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26-2 魔導騎士から現れたものは

 グゥ……、ガオォォおぉぉ……


 獣の吠える声が、崩れた屋根を越えて、屋敷中に響く。

 その声で目が覚めた私が薄く瞼を開くと、声とともに崩れていく屋敷の壁に、眼前には私の5倍はある純白の虎のような魔獣。

 風をまとっているのか体毛が揺れて、ところどころが虹色に輝いている。


 また、なにかでましたよ?

 魔導騎士は、びっくり箱ですか!

 私は、ゆっくりと体を起こしてみる。

 身体は大丈夫だけれど、頭がふらつく。

 魔力の使いすぎですかね。でも、それもなんだかだんだん慣れてきましたよ。


「何があったのですか?

『ヤキトリ』!」

「はい。

 私の炎で、先程の魔導騎士と融合していた何者かが復活・覚醒した模様です。

 宿主の方は、魔力に耐えきれず消滅したようですね」

「そうなんですか。

 恐ろしい魔力、ですね」

「体の大きさはそれほどでもないですが、おそらく可変しますから油断されないように。

 それに、この感じ……私に類似する存在ではないかと。

 どうされますか、ご主人さま?」

「放っては置けません。

 倒すか、封印するか、なんにせよ危害の無いようにしないと。

 とりあえず、先程と同じ体勢で様子を見ます」

「わかりました」


 そして世界に色が戻る。

 白い獣は、じっと私の方を見る。

 しばらく見つめ合う私達。

 でも、白金色の魔獣の瞳からはその考えを汲み取ることはできず。


 このままじっとしていても、ジリ貧ですね。

 いまの心身ともに強化した状態を維持し続けたら、私が倒れちゃうのは、目に見えてます。

 そうだ、『ヤキトリ』と似たものだというのなら、まずしてみることは……


 そして私は、呼びかけてみることにした。

「あの。

 私は、レンガっていいます。

 あの、お話、できませんか?」


 それに返ってきたのは、唸り声。

 決して、友好的とは言えないように感じた。

 でも。


 あれは、全く聞く耳がないという感じでも、ないですねっ!

「『ヤキトリ』、反応がありました!」

「対話可能かもしれませんね」

「貴女から説得は無理ですか?」

「この状態を解除して、私が仮に姿を取る必要がありそうです。

 しかし、実体化に魔力を回すとご主人さまが倒れてしまう恐れもありますし、もしもの場合を考えると、あまりお勧めしかねます」

「そうですか。

 皆でお話してみたかったのですけど、仕方ないですね。

 もうちょっと、私がお話してみます」


『ヤキトリ』との会話を終え、帰ってくる。

「虎さん? 白い獣さん?

 よければ、いえ、ぜひ、私の話を聞いてくれませんか?」

 私はゆっくり近づこうとした、のだったけれど。


「ヒャ、ッハァ。

 おまえ、――――、かよ。

 なんだ、強化が無事成功かと思ってたら、取り込んだ『因子』に食われちまったか。

 ザマァ、ないな!

 夜の任務で偶然出会った女にご執心なんて、魔導騎士の名が泣くぜ?」

 壊れた壁の向こうからやってきたのは、羽をはやした血みどろの誰か。

 おそらく魔導騎士。

 ゆっくりと、しかし鋭い目で近づいてきたそれは、しかし突然加速して。

「それなら、その『因子』、おれにくれっ!」

 一瞬で姿がかき消えるような瞬足と、空を変則的に駆けるトリッキーな動きで、瞬く間に白の魔獣に飛びかかっていき、


 ガオンッ!

 虎の咆哮。

 衝撃で弾け跳ぶ魔導騎士。その身体はバラバラの肉片となって飛び散り、見る影もない。


 ……いやぁ。

 魔導騎士って、強かったんですよ?

 その反応を上回る速度で、装備ごと粉砕する破壊力、しかも遠距離に届く攻撃なんて、洒落になりませんよ。

 しかも、向こうへと一直線で壁に大穴が空いてます。なかなか減衰しないみたいですね。

 流石です。これは、これ以上の戦いは避けたいところですが……


「えと、邪魔が入っちゃいましたけれど、どうか私の話を……」

 もう一度声をかけてみると。

 気付けば真正面から相対する私と、殺気を放つ獣の顔。

 あ、これダメなヤツかも、っ!


 そしていつのまにか開いていた口。

 これはさっきの……危ない!

 思った瞬間、視界が閉ざされて。

 獣の咆哮が響いて気がつけば、目の前には盾のように宙に並んだ宝具。


 クゥゥゥイィン……

 咆哮を弾いた宝具の奏でる余韻が、どことなく荘厳に、あたりに響く。

「素晴らしい『宝具』ですね。

 あの獣の叫びを、十分受け止めました」

『ヤキトリ』の賞賛が、脳裏から聞こえる。

「でも。

 さっきの魔導騎士さんのせいで、どうやらあの子はおカンムリのようですよ」

「なんとか、おちついて、もらいましょう!」


 私は、この恐ろしい力を持つ魔獣と、なんとか戦わずに済むよう必死で頭を巡らせた。

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