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婚活とりあえず神まかせ



♥婚活ギルド♥

デカデカとしたしめ縄をくぐると、いかにも役所っぽいカウンター。

そこにはスセリという女神がいた。


なるほど、ここで相手探せってか。

「初めての方ですね」

「はい」

思わず、素直に答えてしもた。

お姉さんは、小さくうなずく。

「通行証を」

「あ、これ」

ポケットから取り出す。

お姉さんはそれを受け取って、

一瞬だけ目を細めた。

「……クニオから、ですね」

ちょっとだけ圧を感じる。

「......はぁ」

「伺っております。ご安心ください。さ、こちらへどうぞ」

手で、カウンター前の椅子を示す。

「まずは登録からになります」

スセリは、慣れた手つきで紙を取り出す。

「ご希望条件なども、後ほど」

スセリヒメはそう言って、

紙をすっと差し出した。

「まずは、基本登録から」

ペンを渡される。

なんかもう、完全に役所や。

「ここに通行証をかざしていただきますとー」

おぉっ。

紙に書き写された。


*今野 香津美

*35歳

*人族

*無職


「間違いないか確認して、こちらにサインを」


「すごいですね」

「まぁ......神ですから」

「さっき会ったばっかりなのに、ちゃんと連絡してくれてたんだー。」

「神同士は、思念伝達ができますので」

「あー、それで門番さんも」

「ええ、そうです」

「すごいなぁ」

「神ですから」


「では、登録は以上になります」

スセリが、紙をすっと引き取る。

「今回は、登録料は免除させていただきます。」

「あ。ありがとうございます」

「マッチング手数料も、初回は免除させていただきますね。」

「あ。すみません」

「いえいえ、こちらの手違いで、ご迷惑をおかけしていますので」

うんまぁ、そうだよね。

「えっと。それでー」

ちょっと言いにくい。

「マッチングとかは?」

スセリは、ほんの一瞬だけ目を細めた。

「そちらは、クニオからご連絡が入るかと」

(……え。ほんまに?大丈夫なんか?)

ほんの一拍。

「お相手が決まれば、場所と時間をお知らせしますので」

「あのー。お相手って」

「はい、それはこちらで。ご要望を最大限加味してお選びいたしますので、ご安心ください」

「え?おまかせなんですか?どんな人か分からないんですか?」

「はい。お知らせはしません。そこは〝神のみぞ知る〟ということになっております」

えぇー。そんなー。


「あの」

は?

「今、クニオと思念が繋がらなくて、まだ確認は取れていませんが、多分大丈夫ですから」

いや、多分って。

「それで、あの人......どこへ行ったかご存知ありません?」

あ、そう言うとーー

「きれいな人と一緒に......」

ーーやっぱり。それで切ったのね

低い声、スセリの目が一瞬光った。

うわっ。こわー。

「あ、大丈夫ですから。ご心配いりません」

いや、なんか別の心配が。

知らんけど。


もう突っ込む元気もない。

スセリは、カウンターの下から小さな袋を取り出した。

「こちらを」

受け取ると、革の巾着の中でコインが、じゃらっと鳴った。

「当座の生活費になります」

「……くれるん?」

「お詫び、とのことです」

わーい。なんぼ入っとるんやろ。

「宿は、どうされますか」

「あー……」

そら、いるわな。

「ご紹介できますが」

「お願いします」



ギルドを出て、少し歩く。

さっきの大通りから、

一本奥に入った静かな通り。

やがて、一軒の建物の前で立ち止まる。

木造の、小さな旅館。

入口にはやっぱり、しめ縄。

ひょっとしてここも……

ガラッと戸を開ける。

「ごめんくださーい」

奥から、足音。

出てきたのは――

「はいはーい」

普通の、でもなんだか神々しいおばちゃん。

ピコン、と光が浮かぶ。

*テラ*(天照大神)

「……は?」

おばちゃん――いや神様は、

にこっと笑った。

「いらっしゃい」

「泊まり?」

「……はい」

いや、めっちゃ大物なんですけど。

「どうぞー。こちらへ」

奥へ手招きされる。

「スセリちゃんとこから?」

「はい」

「1泊2食で25エニー、長期割引もあるからね」

高いんか安いんか、わからんけど。

「ご飯つけるよね」

「……お願いします」

なんやろ、この安心感。

「ほな、こっち」

部屋へ案内される。

畳、ちゃぶ台に布団だ。

「……和やな」

思わずつぶやく。

「落ち着くでしょ?」

「はい」

「ほな、ごゆっくり」

テラは出ていった。


畳にごろんと寝転び、天井を見上げる。

「とんでもないとこ来たな」

35歳、やっと結婚にこぎつけたと思ったのに。

気づいたら、異世界で。

婚活登録して、

今、神様の宿に泊まってる。

マシロが胸の上で小首をかしげる。

あぁ......だけど......

あかん。涙でてきた。

マシロが、ぴたっとくっついてくる。

あったかい。

それだけで、ちょっとだけ、救われる。



翌朝、朝ごはんを食べていると、

「カツミちゃん、クニオがね、ギルドに来てほしいって。

あぁ、急がなくていいから、ゆっくりご飯食べてね」


何かな?

マッチングかな?

箸を持ち直すと、

あれ?卵焼き消えた?

横でかぶりつくマシロ

両手で持ってるけど、でかすぎるんちゃう?

必死すぎて笑える。

「ええよ。いっぱいお食べ。」

「きゅう」

こらこら、こぼすな。



ノロノロと身支度していたら、もう日が高くなっていた。

マシロをポケットに入れて、宿を出た。

ブラブラと町を見ながら歩く。

昨日はうつむいて歩いてた。何も見えていなかったけど、案外にぎやかな町だ

マシロはポケットで眠っている。

アクセサリーの屋台には、ブローチと一緒に勾玉のペンダント。

服屋にはドレスが飾ってある。

これはー鍛冶屋?あ。ドワーフだ。

いい匂いの屋台、獣人だ。

でも、こんな骨付き肉、見たことない。何肉なんやろ。

野菜も果物も知らないものばかり。

あーやっぱり異世界やなぁ。

ギルドの隣に雑貨屋があった。

何か怪しげや。ここは早足や。




******



=天照大御神=

高天原を治める太陽の女神。

あまねく光で世界を照らし、秩序と繁栄をもたらす。




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