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神だってそっぽ向く


地図を見ながら歩く。

んーと。ここか?

なんも看板出てないなぁ。

改装中みたいやけど。入ってみるか。

ちょっと重いドアを開けて、中を覗く。

「あのー。ごめんくださいー」


わぁ、なんかキラキラ。

ソファーもテーブルもどっしりしてて豪華や。

ショーケースあるな、なんか入ってるみたいやけど......

「いらっしゃいませ」

中から現れたのは、恰幅のいい紳士。

「お待ちしておりました。どうぞ」

ソファーを勧められた。


仕立てのいい服、金の刺繍が眩しい。指には宝石のついた指輪。物腰も柔らかく......

あれ?あのペンダントはもしや。

「セリウスと申します」

差し出された金の名刺。

「カツミです。よろしくお願いします」

宝石商?

「早速ですが

ーーカツミさんは、どちらかでお勤めですか?」

「はい、雑貨屋で」

「ほう。それでは接客などお手の物ですね」

「はい、まぁそうですね」

「帳簿とかは?」

「えぇ、一応できますが」

何なん?

「いやーよかった」

パンと手を叩く。

は?

なんか変だぞ。

あ、違和感センサー、赤点滅してる。

「私、宝石商をしておりまして。まぁそちらは、貴族様にもご贔屓になっておりましてね。

店を任せられる方がよかったんです」

「え?宝石屋ですか?」

「いえいえ、宝石屋の方は私が。こちらの店をお任せしたいと」

「えーっとここは...」

「まだ開店準備中ですが、ハンバーガーショップになります。あ、ちょっと召し上がります?」

おいおい、ちょい待て。

まるで面接やんか。


セリウスは、ショーケースケースから取り出したものを、銀のトレーにのせて持ってきた。

「どうぞ、当店の自信作です」

いやこれって、ミニチュアバーガー?

「紅ボアのバーガー、ルビーソースでございます。最高級のレッドボアを使用しました」

え。美味しそうとは思えない。バーガーらしくないじゃん。こんなちっこいの。

マシロサイズ。いやマシロも首傾げてるやん。

仕方ないので一口かじる。

「いかがですか?超一流の材料を使いました」

いやいや、何よこの肉。ペラッペラやし。バーガーなんてドカンとしてなきゃ。

「上品でしょう。やはりボアが違いますしね」

いや上品とかいらんやろ。

てかこの世界の肉って、全部ジビエじゃん。最高級もへったくれもないぞ。

「これ、10エニで行けると思うんです」

「たかっ!」

「でも、それなりに調度品にもかかっていますしね。

店の品格から言っても、これくらいは頂かないと。

これでも高級志向のお客様にはお安いくらいでしょう」

ぼったくりかぁー。

普通のバーガー3エニや。3エニで満腹や。

マジありえへん。


「.......」

冷静に冷静に。

「あの。」

「はい?」

「セリウスさんは、ギルドでマッチングされたんですよね」

「はい、そうですよ」

「結婚相手をお探しになっているのでは?」

「ええ、そうですよ。

結婚すれば、お給料いりませんしね、効率いいと思いまして」

アカン。ムカついてきた。

「店の2階、住み込めるようにしていますしね。

あーもちろん、生活費はきちんとお渡ししますよ」

いや、そういう問題じゃない。

「いやー、最近流行ってますでしょ、バーガー屋。ちょっと本業の方で儲かったので、やってみようと思って。

カツミさんのような方に来て頂けると本当に助かります」


バタン!

思わずテーブルを両手で叩いた。

「おっさん、馬鹿にすんのもええ加減にし。

ちょっと金あるからって、いい気になるなよ。

大体そんなしょーもないもん売れるわけないし、人のやってることパクってる時点でアウトや。

そのペンダントかてパッチもんやろ。

見せかけだけで商売してたら痛い目見るで。

ほんまに時間の無駄やったわ。

ほな、さいなら」

出ていくカツミを

セリウスは口をポカンと開けたまま見送った。



カツミはそのまままっすぐギルドに向かった。

バタンと大きな音を立ててドアを開け、わざと足音をたててカウンターへ。

「あ、カツミさん......」

「あれはないで、スセリ」

「だめ......でした?」

「なんであんな奴とマッチングするの」

「すみません。実は、こちらも手数料をふっかけて、諦めさそうとしたんですが」

「ほんで私に?」

「まぁ、カツミさんなら何とかしていただけるかと」

「ほんまにもう.......スセリ、貸しやで」

「わかってます。今度何か、ごちそうしますから」

「ランチはいや。ディナーにして」

「はい。ふっかけた分、回します」

「こっちもぼったくりかいな」

「エヘヘ」



1ヶ月後ーー

勾玉ペンダントを検品しているオモジイ。

「あの宝石屋、潰れたらしいで」

「え?」

「やっぱり勾玉が割れてな、どうも貴族相手にぼったくってたらしいわ。あちこちから苦情が来て、その上バーガーもさっぱりで」

「ま、しょせんハリボテやったってこっちゃ」

「これ、値上げしたらアカンかな、本物やしのぉ」

「あきません」

「なんでじゃ」

「欲出したら割れるで」





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