神の女子会鉄板ネタ
最近、宿の私の部屋での女子会にハマっている。
仕事が休みの日は、誰かしら女神がやってくるのだ。
今日は、三女神の真ん中、黄色のタギッチがオレンジケーキを持って現れた。
ケツメが紅茶を持って来て加わる。
「ほんっと、モーリーのオレンジケーキは絶品♪」
「私も大好きです。今日のお茶もモーリー様のオレンジジャムを、少し入れてあるんです。いい香りですよ」
「あ、それいいな。店でも出してみようかな」
「どう?お店は忙しい?」
「まぁボチボチですね。
ギルドからのお客様もありますしね。そう言うと......」
ここだけの話......で始まるタギッチのお見合い裏話は、女子会鉄板ネタである。
バリバリ冒険者のお姉さんとウサギ獣人の男の子のお見合いの時は、どこでそうなったのか、帰る時にはウサギがお姉さんを引き連れて帰ったらしい。
堂々としたウサギの顔と、しおらしくなったお姉さんの顔、どちらも真似て見せるタギッチに、私とケツメは手を叩いて大笑いだ。
「ねぇカツミの方は、その後どうなのよ」
私はスッカスカ宝石屋の話をちょっとオーバーに話す。
笑ったモン勝ちだ。
「あのさー。ケツメやタギッチはどうなの?彼氏とかさ」
「そうですねぇ......いてもいいけど、べつに、ねぇケツメ」
女神たちは、自分のことより、人の子ーここでは多種族ーの幸せを見るのが、何よりの楽しみなのだそうだ。
「まぁスセリ様見てると大変そうですし」
「そうそう、こないだもさー」
クニオが美人エルフに振られたらしい。
肩を落として歩くクニオが、可笑しかったと、目撃者タギッチの報告。
「カツミはさ、婚活しなくても、店で声かけられたりしない?」
「んー。それなー」
いや。あるのだ。確かに結構な頻度で。
大体この世界の男、軽い。
挨拶代わりに口説きよる。
たいがいは上手くあしらっている。
元々よく分からん世界、知らん相手に愛想振りまくのは要注意だし。
だがーーしつこいやつもいる。
「そういう時はどうしてるの?」
「まず、オモジイに相談して、追い払ってもらう」
「でもオモジイじゃ、効果薄そう」
「次にコガネやな。あの子ちょっとでかくなれるから」
「首上げペロペロ効果?」
「そうそう。んであかん時はー」
「あかん時は?」
「マシロ」
「マシロちゃんじゃ怖くないやん」
「マシロ怒るとさ、実力行使やから。
普段ふわっとしてるから油断してるやん。
確実に鼻先な、ガブッと」
「あー。それかー」
「ま、3段構えでんねん」
「でんねんって。カツミ、ちょいおばちゃん度、上がってんで」
「きゃー。やめてー」
んー。やっぱりオモジイに、虫除け作ってもらおうかな......
あかん。やめとこ。
ええ虫までいなくなるかもしれん。
女神たちが帰ると、なんだかふっと静かになった。
その夜、テラがいたので話しかけた。
気になっていたこと。
「テラさん、この宿、どうしてお客様がいないんですか?」
そう。誰一人ここで出会っていないのだ。
「この宿はね、カツミさんみたいに、向こうから来た人のために作ったの。
以前は、神たちもここにいたのよ。
今は、みんなそれぞれに自分の居場所を作ったからね」
「神様以外も?」
「そうよ。この世界に来た人が、この世界で暮らしていけるように手助けする。そのための宿なの」
「じゃぁ、みんな......」
「みんないつかは出ていくわ。
仕事見つけて、家を探して。
ギルドで結婚した子もいたわよ。冒険者も職人もいる。
みんなこの町に溶け込んで暮らしてる」
「じゃぁ私も......」
「カツミちゃん、急がなくていいから。
ゆっくり自分の道をつくりなさい。
わかった?」
「はい。ありがとうございます
」
そうかー。
やっぱり今のままじゃあかんよな。
配達の途中でバッタリと、クニオに出会った。
「あ。カツミちゃん、久し振り。
隣なのにねー」
「別に用事ないもん」
「つれないなぁー。
ねえねえ、今度こそ、頑張るからさ。
どんな人がいい?」
「いやもう......」
「ダメだよ、諦めちゃ」
「でもー」
「ん?」
「真面目で」
「ん?」
「落ち着いた」
「うん。」
「.......」
「わかったー。待っててねー」
おいおい。
わかってないと思う。
私があなたを避けてるの。




