出会いは神頼み
あ、ここや。
オモジイには半日休みをもらった。
深呼吸して......よし。
カフェ「たちばな」のドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
声が揃った。
……え、なにこれ。
並んで立ってる三人の女の子は顔、そっくり。
違うのは――髪飾りの色だけ。
赤、黄色、青。
ピコン。頭の上にまた表示
=宗像三女神=
赤で *タゴリン*
黄色で*タギッチ*
青で *イチキー*
何でひとまとめやねん。
……まあわかるけどな。
しかも三人とも、メイド服。
どうなん。メイド服の神様って、あり?
「お待ちしておりました。もうお越しですよ」
赤のタゴリンがにっこり笑って、ついたてを指さす。
その向こうで、椅子を引く音。
……おるな。
私は、そろっと回り込む。
そこにいたのは
――リザードマン。
緑色の鱗。
先の細い指、とがった爪。
その爪先で、赤い花をつまんでいる。
ゆら、ゆら、と尻尾が揺れていた。
うわー。でっかいトカゲやんかー。
「初めまして。僕、ラティスです。」
差し出す赤い花。
……声、かわいい。
牙、めっちゃ並んでるけど。
思わず受け取ってしまった。
「あ。ありがとうございます」
「カツミです」
いやそれより、いいのか?これ。
冷や汗出てきた。
「どうぞ」
椅子を勧められて、座る。
いやちょっと待って、やっぱりどうなん?
「カツミさん、何がお好きですか?」
え、何がって、トカゲは苦手やけど。
「コーヒーですか?紅茶ですか?
ここ、オレンジジュースも美味しいんですよ」
……てか。
トカゲって、どうやって飲むんやろ。
ちょっと見てみたい。
「じゃあ……オレンジジュースで」
「かしこまりました」
黄色のタギッチが、すっと下がる。
しばらくして戻ってきた。
グラスを置く。
ラティスが、細い爪でストローをつまんで――くわえた。
……飲んでる。飲んでるやん。
すげー……
その時。
ポケットから、ひょいっと白いのがテーブルに飛び乗った。
「……っ、グルル」
ああ、うちの子。
「可愛いですね」
ラティスが指を差し出す。
その瞬間――
ガブ。
「あっ、コラ!マシロ!」
「大丈夫ですよ」
ラティスは、ちょっと笑った。
「僕ね、虫も殺せないんですよ。マシロちゃん、びっくりしちゃったかな」
……いや、それはそれでどうなん。
「ダメよ、マシロ」
私は白いのを膝に戻して、
オレンジジュースを一口。
ワオ。生搾りやん。めっちゃ美味しい♪
膝のマシロがよだれ垂らして見つめてる。
はいはい、わかったから。ちょいまち。
グラスを下ろしてストローをくわえさせると、のどを鳴らして飲んでいる。
あー。待ては教えなあかんな。
ちょっと沈黙。
優しい目で見ているラティス。
多分あれ、笑顔やろなぁ。分かりにくいけど。
……なんか聞いたほうがええかな。
「あの、お仕事は?」
「はい。僕、川の見回りとか、補修とか」
え?リザードマンやろ。武闘派ちゃうん?
「川の近くの公園の管理もやってます。花壇の手入れとかですね。そのお花もそこから持ってきました。」
テーブルの上に置いた花を見つめる。
「僕、ダメなんです。荒っぽいこと」
あちゃー。
優しさ全振りリザードマン。レアやけど、たぶん。
どう反応すりゃいいの。
「......」
「こちらに来たばかりだとお聞きしています」
「はい。昨日」
「それはお疲れでしょう」
「いや、まぁ」
言葉が続かない。気まずいなぁ。
「今日はこのへんにしましょう」
「はぁ」
「また川の方にいらしてください。ご案内しますから」
「あ、ありがとうございます」
「では、ごゆっくりなさってくださいね」
ラティスは席を立つと
「これは僕が」
と、伝票を持ってにっこり。
「あ、すみません」
手を振って出ていった。
残された私。
マシロに小声で話しかける。
「どうなん、リザードマンやで。アップで見ちゃった」
「きゅっ」
そこに青のイチキーが、グラスを下げにやってきた。
「ゆっくりしていってくださいね。あ、うち、オレンジケーキおいしいんですよ。いかがですか?」
マシロと目が合う。
「じゃあ2つお願いします」
カフェを出て、ギルドへ向かった。
ギルドに入るとクニオが飛び出してきた。
「あ、カツミさんー。どうでした?」
「どうもこうも......」
「あ、こっちこっち」
奥へ連れて行かれた。
「それでー。優しかったでしょ」
うん。確かにね。
「彼、優しさ偏差値バグってます」
うん。そうかもね。
「いかがでした?」
「いや。......なんでリザードマンなのよ!」
おっと、つい声がでかくなってしまった。
「トカゲは無理です。生理的に」
「えー。そうなんですかぁ、いい子なんですがね」
「はい、それはもうとてもいい方でした。でも」
「でも?」
「だからー。トカゲあかんって言ってんのよ!」
何度も言わすな。
「それは失礼しました。わかりました」
ほんまかい。
「ではー。次のご要望は?」
いや、次って。
「もうちょっと頼れる人が......」
しもた。また反射的に答えちゃった。
「頼れる方ですね。お任せください。安心して待っててね。じゃあ」
スタスタ奥に行ってしまったクニオ。
呆然と見送る私。
「大丈夫かなぁ?」
ポケットでマシロが
「きゅうん」
首を傾げた。
カウンターに戻ると、
「ごめんなさいね、ダメでしたか」と、スセリ。
「いやー。まぁ。」
「やっぱり初お見合いがリザードマンってね。ないですよね。」
「そう、ですよね。」
「すみませんね、ゴタゴタしてたもので、チェックできてなくって」
あ。やっぱりゴタゴタしたんや(笑)
「次からは私もチェックしますから。安心してください」
ほんまかいな。
「また連絡します。まずはこの世界に慣れていただかないとね」
「はい、そうします」
「ゆっくり街でもご覧になってください。ご連絡はしばらく先になると思いますから」
「わかりました。ありがとうございます」
スセリさんしっかりしてそうやけど......あいつがなぁ。
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=宗像三女神=
*多紀理毘売命
*市寸島比売命
*多岐都比売命
海と航海を司る三柱の女神。
それぞれに役割を持ち、道行く者を守り導く存在。




