それでも拾う神あり
町をブラブラ見ながら、ギルドへ。
ドアを開けるとクニオが飛び出してきた。
「あ、カツミちゃん、待ってたよ。ちょっとこっちに来て」
奥のカウンターでスセリが頷く。
カウンターの横をすり抜けて、奥の部屋に通された。
「昨日はごめんね、ちゃんと説明出来なくて」
おいおい、あんた、デートやったんだろが。
「マッチングの方は、今進めてるから、もうしばらく待ってもらうとしてー」
「はい」
「何、気落ちしてるの?
君ね、こっちに来てよかったと思うよ」
「どういうことですか?」
「実はね、あの男。君が結婚式挙げる予定だった男だけど」
あー。優しくて、経済力もあって、すごく条件良かったのに。悔しい。
「あいつ、妻帯者だったよ」
「え!」
「うん。奥さんと子どもがいた」
「本当ですか!」
「僕、嘘はつかないよ。気になったから確認してきた。どうやら、君以外にも騙された子がいる」
「そんな......」
「だから、ちょっとお仕置きしといた」
お仕置き?
「今頃、彼の会社、えらいことになってる。潰れるのも時間の問題だし、奥さんにもバラしておいたから、家庭内もね」
うわー。容赦ない。
「僕はね、ああいうの許せないんだ。ちょっとスッキリした?」
「はい。まぁ。」
いや、あんた自身はどうなん?
「僕は神だからいいんだよ。神は一夫多妻だよ」
いや、そうかもしれんけど。
「だからカツミちゃん。ここで婚活しなさい。
僕たちがちゃんとチェックしてるから、もうそんなことでだまされることはない」
「はい......でも私もう35だし......」
「大丈夫。ここは異世界。向こうの常識なんて関係ないから」
「はぁ」
「ね、任しといて」
そうか、嫁おったんや、あいつ。
マジで悔しい。
けど、忘れよう。
ポケットでマシロが見つめてる。
「うん。大丈夫だよ」
そう。ここは異世界や。一からやり直しや。
ギルドを出た。
隣の雑貨屋、やっぱりちょっと気になる。
覗いてみると、おじいさんに手招きされた。
ピコン。
*オモジイ*(大物主命)
うわっ。また神様。
なんか神確率高すぎちゃうか。
「おじょうさん。コレコレ」
側に行くと、じっと見つめられた。
「そうか。来たとこなんじゃな」
はい。ん?なんで分かる?
「はっはっ。神じゃからな。」
「にしてもー、あんたええもん持っとるな。」
は?
「我慢耐性 10。生活力 8。よう頑張って来たんやな」
「なんですか、それ」
「見えるんよ、ワシらには。ステータスがな」
「そこでじゃな、これ、どうじゃ」
指さす先には貼り紙が。
=アルバイト募集=
「あんた、わからんことばっかりで、不安じゃろ。ワシがぼちぼち教えてやる。どうや。」
急にそう言われても。
いや待て、もらったお金、いつまでもあるわけやないし。
マシロはよく食うし。
確かにこの世界、わからんことだらけやし。
仕事ある方がええ。
で、いろいろ教えてもらえるならもっとええ。
「わかりました。お願いします」
「うむ。じゃぁな、今日はええから、また明日の朝おいで」
宿に帰るとテラが出てきた。
「おかえりなさい」
「ただいま帰りました」
「疲れたんちゃう?お風呂入ったら?」
「ありがとうございます」
「上がったらご飯やから」
「はい。わかりました」
マシロとお湯に浸かる。
ヒノキ風呂。いい香りや。
癒されるなぁー。
「着替え、置いとくね。まだ買ってないんでしょ」
とテラの声。
ほんまや、何もないんやった。
「あ。ありがとうございます」
明日買いに行こう。
それにしてもまるで
「お母ちゃんみたいやな」
マシロが泳いでる。
「あんた、器用やな」
「きゅん」
お風呂から上がると食堂へ。
糊の効いた浴衣が気持ちいい。
テーブルにつくと、料理が運ばれてきた。
ピコン♪
*ケツメ*(大宜都比売命)
若い女の子だ。髪を結い上げて、割烹着姿がかわいい。
「料理長のケツメです。お嫌いなものはございませんか?」
「あ、何でも食べます」
「今日は唐揚げ定食です。どうぞ」
目の前に置かれた盆には、
大ぶりな鶏の唐揚げと刻みキャベツ。
湯気を上げるご飯と味噌汁。
ほうれん草のおひたし、冷奴に沢庵。
うわー。美味しそう♪
グゥー。お腹がなった。
そうや、お昼食べてなかった。
「いただきます」
唐揚げをがぶり。
うっほー。ジューシー♪
あ、マシロのよだれ。
はいはいどうぞ。
唐揚げを持たすと、両手で持ってかぶりついた。
「あらあら、おかわりできますからね」
と、テラ。
それにしても、ほぼ向こうと変わらん食事やけど。
市場に売ってたのは、知らんもんばっかりやった気がする。
「そこは、全部ケツメがね」
は?料理長よね。
「まあ気にせんと、冷めんうちに食べてね」
いや、気になるけど。
あ、マシロ2つ目に手を出してる。
はよ食べな、なくなるー。
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=大物主神=
高天原の神々に連なる、創造と知恵の神。
多くのものを生み出し、世の理を形にしてきた存在。
=大宜都比売命=
食物を司る女神。
その身をもって穀物や食べ物を生み出した、命を育む存在。




