導きは無愛想
トコトコと、馬は少し早足で歩く。
おじさんの肩に黒い鳥が止まってる。
じーっと見てると、
ピコン♪
*カースケ*(八咫烏)
ありゃ。神じゃん。
ほんまや、3本足や。
にしてもカースケって。
誰がつけたんやろ。
なんか、ミニ馬車より乗り心地がいいなぁ。
それにこの馬車。普通の馬車とちょっと違う。
黒い幌が日差しを遮ってる。普通、白だよなー。
荷台と幌の間が空けてあって外が見える。
御者台の後ろには大きなクッションがあって、そこに座っているのだが、何より振動が少ないのだ。
大通りは石畳だが、他は舗装のない道。大体お尻が痛くなるんだけど。
「マシロ。楽しかったね」
小さな声で
「でもやっぱりアレ、無愛想だよね」
「きゅん」
結局、おじさんとは一言も交わさずに、宿に着いた。
「ありがとうございました」
頭を下げると
「ん。」
そう言うとおじさんは、でっかい米袋をひょいと担いで、裏口に入っていった。
玄関から入ると、テラがいた。
「ただいまー」
「おかえりなさい。あら、楽しそうね」
「ウカミー農園、行ってきました」
「まぁ、よかったわね。気持ちのいいところでしょう」
「はい。命の洗濯ですねー。
あと、あのおにぎりは反則です。美味しすぎます」
「フフ。そうよね。
あーそれで送ってもらったのね」
「あ、はい。おじさんに」
「よかったわね。彼もね、あなたと一緒よ」
「え?」
「ずいぶん前に来たんだけど、今はフカミーの近くに住んでる。
苦労してたけど、やっと落ち着いてきたみたいね」
「苦労ですか」
「ほら、彼、無愛想だったでしょ。
だから馴染めなくてね。いい人なのよ、本当は」
「へー」
「まぁ、カツミちゃんみたいに、すぐ馴染んじゃう人も珍しいわよ。フフフ」
そっかぁ。あの人もかぁ。
「彼も、来たときはうちでお世話したのよ」
私だけじゃない。
ちょっとうれしい。
次のお休み、またケツメとおにぎりを握った。
露店の獣肉も、焼きたてのパンも美味しいけれど、やっぱりこれよね。
ーーでもちょっと、アレ。食べたい。
ケツメの料理はいわゆるおふくろの味だ。安心感のある和食が中心で、とても美味しい。
一方この世界の料理は基本焼くか煮る、味は塩。ハーブやスパイスもあるにはあるが、使い方は単純だ。
そんなだから、オモジイの神印のタレがウケるのだが、オモジイは、他に作る気はない。
必要以上に世界を壊してはいかんと言うのだ。
なのでーー
ちょっと足りないのだ。
刺激が。
休み明けに店に行くと、オモジイがまたサッと隠した。
「出して」
ブツブツ言いながら開いた手にはーー青い消しゴム。
「こ、これはな10秒、10秒じゃ。記憶が消せる」
「事故を防ぐ方法は?」
「そ、それはまだ......」
「没収」
「そんなぁー」
「事故防止装置つけない限り、ダメ」
「......」
哀れオモジイ、また没収。
「ねぇオモジイ。これ売って」
「ええけど。そんなもんなににするんじゃ」
「ちょっとね」
ぱっと見はただの丸い板だ。でもこれで十分。
それからー。
「オモジイちょっと出ていい?」
「ええよ」
鍛冶屋だ。ドワーフの。
あ、ガルドいた。
「おぉ嬢ちゃん、今日はどうした?ワシに会いに来たんか?ガッハッハ」
なんでやねん。
「これっくらいのナイフが欲しいんだけど」
手のひらを広げて見せる。
「刃がそれくらいか。うちのはどれもデカいな。
嬢ちゃんが使うのか?」
「うん、お肉切るんよ」
「作っておいてやるよ。3日もあればできるわい」
「じゃあお願いするね」
よしっ!
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=八咫烏=
三本足の霊鳥。
導きの象徴として、正しい道へと人を導く存在。




