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6-2 そのお弁当を食べるのは貴女

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-字句などを修正。後書きを削除。内容に変更はありません。


 建物入口におかれた絨毯で、雨に汚れた靴を拭って、中に。

 教室に入ったら、荷物を置いたあと、アメジスト様のところへ向かう。

「おはようございます、アメジスト様」

「おはよう、レンガ様」

 席に座っていたアメジスト様が、振り向いて私を見上げる。

「あの、先日お借りしたハンカチを、お返ししたいと思って」

 私は、制服のポケットから丁寧に畳んだハンカチを取り出し、アメジスト様に渡す。

「ふふ、別に返却不要って言ったでしょう?

 ……あら?」

 笑いながら受け取ったアメジスト様だったけれど、ハンカチを見て不思議そうな顔になる。

「これ、レンガ様のハンカチじゃ?」

「あれ、おかしいですね?」

 確認すると、たしかにこれは私のハンカチだ。

 しまうときに自分のハンカチと入れ間違えたかなと制服を探るが、もう1つハンカチが出てきたもののそれもやっぱり私のハンカチで。

 どうやら、持ってくるハンカチを間違えてしまったらしい。

「申し訳ありません、アメジスト様」

 恥ずかしくなって赤面しながらそう謝ると、

「別に、構わないのに。

 そうだ、それならハンカチを交換しましょう。

 このレンガ様のハンカチを頂くから、この前の私のハンカチをもらってくれない?」

 と提案された。

 アメジスト様のハンカチのほうがセンスが良くて洒落ているいい物だと思うんだけど、良いのかな?

 とは思ったのだけれど、ここはやらかしたのは私だ。アメジスト様の提案に否はない。

「それでよろしいのでしたら。申し訳ありませんでした」

「謝ることなんてないのよ。

 それにしても、フフ、レンガ様っていろいろなことに気がつくようでいて、意外と足元とかはうっかりなのね」

 笑われてしまった。

「気をつけます」

 それで、ますます頬を赤くしながらそう答えたら、

「困ったら遠慮なく私に相談してね」

 アメジスト様は優しい表情で慰めてくれたのだった。


「あの、レンガ様! 今日のお昼、もうお決まりですか?」

 午前中の授業が終わっていちばんに、そう声をかけられた。

 声の主はヒスイ様。留学生のクラスメイトだけれど、あまりお話したことはない。

「え? まだですよ?」

 振り向いて答える。

「それじゃ、あの、本当に申し訳ないのですけれど、このお弁当を召し上がってもらえないかと!」

 なんでも、お友達とお弁当を2人分交互に用意していたのだが、今日はそのお友達がお休みされたそうで。

「私なんかがいただいても、良いんでしょうか?」

「はい! ぜひ、レンガ様に!」

 強くすすめていただいたので、いただくことにした。

 それにしても、ヒスイ様がときどき隣の席のエメラルド様を気にしている様子なのは、どうしてだろう。

 エメラルド様はクラスでも珍しい高位貴族だし、そのせいかな?

 もぐもぐ……

「おいしいです!」

 ヒスイ様は頬を染めて、にっこりと笑う。


 もぐもぐ……

 ゆっくりとお弁当をおいしくいただいていく。

 もぐもぐ……もぐもぐ……

 ヒスイ様は、今度はお弁当をいただく私のことをじっと見ている。

 もぐもぐ……もぐ……

 あまり見られていると、ちょっと食べにくい。

「あの、ヒスイ様。

 よかったら、ヒスイ様もこちらで、一緒にお弁当食べませんか?」

 なので思いきってそう誘ったら、

 ヒスイ様は一瞬びくっと震えてから少し固まり、そのあとキョロキョロしたかと思ったら、なにか覚悟を決めたような顔をして、

「光栄です!」

 そういってお弁当をもって来られた。


 クラスメイトと食べるお昼は、とても美味しかった。

 あと、私の前でどこか一生懸命お昼を食べているヒスイ様は、なんだかずいぶん可愛らしかった。


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