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29-4 アジィ様に『研究会』のお話をすること

 夜。食事もお風呂も終わって。

 私は、今晩もアジィ様と一緒にベッドでお話をしていた。


「もう、明日には帰ってしまうかもしれないのね。寂しいわ」

 アジィ様が、私の隣に座りながら、とても残念そうにそう仰る。

 夕食の時、グリシーヌ侯爵様が。

 レクトの国王や魔導騎士たちはさっさと尻尾を巻いて聖都を去ったことと、

 今晩問題がないようなら明日の夜から私も自宅に帰って大丈夫だろうことと、

 その場合は明後日からアルバイトへも復帰できるように連絡してくださることを、伝えてくださったのだ。


 アジィ様のうっすら涙を浮かべた瞳が閉じられたので、私は指で優しく涙を拭う。

「大丈夫ですよ。アジィ様とは、毎日学院で会えるじゃないですか」

「それは、そうだけど。

 もっと一緒にいてお話したいと思うのは、変かしら?」

 うーん、親愛の情ってやつでしょうか。


「それに、学院でも授業が終わったあとは、レンガ様どこかに行ってしまうでしょう?

 いったい、なにをされているの?」


 ああ、そういえば。

 アジィ様たちに『研究会』のことは、詳しく話していませんでしたね。

 口止めもされていませんし、いちどきちんとお話しておきましょう。


「あれは、ユーリ様の『研究会』に参加しているんです。

 神殿の巫女様に誘われたお話、しましたよね」

 私がそういうと、アジィ様の表情が驚きに固まった。

「……!

 確かに、そんなお話はありましたけれど。

 たまに神殿にいかれて、いくらかお話をされるくらいだと思っていました。

 レンガ様、ほぼ毎日、けっこう長時間、いかれていますよね?」

 なんだか、アジィ様の口調もいつもより少し堅くなっているような気がします。

「はい。情報交換したり、訓練したり、励ましあったり、いろいろです」

「お2人というわけでは、ないんですよね」

「はい。

 メンバーは、

 神殿の巫女様のユーリ様。よく紅茶とか淹れてくださいます。

 次に、これは内緒にしてくださいね、実は生きてらした元レクトの『廃公』シリル様、

 カーン商会の会頭をしておられるラー様、

 カムロっていう傭兵と親しいミイツ様、

 日輪騎士団の騎士をされているミズナ様、です」


 そう言って、アジィ様を見ると。

 ……うわぁ、ドン引きされてますよ。


「神殿の巫女様も、恐れ多いのに」

「先日も、このお屋敷に来られてましたけど?」

「心臓が止まるかと思いました!

 あんなに間近でお会いしたのも、はっきりとお顔を見たのも、初めてですよ!

 レンガ様からお知り合いと聞いて、なるほどとは思っていましたけれど、まさかそんなに親しいなんて」

「親しみやすくて、いい人ですよ。ちょっと、掴み所がないときもありますけれど」

「その距離感がおかしいです、レンガ様!」

 アジィ様の声が大きくなる。

 アジィ様がこんなに感情をはっきり出されるのも、初めて見るんじゃないでしょうか?


「それに、レクトの『廃公』が生きているのですか?

 世界中を騒がせる、国際問題になりますよ!?」

「大丈夫ですよ。

 確かに、一見冷たい感じもありますけれど、実はすごく優しい人ですから。

 それに、問題になっていないみたいですから、ユーリ様あたりがなにかされているんじゃないですか?

 じゃなければ、カムロ使いとかいうミイツ様あたりが」

「まあ、巫女様が動いておられるのなら、そんなこともあるかもしれませんけれど。

 それじゃ、この前からのレクトの件も、巫女様が裏で取り仕切って?」

「ああ、えーと、どうやらそのようです。

 そういうところは、怖い方だと思いますし」

「ほんとうに、怖いですわ。あまり考えたくないです」

 アジィ様が、ふるふると首を振る。


「……そういえば、カムロ使いってなんですか?」

「ああ、カムロっていうのは情報を扱うことで有名な傭兵らしいです。

 情報を集めて、流して、操って。たしか、そんなふうに聞いています。

 なんでも、昔話か何かで神の狼の意味だとか」

「ああ、そういうお仕事に関わっておられるのですね。

 ……でも、私も『カムロ』という名前をどこかで聞いた気が……」

 私の手をギュッと握りながら、アジィ様は少し考え込まれたふうだったけれど。

「たしか、学院の7不思議だったと思います。

 髪を肩で切りそろえた、少年とも少女ともつかないなにか。

 それは何でも知っていて、そしてそれが何でも知っていることを知ってしまった誰かは、1人になってしまうとそれに殺されてしまうの。

 たしかその名前が、『カムロ』……」

 アジィ様の体が、ブルッと震える。


 どうして、1人になったところを殺されて、カムロの仕業ってわかるんですかね? とんだヘボ殺人犯じゃないですか?

 などと考えたりしつつ、私は可愛らしく震えたアジィ様の肩を軽く抱いて。

「大丈夫ですよ。ミイツ様は優しい方ですし、綺麗な女性です。

 でも、たしかに。髪は肩で切りそろえてらっしゃいますね。フワフワで可愛らしいですけれど」

 アジィ様は、私にしがみついてきた。

 いつも強気なアジィ様のこんな姿、なんかとてもかわいいです!

「ああ、そういえばアジィ様も、何回かお会いになってますよ。

 先日もユーリ様と一緒にここに来てらっしゃいましたし。

 あとは、……ああ。いつか私が学院で倒れたときに保健室で会った、プリンをくれたあの人ですよ」

 私が笑ってそういうと、アジィ様は小さく体を震わせながら心細そうに私の顔を見上げて、

「なるほど、あの方ですか。納得しました。

 レンガ様、私を護ってくださいますか?」

 そんなことを仰るので。

「もちろんです!

 命に代えても、お護りしますよ!」

 私はそう請け合って、アジィ様の震えが止まるようにしっかりと抱きしめたのだった。


「レンガ様お願いします、今晩はこのまま私を抱きしめていてください。

 でないと、怖くて眠れそうにありません」

「ふふ、そんなアジィ様も、とても可愛いですよ」

 私はそう答えると、アジィ様の体を抱きゆっくりと撫で擦る。

「ほら、体もこんなに固くなってます。

 もっと、力を抜いてください。

 私を感じてもらえれば、大丈夫ですよ」

「……はぃ……」

 私がアジィ様の体を優しく触り続けると、次第にアジィ様の体から力が抜けていく。

 もう、大丈夫ですかね?

 でも、アジィ様の体って、柔らかくて気持ち良いですね。なんだか、癖になりそうです。

 あともうしばらくと続けていると、

「……あの、もう大丈夫です……」

 蚊の鳴くような声で、アジィ様が仰った。

 私は、ちょっと名残惜しいけれど、手を離す。

「良かった。

 確かに、もうだいぶリラックスできたみたいですね。

 それじゃ、そろそろ明日に備えて寝ましょうか」

「……とてもこのままでは、寝られそうにないですわ。

……先ほどとは別の意味で。」

 相変わらずアジィ様はかすれるような小声で仰った。

「え? どうしましょう?

 やっぱり、もう少しギュッ! ってしてましょうか?」

「……。

 いいから、レンガ様はお休みください。

 私は、レンガ様の寝顔でも見ています」

 アジィ様は、なんとも言えない複雑な表情でそういうと、フイと横を向いてしまった。


 パパ、ママ、私どうしたら良いんでしょうね?

 言われたとおり、アジィ様をほっておいて良いんでしょうか?

 いくら考えてもわからず、頭の中がぐちゃぐちゃになった私は、横になってすぐ意識を失ってしまったのでした。

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