表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/316

3-4 市場の塔

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-字句などを修正。内容に変更はありません。

 滞在することしばらく。

 そろそろ夜の仕事に向かう時間になり、すっかり元気そうなエメラルド様のところを辞する。


「焼きそばパンのお礼に、明日『ナナタマ』に行きましょう!」

 帰り際にエメラルド様がそんな宣言をして、私は店の予約を頼まれた。


 時間はなんとかなるだろう、猫のパンにいくまえに用事は済ませてしまおうと、市場の塔に入る。

 両脇に多くの店が立ち並ぶ広い通路を進んで、エレベーターの前に立ち、来るのを待つ。

 この大陸で他所にはないと言われる、連合国から持ち込まれた蒸気式のものだ。


 ピー! シュコ、シュコ、シュコー パシュウゥゥゥ 


 エレベーターがつくと汽笛が鳴り、蒸気音とともに扉が開く。

 どっと人が入れ替わる。私は中に入ると、エレベーター運行係の女性に最上階までとお願いした。


 チラチラと視線を感じる。でも、そちらを向くと、逸らされる。別に、おかしな格好はしていないはずだけど。なんだか少し、居心地が悪い。

 混雑していたエレベーター内も上階に向かうにつれてだんだんと人がいなくなり、最上階に着く頃には数人だ。


「12階。最上階、カフェ『ナナタマ』、ラウンジ『トレヴィユー』、レストラン『トリコロール』、甘味処『ジュ・プリュウ』などございます」


 案内とともに開いた扉から外に出て、フロアマップを確認し、『ナナタマ』に向かう。

 そこにはかなり長蛇の列があり、店の入口でスタッフと思われる人が案内をしている。

「あの、予約をお願いしたいのですけれど……」

 スタッフに声をかけると、貴族籍の有無を聞かれた。

 貴族でないと予約できないのかな? エメラルド様のお使いだけどエビナー侯爵家の関係者じゃだめだろうか?

 などと考えながら私が貴族でないことを伝えると、それならと予約を受け付けてもらえた。

 なんでも、店主のポリシーで貴族より平民を優先しており、貴族からの予約は受け付けていないのだそうだ。

「あの、貴族の方とご一緒する予定なのですが」

 と念のために確認したら、同伴者は貴族でもいいそうだ。……けっこうザルのような気がするなぁ。

 2名の予約をすると、時間の記入された予約票を手渡された。それを受け取り、今度はエレベーターで下に降りて、塔の外へ。猫のパンに向かう。


 店につき着替えると、いつもどおりに配達、そのあとはお店に出て手伝う。

 もうこの時間だと、売り切れているものも多い。タイミングを見て、空いたかごを下げる。


「すいません。月見トースト、もうないですか?」

「あぁ、ごめんなさい、もう売り切れてしまいました」

たまにかけられる質問に答え、対応していく。


「ごめんレンガちゃん、ちょっとサラダ用意してくれ!」

 マリオさんの指示に、キッチンに行くと手早く野菜をカップに入れてドレッシングを添える。


「ねえ、店員さん。仕事終わったら、ちょっと時間ある?」

「はい? 私、だいぶ遅くまで残るので、時間ないです。ごめんなさい」

 冒険者風の男性だ。なにかの調査だろうか? 協力してあげてもいいけれど、残念ながら今日はつきあっている暇がない。


「あの、すいません! それ、学院の制服ですよね?」

「え? そうですよ」

 女の子4人組に聞かれてそう答えると、何故か歓声がわき、4人全員から握手を求められた。


 そんなこんなで、慌ただしく時間が過ぎていく。

 そして、無事に会計も終われば、今日のお仕事はおしまいだ。

「お疲れ、レンガちゃん。

 それじゃ、明日はゆっくり休んでな!」

「おつかれさまでした!」

 マリオさんと挨拶を交わすと、大通りを選んで進み、家へと帰る。

 いちおう警戒したけれど、今日は何事もなく帰宅できた。


「ただいまです!」

 欠かさず挨拶。そして制服を脱いだら寝押しの準備をして、本日2回めのお風呂。

 湯船に浸かりながら、明日の約束のことを考える。


 あー、誰かと約束して街に行くなんて、よく考えたら初めてかも!

 なんだか、急にドキドキ・ワクワクしてきた。

 お湯に口まで浸かって、ブクブクブク。

 そして、ザバぁと、おもむろに立ち上がる。

 このままお湯の中にいたら、のぼせてしまいそうだ。


 お風呂出の牛乳を喉にゆっくり流し込む。おちつけ、落ち着け、私。

 髪と肌を整えようと鏡に向かう。紅潮した顔が映る。きっと、湯上がりのせいだけじゃない。

 学院の課題に向かうが、なかなか手につかない。

 ……もう! しかたない、明日がんばろう!


 そういうことにして、明日の準備をする。いそいそ。

 とはいえ、着ていくものも制服くらいだし、アクセサリーなんて持っていない。

「下着に凝っても、しょうがないし……」

 そもそも、下着もそんなにいろいろ持っているわけではない。

 あまり準備することがなくて、なんだかしょんぼりした気持ちになる。


 どこか消化不良な気分でベッドにはいり、私とパパママの肖像画が目に入る。

 慌てて体を起こし、明日友達とおでかけすることを報告した。

 パパ、ママ、素敵な友達からおでかけに誘われました。

 今になって、本当なのか不安になってきます。

 どうか、楽しい一日になりますように!

 見守ってくださいね、パパ、ママ。


 そして、あらためて横になる。

 正直寝付けるか心配だったけれど、何回かコロ……コロ……と左右に転がっているうちに、いつの間にか眠りについていた。


興味を持っていただけたり、応援をいただけるようでしたら、ぜひブックマーク・評価・感想などをいただけますと幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ