最終章 たくさん笑ったな。多くの笑いと感動をありがとう
オイラは豆柴やった。
富士山の見えるところで生まれて、
友ちゃんと出会った。
あの人とも出会った。
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いろんな道を歩いた。
いろんな匂いを嗅いだ。
いろんな人に撫でてもろた。
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夢見ヶ崎も行った。
三ツ池も行った。
代々木も行った。
東扇島も行った。
新横浜も行った。
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車に乗るんも好きやった。
窓から入ってくる風の匂いが好きやった。
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毎日の散歩も好きやった。
家を出て、
いつもの道を歩いて、
うんちして帰る。
それだけで十分やった。
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しんどくなってからも、
友ちゃんがおった。
あの人もおった。
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痛い日もあった。
だるい日もあった。
気持ち悪い日もあった。
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でも、
撫でてもらうんは気持ちよかった。
抱っこしてもらうんも安心した。
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せやから、
オイラは幸せやった。
ほんまやで。
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今、
オイラは虹の麓におる。
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足はちゃんと動く。
走ろうと思えば走れる。
息も苦しくない。
痛いとこもない。
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最初は友ちゃんを呼んだ。
あの人も呼んだ。
でも聞こえへんみたいや。
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せやけど、
たまに分かる。
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友ちゃんがオイラを思い出しとる時。
あの人が写真を見とる時。
名前を呼んどる時。
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風に乗って、
なんとなく伝わってくる。
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そのたびに、
オイラは尻尾を振っとる。
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ここは不思議な場所や。
遠くを見ると、
昔いた場所が見える。
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富士山の見えるところ。
川崎のいつもの散歩道。
尼崎の道。
名古屋の道。
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懐かしい匂いも風に混じっとる。
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それからな、
ここには知っとる顔もおる。
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昔、公園で会ったやつ。
散歩でよく会ったやつ。
ドッグランで走ったやつ。
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それに、
ハルもおった。
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友ちゃんの実家におったハルや。
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久しぶりに顔を見た。
近づいて、
お互いの匂いを嗅いだ。
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「ああ、ハルやな」
そんな感じやった。
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言葉はいらんかった。
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それから一緒に歩いた。
のんびり歩いた。
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昔のことを話したわけやない。
犬やからな。
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でも、
なんとなく懐かしかった。
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走ったり、
昼寝したり、
匂いを嗅いだり。
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みんな楽しそうや。
オイラも楽しい。
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でも、
時々空を見上げる。
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友ちゃん元気かな。
あの人元気かな。
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そう思う。
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ここは急がんでええ場所みたいや。
時計もない。
病院もない。
苦いもんもない。
痛いんもない。
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せやから、
慌てんことにした。
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友ちゃん。
あの人。
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オイラはここにおるで。
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ハルや昔馴染みの仲間と歩いたり、
風の匂いを嗅いだりしながら、
のんびり待っとる。
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二人が来るんは、
まだまだ先でええ。
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その間、
オイラは待っとるわ。
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いつもの散歩の時みたいにな。
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せやから、
泣かんでも大丈夫や。
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オイラは幸せやった。
ほんまに幸せやった。
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友ちゃん。
あの人。
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今までありがとうな。
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また会えたら、
一緒に歩こうな。
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今度は最初から最後まで走るから。
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リード、
忘れんなよ。
たぶん付けさせたるわ。
完




