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4-1 うちのメイド

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-字句などを修正。後書きを削除。内容に変更はありません。

2023年1月22日-誤字修正。


 ガラス窓から入ってくる朝の光がベッドに寝ている私の顔にかかり、目を覚ます。

 ガバっ!

 と起き上がると、窓際に駆け寄る。

 覗いた空はきれいに青くて。

 よかった、今日はどうやらいい天気のようだ。


 いつものように水を飲み、朝食のパンを食べる。

 エメラルド様との待ち合わせの時間には、まだ時間がある。

 それまでにざっと家の掃除をしてしまおう。


 まずは自分の部屋から。床を掃き、窓を拭いて。ベッドを直したあとで、机の上のものを整理。……、気がつくままに進めたら、最後に壁にかかっている私とパパママの肖像画のホコリをそっと払う。


 部屋から出る。いつもはそのまま階段を降りて居間の掃除をするところなのだけれど。

 ……ふっと、目の前の両親の部屋が目に入る。右がママの部屋で、左がパパの部屋だ。

「そういえば、最近全然掃除もできていませんね」

 なぜ、忘れていたのだろうか。

「どこかで、忘却魔法でもかけられましたかね」

 そんな実在するかもわからない魔法、かけられる機会もないと思うけれど。

 小さく笑ってから、久しぶりにママの部屋にはいる。


 扉を開けた風で積もったホコリが舞い、窓からはいる光が筋を作った。

 すこしだけ、昔の事が頭を巡って、ちょっと苦しくなって。思わず入り口で立ち止まって、部屋の中を見回した。

 ベッド、机、クローゼット、……、カーテンは前に入ったとき閉めるのを忘れたのかな、開いたままだ。


 そういえば……

 掃除道具などが入れてある物入れの扉を開ける。廊下に置くのは忍びない、とママが部屋に運び込んだものだ。

 掃除道具を少しずらして、奥に隠れていた魔石に手を触れる。魔力を吸い込まれる感覚がして、魔石の周りに書かれた陣が発光する。


「おはようございます、レンガお嬢様。ご無沙汰しておりました。……お元気でしたか?」

 どことなく丸みを帯びた声が、横から優しくかけられた。

「……リャナ、お久しぶりです」

 顔を向けると、魔石から解放された妖精『リャナンシー』が、微笑んで私を見ている。

 パパとママが付き合い始めた頃、リャナがパパにつきまとっていたところをママにメッ! されたらしいが、その時ママと殴り合いの死闘をしたことでママの友人兼メイドになった、と幼い頃に聞かされた。

「お嬢様、ずいぶん大きくなられましたね。……よかったですね? お胸の方もお母様に似てこられて」

 少しだけニヤっとした笑みを浮かべて、リャナがからかう。

「私も、もう泣いてばかりの子供じゃないです」

「前にお会いしたときは、一晩中私の腕の中で泣いてましたものねぇ」

 言い返す私に、ニヤニヤとリャナが続けるので。

「……ありがとうリャナ、ひと目あえて嬉しかったです。それじゃ……」

「あはは! レンガちゃんは、気が短くなった? そんなんじゃ、彼氏に嫌われるわよ」

 送還してやろうかと魔石に手を伸ばそうとしたら、優しく手のひらを掴まれて、反対の手で額を軽く弾かれた。


 それからリャナは部屋を見回して、

「……あらあら。この部屋、ちょっと、汚れているかな」

 そう言うと目を閉じて、少し沈黙。

「ちょーっと、お母様のお部屋に、失礼じゃありませんかね? お嬢様」

 薄目を開けて、睨まれる。この部屋の扱いに不満のようだ。

「……ごめんなさい。

 ママの部屋、このところずっと、来れてなくて……」

 私は視線を俯かせながら、謝った。

 ママに叱られたようで辛い。


 そんな私に、ため息をつくとリャナは両手を回し、優しく抱きしめてくれた。

「そか、それじゃ、お掃除しよっか! よし、今日は徹底的に、やろう?」

 ニパっ、という感じのリャナの笑顔が元気をくれる。

 でも、

「あ、えーと、このあと約束が……」

「ん? デート? レンガちゃん、ほんと大きくなったね!

 それじゃ、リャナのスペシャルコースで!」

 勝手に納得したリャナが指を鳴らすと、強い風が巻き上がる。

 その風は、勝手に家の扉と窓を全部開け、家中の埃を巻き上げてから吐き出すと、また優しく閉じ直した。


 私の方に向きなおるリャナ。

「よし、私、頑張った。……そのせいで、もう魔力切れそうだけど。

 ……ん、レンガちゃん、今日は大丈夫そうだね?」

 そう言いながら、少ししゃがんで私に目線を合わせてくれた。

「……うん。

 だいじょうぶです。また、呼んでもいいですか?」

「レンガちゃんなら、大歓迎だよ。今日みたいなレンガちゃんでも、前みたいな泣き虫さんでも」

 優しい抱擁。

 そして立ち上がると、優雅に整った礼をして。

「それではレンガお嬢様、失礼いたします」

 リャナは光の中に溶けていくように、魔石の中へと帰っていった。


「………………おふろ、はいろう」

 ちょっと感傷的になったのを追い払うように言って、浴室に向かう。

 身体を流してから浴槽に入ろうとして、今日も入浴剤を使おうか少し悩む。

「そういえば、お洒落、って言ってもらったな」

 エメラルド様の言葉を思い出し、今日も思いきって入浴剤を使うことにした。


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