5-2 家庭教師の1回目
2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。
2021年10月02日-サブタイトルの「日」→「回」に変更。字句などを修正、後書きを削除。内容に変更はありません。
「! どうぞ!」
ルチアさんがノックをすると、少し力の入った返事がしてドアが開く。
中に入ると、意外ときれいに整理整頓されていた。
「頑張ったわね、レオナルド」
ルチアさん、そこは「頑張るのよ」じゃないですか?
そう思いながらも黙って聞いていると、
「それじゃ、レンガちゃん、レオナルドをお願いね」
そう言って、私とレオくんを残し、ルチアさんは部屋を出ていった。
私は部屋の中を見回す。
ベッド、机、椅子が2脚に、ハンガーラックには服がかかっていて、クローゼットに、本棚もある。
冒険譚などが多いようだけど、本はそれなりに読んでいるようだ。
あれ、地図もありますね。あれは聖王国周辺のものかな。聖王国の大都市と10公家の領地とか、周辺国の位置と名前くらいはわかっているといいんですけれど。
ん? あそこの布がかかった下にあるのはなんだろう? ……まあ、いいか。別に、部屋を調査しに来たわけじゃないですし。
「あらためてよろしくおねがいしますね、レオくん」
「よろしくおねがいします、レンガ先生!」
元気いっぱいの返事。『先生』なんて呼ばれてしまうと、なんだか結構照れちゃうなぁ。
「それじゃ、いくつか問題を作ってきたから、いちどこれを解いてほしいんです。
それから、その間に、今使っているノートを見せてもらえませんか?」
「わかりました!」
ノートを受け取ってから作ってきた問題を渡すと、レオくんは机に向かい解き始める。
「ふん、ふん……」
私はレオくんの隣りに座って、ノートにざっと目を通していく。
ふーん、これは、ちょっと努力が要りそうですね。
これだと、科目にもよるでしょうけれど、難度4の問題が解ければ上出来っていう感じでしょうか。
足を組み替えつつ、考える。
チラッとレオくんの方を見れば、視線が合った。
「なにか、わからない所ありましたか?」
そう聞くとレオくんは、慌てて机に向き直り問題をにらみ始めた。
「なるほど。
はっきり言って、まだ実力不足ですね」
予想よりはいくらかうえの出来だったけれど、正直にまずそう言うと、レオくんが目に見えてがっかりする。
「でも、まだ時間はあります。しっかり勉強すれば、十分に合格まで行けると思いますよ!」
レオくんの手をとって、励ます。
実際、これならなんとかできそうなイメージは持てた。
「私も学院で待ってますから、一緒に学院に行きましょうね!」
するとレオくんもやる気を取り戻してくれたようで、力強くうなずいてくれた。
「レオくん、疲れたんじゃないですか?
ルチアさんが、ライチがあるっていってましたから、もらってきますね」
私がそう言うと、
「ぼ、僕がいくよ!」
そういって、レオくんが部屋を出ていってしまった。
……他人の部屋に1人でいるのは、正直少し、居心地が悪い。
あまりあちこち見るのも、悪いですよね。まあ、部屋に入るとき、もうあちこち見ちゃったような気もしますけど。
……あの布の下、気になりますね。
こっそり覗いてみようか、そんな事を考えたところで、レオくんが戻ってきた。
「おまたせ、レンガおねえさん。
ライチとジュース、もらってきた」
あれ? 『先生』はもう終わりなのかな?
ちょっと残念に思いつつ、2人でライチをいただく。
とてもつめたく冷やされていて、おいしい。
もしかして、私のために用意してくれたのかな? ライチは基本的に聖王国でとれないため、ほとんどを他国から輸入している。なかなかの貴重品だ。
……さすがに、昨日の今日でそれはないか。
なんて考え事をしてると、レオくんが私の顔をじっと見ていた。
「?」
どうしたのかな?
ライチが口の中に入っていてしゃべれないので首を傾げてみると、レオくんは下を向いて急いで自分の分のライチを食べてしまった。
なんだろう?
よくわからないけれど、私も急いで残りのライチを食べ終えると、
「それじゃ、今度はさっきの問題の解き方を考えていきましょうか」
そう言ってまた2人で机に向かった。
レオくんの勉強が終わると、ルチアさんにお昼ごはんをいただいて。
そのあいだに、いくつかの問題のアレンジを考え、レオくんの持っている基本書を何回も読んでおくこととあわせて課題にする。
そして1週間後の約束をしたら、
「レンガちゃん、ありがとね!」
「レンガ先生、ありがとう!」
2人に送られて家に戻った。




