの”あの”なのかはわからないですけれど、『猫のパン』で配達のお仕事とかしています」
「やっぱり。
聞いていた『猫のパン』にいる可愛い看板娘さんっていうのが、君にそっくりだったんだ。
それに、その猫の描いてある包みに、香ってくるパンの匂い。
これはもしかして、と思ってね」
「ええと、ありがとうございます」
『猫のパン』の看板娘、っていわれてしまった!
なんというか、誇らしいのと同時に、なんだかとても恥ずかしい。
顔を真っ赤にしながらとりあえずお礼を言って、騎士さんについていくと。
門を潜るときに違和感を覚えた。
騎士団拠点全体に何かの魔法がかけられている感じだ。防御? 隠蔽? 加護? なんだろう、私ではそこまではわからない。
そういえば、学院のはもう『全部のせ』! っていうかんじでしたねぇ。
さすがに、もう慣れてしまったけれど。
敷地内にはいると、門の前にある広場を渡って、向かいにあった小ぶりの建物の中へと案内された。
「それでは、こちらで少しお待ち下さい」
2階にある小さめの部屋の中、無骨な机と2つの椅子に、背後には小さめの窓。
窓から外を覗くと、少し離れた大きめの建物の向こうに、大きな池が見えた。
池の周囲にはドロドロの地面の上を走る騎馬、池の横には真っ黒になりながらぶつかり合う人の影と、ときおり怒号のようなものも聞こえてくる。
雨のなかというのに訓練中の様子だ。
あそこの騎士さんの動きなんか鋭いな、あの馬はもしかしてなにか銘のある馬なのか、
あれ? あそこで整列している騎士さんたちはなにをしているのだろう?
などと思って見ていると、規則正しい足音が聞こえて部屋のドアが空いた。
「お待たせしました、レンガ様」
入ってきたのはミズナ様。
暗灰色の目に同じ色の長髪、騎士らしくしっかりした身体だけれど騎士服の上からも女性らしい主張が伝わる。
普段あまり表情の浮かばない顔をこちらに向け、いつも冷静な目が私を捉えていた。
「突然お邪魔して、申し訳ありません。ミズナ様。
ラー様からお伝えしてくるようにと言われたことがありまして」
「そう。『アレ』関連のお話ですか?
どうぞ、座ってください」
私に席を勧めてから、ミズナ様も机を挟んだ向かいに座る。
「なるほど。
そのドナルドという少年のことを、私はまだ聞き及んでいませんが、近日中に必要な方にには周知できるようにしておきます」
これで、お使いは無事完了だ。
次に、せっかくなのでミズナ様の悪魔捜索の様子について詳しい話を伺い、私の悪魔との遭遇の詳細と情報交換する。
「ほかには、なにか?」
最後にミズナ様から淡々と確認があって。
それ以上特に思い当たることもなかったので、私は騎士団拠点を辞することになった。
騎士団拠点を出てみれば、西に真っ赤な夕焼け。
雨はあがったようで、東の空に大きな虹が見えた。
時間はなんとかなりそうだ。畳んだままの傘を持って『猫のパン』に向かう。
雨後でも舗装された聖都の道はパンの配達に支障なく、その後の仕事も今日はトラブルなくすんで。
「それじゃ、失礼します」
挨拶をして店を出ると、空には星空が広がっていた。
帰り道。
私はなにか見落としはないかと、先日悪魔と遭遇した場所を再度歩き回る。
深夜の街は人通りもなく、誰とも出会うことはない。
「少し、探ってみましょうか。
この前魔道具を使って反応もなかったから、なにもないとは思いますけど……
やっぱり、1度自分でも確認しておきたいですし」
昨日の昼間に来た広場にでると、誰にいうでもなくつぶやいて、目を閉じる。
目を閉じて、息を整え、周囲の魔力に意識を凝らす。
……
……
……
特に気になる違和感はない。
専門の魔法などを使えば、家々の魔道具の配置までわかると聞くけれど、私は知らないので仕方がない。
「今度は、いちど新市街の方からも見てみますか」
そんな事を考えながら、私は再び家路についた。
「ただいまです。
……はぁ、ちょっと疲れました」
帰宅したら、お使いと悪魔探しでかいた汗を入浴でスッキリ流して。
お風呂から出たら、牛乳をゴクゴクと飲んでから、明日の準備を整えて。
そうしてベッドにはいると、昼の研究会でのシリル様の言葉が思い出された。
「私は、本当はどうしたいんでしょうか?
パパとママを殺した悪魔を皆殺し、そう思ってきましたし、いまでもそう思っています。
でも、それだけなんでしょうか?」
何となくスッキリせず、私とパパママの肖像画をみる。
でも、そこに描かれたパパとママは優しく微笑むばかりで、なにも答えてくれなかった。
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