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6-1 雨の日の朝は

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-字句などを修正。後書きを削除。内容に変更はありません。

「ん……」

 目が覚めると、部屋の中は薄暗い。

 ベッドから降りて窓の外を見ると、今日は小雨模様のようだ。

 昨日帰ったあとに寝押しをしておいた制服を身につけたら、いつものようにフルーツをひと絞りした水をゴクリと飲んで。

 1階の洗面台の前で髪を整え、そのあとに朝食。いつも休み明けにはさすがにいくらか固くなっているパンだけど、今日は雨のせいか少し柔らかく感じる。

 そして、

「いってきます!」

 そう挨拶してから、荷物と傘を持って家を出た。


 シトシトとした雨に包まれた町を、ゆっくり歩いて『猫のパン』に向かう。

 なんとなく、目の前に降ってきた雨が集まり小さな流れとなって、道の端のところどころに開いた排水口に吸い込まれていくのを目で追ってしまう。

 排水口は聖都自慢の『下水道』に繋がって、各家庭からの排水と合わさり、最後に魔法陣を使った浄化施設を通って川にそして海に、遠い旅をしていくんだな、なんてボンヤリと考えつつ歩く。

 ガタガタ……パシャン!

 その音に目線を前に上げると、大通りの向かい側少しむこうに、裏路地から袋をいっぱい積んだ荷車が現れて、通りすぎていく。

 あれは、町の家々から出るゴミを集める車。雨の日も休みなくゴミを運んでくれる姿には頭が下がる。数ヵ所に集めてから魔方陣で処理され再利用されているらしい。住んでいる私には当たり前のものだけれど、『災厄』後の聖都名物のうちの一つだ。

 そういえば、私、今日のゴミ出したかな?

 ちょっと不安になったけれど、まあ一人暮らしで出るゴミの量だ。多少出し忘れても、そんなに問題はない。そう、深く考えることを放棄する。


 そんなとりとめの無いことを考えながら。

 しばらく歩いて、あの通りをこえれば『猫のパン』だ。

「おはようございます!」

 元気に挨拶して店に入る。

「お、レンガちゃん、おはようさん!

 今日はあいにくの雨だけど、よろしく頼むよ!」

 元気なマリオさんの声がする。

 いつものように着替えてパンをバスケットに詰め込むと、今日は猫車と私の上に猫耳ポンチョを乗せて、パンの配達に向かった。


 今日のある配達先。

 コンコン、コンコン、……あれ?

 いつものように扉をノックするが、扉はいつものように開かない。

 トントン、トントン!

 だんだん強く叩くが、それでも反応はない。

 どうしたんだろう?

 仕方ない、大きく扉を叩こうとしたところで、

「ああ、しまったしまった。

 おはよう、レンガちゃん」

 ようやく扉が開いて、家のご主人が顔を出した。

「おはようございます、ファルコンさん。

 今日は全然開けてもらえないから、何かあったのかと心配になりました」

 私がそういうと、ファルコンさんは笑って、

「いゃあ、ははは。

 今日は雨だから、仕事も休みだしのんびりしようと、みんなで寝直してしまったんだ。

 いや、うっかり、うっかり」

 などと悪びれずに仰った。

「うふふ。起こしてしまってすいませんでした」

 私がいい笑顔を作って答えると、ファルコンさんは相変わらず「すまない、すまない」といいながら、パンを受け取ってくれた。


 別の、ある配達先。

「雨の日にありがとう。

 これ、ちょっと少ないけれど、よかったらお小遣い」

 たまにこんなふうに、配達先でなにかを頂くこともある。

 酒場なんかだったらチップにするお店も多いけれど、『猫のパン』ではいちど全部をお店に入れてから、お給料に乗せてみんなで分けることになっている。

「ありがとうございます! これからも『猫のパン』をよろしくおねがいします」

 私はお礼を言ってからそれを両手で受け取ると、いつもの集金のお金とは別に、口の閉じられるエプロンのポケットに分けてしまい、頭を下げてから次の配達先に向かう。


 そんなこんなで配達もおおむね無事に終わり、『猫のパン』に戻る。

「ただいまです!」

「レンガちゃん、おつかれ!」

「マリオさん、今日『預り物』あります」

 店に帰ったらマリオさんや店のみんなと挨拶、マリオさんに報告と今日受け取ったお金を提出してから、帽子とエプロンを定位置に戻す。

 よかった、服に泥とかが飛んだりはしていないみたいだ。

 最後にざっと確認してから、

「それでは失礼します。またあとで!」

 お店を出て、学院へと向かった。


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