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28-3 お庭でお茶を

2024年1月2日-誤字修正。

2024年2月16日-名前の呼び間違えを修正。

「ようこそ、エメラルド様」

「お邪魔しますわ、アメジスト様」

 陽射しの中向かい合うのは、馬車を降りたメリーダ様と、玄関前で待っていたアジィ様。


 あれ? 

 お日様も出ていて、風もそんなにないのに、なんだか背筋が寒いです。

 どうしたんでしょうか?

 せっかくアジィ様とメリーダ様のお2人とお茶ができるのに、体調を崩したなんてことは嫌なんですけれど。


 私とアジィ様が案内して、メリーダ様を庭のテーブルまで誘う。

 なんだか、後ろを歩くメリーダ様から感じる迫力がすごい。

 どうしたんでしょう?


「こちらですわ、エメラルド様」

 私の隣に立ったアジィ様が、用意したテーブルをさすと。

 メリーダ様は笑顔を深め、

「まあ、綺麗なお庭。

 特に、あちらの花壇はこちら向きから見ても素晴らしいのね。

 それにしては、テーブルクロスは控えめなのね。

 少し、意外だったわ」

「今日は、レンガ様と一緒に、お迎えの準備をしましたの。

 あまり飾り気がないところが、レンガ様らしいと思いませんか?」

 アジィ様も笑顔を深めて私を見ると、そんな紹介をしてくださった。

 もう、なんだか恥ずかしいですよ。もうちょっと、派手なものにしたほうが良かったですかね?

 顔を赤らめながらメリーダ様の方をチラリを見れば、

「そうね。

 少し控えめなところが、レンガ様らしいわ。

 これも、素敵ね」

 そんなふうに言ってくださったけれど、なんだか表情が硬かった。

 どうされたんでしょう? やっぱりイマイチだったとか?

 いえ、メリーダ様はこういうことははっきり教えてくれると思います。

 実は体調悪いのに、ご無理して私のことを心配して来てくださったりとかじゃ、ないですよね?


「さあ、座りましょう」

 アジィ様がホストの貫禄で私とメリーダ様に席を勧めてくださり、座る。

 シトリンさんがハーブティを給仕してくれた。

「これも、レンガ様が?」

「ええ、一緒に選んだの。

 いかがかしら?」

「……おいしいわ」

 メリーダ様は紅茶に少し口をつけると、そう褒めてくださった。

 お口に合って、良かったですよ!

 思わず、笑顔になる。


 しばらく、静かな時が過ぎる。

 うん、雰囲気を味わってくださっているんでしょうか?

 なかなか良い場所だと思うんですよ。気に入ってくださると良いんですけれど。


「レンガ様、昨晩は問題ありませんでしたか?」

 お茶を一口したら、すぐに私の心配をしてくださるメリーダ様。

 申し訳ない気持ちも強いんですけれど、心配してもらえて嬉しい気持ちのほうが大きいです!

 レクトが来ていないのは一目瞭然なので、心配してくださっているのは『ヤキトリ』や『バター』のことでしょうか。

 でも、そう仰らないのは、アジィ様の前で口にしてしまって良いか気にしてくださっているんでしょう。

 それなら……

「はい。『ヤキトリ』も『バター』も、大人しいものです。

 昨日の夜は、アジィ様と私でパジャマパーティをしまして。

 朝まで私のことをずっとお話していたんですけれど。

『ヤキトリ』と『バター』のことも、全部お話しました。

 なので、よろしければこれからは、アジィ様とメリーダ様のお2人に相談させてほしいと思っているのですけれど。

 ……だめですか?」


 どこか厳しい表情になったメリーダ様の顔を窺いながら、私がそう聞くと。

「相談には、是非参加させていただきたいわ。

 それは、もちろん大歓迎なのだけれど。

 ……レンガ様、昨晩はアジィ様と2人でお休みになったのですか?」

 メリーダ様はじっと私の眼を見ておられる。

「はい。

 といっても、眠ってはいないです。

 むしろ、ずっと起きてちゃったかんじで」

「ええ。

 同じベッドの上で。

 楽しかったわ。私、忘れられないと思うの」

 アジィ様が、流し目で私の方を見ながら、そんなふうに仰った。


「……そうなの、ですか?」

 メリーダ様は小首を傾げて。顔の角度が変わったせいか、影で表情がよく見えなくなる。

 私は、なんだか少し不安になった。

 背中に、なんだか涼しい風が通り抜けた気がする。

 でも、花も木の枝も揺れていない。どうしたんでしょう?

 心臓が、ドキドキします。


「え、あ、はい。

 ずっと、私の昔のことをお話してました」

 すると、メリーダ様はお茶をひとくち飲んで。

 あ、お顔がまた見えるようになりました。やっぱり、笑顔が素敵ですよね。

「そうなのですね。

 今度、私にもレンガ様のことをゆっくり聞かせてください」

「はい!

 メリーダ様に隠すことなんて、もうなにもないですから!」

 私が笑顔でいうと、メリーダ様の瞳も優しく笑ってくださった。


「ああ、でも。

 メリーダ様みたいに、一緒にお風呂とかはなかったです。

 あれ、けっこう楽しいですよね?」

 メリーダ様の方を見ながら、私がそう話を続けたら、

「よかったら、またご一緒しましょう。

 郊外の館にも大きなお風呂はあるし、新しく建て直す聖都の屋敷にもまた大きなお風呂をつくるみたいだから」

 メリーダ様は、それは嬉しそうにそう誘ってくださったので、

「はい、楽しみです!

 できれば、こんどはアジィ様ともご一緒したいです!」

 それで今度はアジィ様の方を見てそういうと、

「ぜひ、ご一緒できると楽しそうね」

 アジィ様も、それは嬉しそうにそう答えてくださった。


 そして、お話は続く。

 話題の中心は主に私で。

 お2人とも、気遣ってくださっているのかな?

 なんて、また申し訳なくもありがたい気持ちになる。

 まあ、私はもっとお2人のことも聞きたかったりするんですけれど。


「あら、もうこんな時間。

 メリーダ様、ご予定は大丈夫ですか?」

 夕日に照らされて、アジィ様が心配そうに仰る。

「……そうね。

 そろそろ、御暇させていただくわ」

 メリーダ様は、名残惜しそうに立ち上がると。

 じっ……、と私を見て、小さく手を開かれた。


 ああ、これは。

 近づいて、そっと手を回す。

 優しい抱擁……、とおもったのですけれど、私に回ったメリーダ様の手の力が、意外に強くて。

 私も手に力を入れちゃいました。これじゃ、けっこう『熱い抱擁』ですよ。

 しばらくの抱擁のあと、今度はメリーダ様が目を閉じて顔を上げる。

 もちろん、わかってます。

 私はそのまま、頬に唇を落とした。


「さあ、馬車がお待ちですわ」

 アジィ様に連れられて、私とメリーダ様はエビナー家の馬車まで歩き。

「では、また」

 メリーダ様が手を振って、馬車は走り去っていった。

「おつかれさまでした。さあ、戻りましょうか」

 見送ったあと、アジィ様は私の隣でそう言って、小さく腕を開き。

 私は抱擁しながら頬にキスをして、屋敷の中に入ったのだった。


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