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4-2 家庭教師のはじめかた

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-スキルという表現を改めました。ほかに字句などを修正と後書きを削除しています。

「いってきます!」

 制服を着て、家を出る。


「あら、レンガちゃん久しぶり。今日は遅いのね?」

 隣の家の奥様、ルチアさんと出会って、すこしだけ立ち話。レオくん11歳が、その影からちょっとだけ顔を出す。

「ええ、今日はアルバイトじゃなくて、ちょっと美味しいもの食べに誘われて。

 ……おはよう? レオくん」

 目線を合わせて挨拶すると、

「お、おはよう」

 すこしモジモジしながら返事がある。レオくんは、照れ屋さんだなぁ。

「……レンガおねえさん、なんだかいい匂いがする?」

 顔を少し赤らめて恥ずかしがりながらも、勇気をもって話しを続けてくれるレオくん。可愛い。

「まあ、隅に置けないわね。デートなの?」

「学院の友達ですよ」

 からかってくるルチアさんに、答える。

「そう、友達ね。……良かったね。


 そういえばレンガちゃん、少し暇があるようだったら……って、無理ねぇ」

 なんだか1人で納得してしまったルチアさんに、

「?」

 先を促すと。

「ああ、うちのレオナルドが学院に行きたいって聞かないのよ。

 でも、今の成績じゃあ、全然ね。

 それで、隣家のよしみでレンガちゃんにいろいろ教えてもらえたらと思ったんだけど……

 レンガちゃん、いつも忙しいからねぇ」

 たしかに時間はない。でも、レオくんの方を見てみたら、なんだかすごい熱のこもった視線と出会った。

 うーん、こういう目には弱いんですよね。

「私もなかなか時間がないので、課題を出して、休みの日に少しだけですがそれを見るかんじになってしまうと思います。

 それでもいいですか?」

 なんとかできそうなところを答えると、ルチアさんが申し訳無さそうに言った。

「本当にごめんなさいね。来てくれたときのお茶やご飯くらいなら、ごちそうするから。それに、もちろんお礼もね。

 ……ほら、レオナルド、お願いしますは?」

「よ、よろしくおねがいします!」

 顔を真っ赤にしながら、力いっぱい熱意のこもったお願いをされてしまった。

「こちらこそ。これから、よろしくね」

 引き受けた以上は、私も頑張ろう。そう決意して、レオくんの頭をなでてあげた。


 ルチアさん親子と別れて、市場の塔に向かう。

 待ち合わせは、塔の正面に作られた大きな車溜まりの前だ。

 ついてみると、まだエメラルド様の姿はない。

 よかった、遅れてはいないみたい。

 しばらくまわりの喧騒を聞くとも聞かずに、待つ。


「でね?

 兄貴がいうには、パンをくわえた美少女が角を曲がって飛び出てきたらしいの。もうすぐぶつかりそうだったんだって。

 『ぶつかってたら絶対あの子彼女になってた』なんて、もう変な物語の読みすぎよ」

 少し離れたところで、クレープを片手に少女が友人に愚痴ってる。

「でも、ひらりと避けられて、そのまま行っちゃたんだって」

「出会い頭にぶつかりそうなところを避けるって、かなりすごくない?」

「うん、普通じゃないよね。

 ……でも、兄貴ったら諦めきれずに、『あの子のハンカチを拾った、届ければきっと仲良くなれる』なんていって、私に洗えって。

 どうおもう!?」

「うわ、ひどーい!」

 仲良く2人で怒り出しているのが、微笑ましい。


「レンガ様、お待たせしてしまった?」

 エメラルド様に声をかけられて、振り返る。

 いつもの制服なのだけれど、なんだかいつも以上にキレイな気がするのは、いつもより生気が溢れてみえるからだろうか。もうお体の調子は大丈夫のようだ。

 歩いてこられた方向からして馬車を使われたのだろうけど、侯爵家の馬車は見当たらない。ご配慮されて、街の馬車をお使いになったのかな?

「さ、行きましょう」

 私の手をとって歩き始めたエメラルド様に、ついていく。

 フワリと、いい匂いがした。

「レンガ様に習って、少しネロリを使ってみたの」

 香りの効果って、すごいんだなぁ。

 いつもよりずっと魅力的に感じるエメラルド様に感心しながら、私は塔の中へと引っ張られていった。



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