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26-4 『バター』

「それでは、反省会を始めます」

 ここは、おそらく頭のなか。

 私はたぶん目を閉じているのだろう、外の景色は全く見えない。

 宣言した私の目の前には、朱の少女『ヤキトリ』と、白いタンクトップにホットパンツの軽装を着て不貞腐れたように座るボーイッシュな女子。


「『ヤキトリ』、なにか言いたいことはありますか?」

 私はジットリと睨んでそう言ったのだけれど、

「とにかくなんとか戦いを避けたいという、ご主人さまの願いを見事に形にしました。

 これほど良い働きをする相棒は、ほかにはまずいませんよ?」

 などと胸を張る始末。

 こいつ、本当にヤキトリにしてやりましょうかね!?


「それより、これをどう呼ぶか決めましょう。

 でないと、お話もしづらいでしょう?」

 これ、扱いはどうかとおもいますけれど。

 まあ、『ヤキトリ』の言うことも、もっともです。


 そういえば、さっき頭や体を駆け巡る朱と白の魔力、すごかったですね。

 ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。溶けちゃうようでした。

 ……そういえば、確か昔そんな物語を聞いた記憶がありますよ。

 たしか、それで……

 ”虎は、『バター』になる”。


「ふ、ふざけるニャッ!?」

 突然立ち上がって大声を上げる白い女子と、

「よろしくおねがいしますね、『バター』さん!」

 たいそう嬉しそうに、仲間ができたことを喜ぶ『ヤキトリ』。

 え? あれ?

 私、またなにかやっちゃいましたか?

「私は、いま『絶望』という言葉の意味を、心から理解したニャ……」

 白い女子は、がっくりと膝を着くと、しくしくと泣き出したのだった。


「まずは、自己紹介をしましょう。

 ご主人さまからどうぞ」

 なぜか『ヤキトリ』が仕切っていますが、まあ言っていることはいちいちもっともです。

 まず私が自己紹介をし、次にヤキトリが続く。

 最初は怒りを抑えるように聞いていた『バター』だったけれど。

『ヤキトリ』の話を聞くうちに、なんだか大人しくなって。

 終わる頃には、

「お前も、災難だったニャア……」

 などと言って肩をポンポンと叩く始末。

 見つめ合う『ヤキトリ』と『バター』は、なんだか2人だけで通じ合っているようで、少しむかっ腹が立ちます。


「それでは、『バター』さんはどんな経緯でここに?」

『ヤキトリ』が聞くと。

「私は、もともとこの世界に在ったわけではなかったのニャ。

 ずいぶん昔、世界を護って欲しいと呼ばれたのニャ。

 素敵なお家をもらったから、そこに住んでたニャ。

 最初は色々話しかけられたけど、いつの間にか静かになったニャ。

 それでのんびり寝ていたら、誰かが来て家ごと変なオッサンにくっつけられたニャ。

 それだけでも、ひどい話だと思うニャ?

 ところが、不幸はまだまだ続くニャ。

 気がつけば元の体に戻っていて、久しぶりの自由を満喫しようとしたら。

 いきなり攻撃されて、挙げ句に、食われたニャ。

 私は、ただ呼ばれただけで、しかも願いを聞いてやったのに。

 私が、いったいどんな悪いことをしたというのニャ?」


 おもってたのとちがう……

 けっこう良い虎さんでした。

 確かに、悪いことをしてしまったような気もしてきます。

 でも、もうどうしようもないですよね?

 そして、虎なのになぜ語尾は『ニャ』なのでしょう?


「あはは。そのうち慣れますよ」

 笑いながら『バター』にそう言った『ヤキトリ』の笑顔は、なんとも形容しがたいものだった。

「せっかくこうして出会ったんです。

 楽しく暮らそうじゃありませんか!」

「……そんなになるまでの葛藤がしのばれるニャ」

 どこまでもにこやかな『ヤキトリ』に、疲れた顔の『バター』。


 その後も、話は続き。

「どうやら、接近戦だと私、遠距離では『ヤキトリ』のほうが強そうニャね」

「私の『流星召喚』が使えれば、そうなるでしょうね。いえ、羽が飛ばせるようになるだけでもずいぶん違いそうです。

 逆に、周囲を薙ぎ払える『神虎の鼓動』が使えれば近距離ではそうそう不覚を取ることもなさそうです。あの『虎吼砲』があれば、遠近万能といえるかもしれません」

「速度は、たぶん私のほうが上ニャ。

 再生なんかの特殊能力は、『ヤキトリ』かニャア」

『ヤキトリ』と『バター』の分析は進み、役割分担的な話にまでなってきていた。

 それじゃあ、

「えーと、私は……」

「ご主人さまは、私達を使いこなせるようになってください」

「マスターは、私達にもう少し自由をくれるのが、役目だニャ」

 少し呆れた表情でこちらを見られる。返す言葉もない。

 うぅ、魔力制御の練習、いっそう励みますぅ。


「さしあたり、どうします?」

「私か『ヤキトリ』のどちらかが、マスターとの仲介と魔力の制御に徹したらどうかニャ?

 それなら、もう1人が全力を出せるかもしれないニャ」

 そのまま。私は口を挟めないまま、『ヤキトリ』と『バター』の話は続く。


 なるほど、そんな手もありますか。

 私が見たところ、『ヤキトリ』『バター』どちらも、人が扱いきれるものではありませんでした。

 そんな力を、私が扱えるようになるかもしれない。

 これは。

 魔力制御の練習も大事ですけれど、そのまえに心の整理をしっかりとしておいたほうが良いかもしれません。

 こんなときに相談できる人……メリーダ様、アジィ様、サファイア様、エビナー侯爵家の方々、銀月の皆さん、いろんな人を思い浮かべて、最後に思い浮かんだ顔。

 こんど学院に行ったら、『研究会』のみなさんに相談してみたいです。


 パパ、ママ、なんだかますます変なことになりました。

 とりあえず、お友達が増えたみたいです。

 皆で仲良くしたいと思いますから、応援してくださいね…… 


興味を持っていただけたり、応援をいただけるようでしたら、ぜひブックマーク・評価・感想などをいただけますと幸いです。

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