終わらない着せ替え、あるいは完璧すぎる学生服
次にルミが出してきたのは、あざといピンクのキャミソールと、極端に丈の短いショートパンツだった。
「すごい……脚、信じられないくらい長いわ。可愛すぎるよ貴子ちゃん!」
ルミが目を輝かせてはしゃいでいる。
促されるまま姿見の前に立つと、そこには異次元のスタイルを持った美少女がいた。だが、布の面積があまりにも少ない。
「これ……水着ですか?」
「違うよー。去年買ったんだけど、やっぱり外には着て出られなくてさ」
「そりゃそうですよね」
こんなの着て外を歩いたら、別の意味で事件になる。
「じゃあ次、これね!」
息つく暇もなく渡されたのは、肩が大胆にカットされた変形オフショルサマーニットと、タイトなデニムのミニスカートだった。
「おお、かっこいい!」
ルミが感嘆の声を上げる。俺も姿見を見て、素直に感心した。
これは綺麗な「お姉さん系」だ。俺としても結構好きなファッションだ。(……俺の彼女なら最高だな。まあ、中身は俺なんだけど)
その後も、ルミの欲望の赴くままに次々と服を着替えさせられた。
そして最後。
ルミがクローゼットの奥から引っ張り出してきたのは、なんと学校の制服らしきものだった。
「……これ、ルミちゃんのですか?」
「うん、高校の時のやつ」
「私ばかり着せられてるの、ずるくないですか? ルミちゃんも着てみてくださいよ」
俺が少し意地悪く言うと、ルミは「えー」と渋った。だが、結局は俺の押しに負けて着替え始めた。
(……生着替え。眼福だ)
中身が健康な男子大学生である俺にとっては、最高のボーナスタイムだった。
しかし、着替え終わったルミを見て、俺は思わず吹き出しそうになった。
「……ちょっと、笑わないでよ!」
ルミの顔は美人でスタイルもいいのだが、胸がパツパツすぎてブラウスのボタンが弾けそうになっている。
純粋な女子高生というよりは、イメクラのコスプレ感が出てしまっているのだ。だが、それはそれである意味すごく萌える。
「だから着たくなかったの! ほら、次は貴子ちゃん着てみて!」
半ばヤケクソ気味に、ルミが俺に制服を押し付けてきた。
貴子の胸は、ルミに比べれば少し控えめに造ってある。
もちろん、触るなら大きい方がいいかもしれないと男の俺は思うが、造形師としては全体のバランスが崩れるのを嫌った結果だ。
(まあ、着てみるか……)
馬鹿なことを考えながら、俺はプリーツスカートに足を入れた。
ブラウスのボタンを留め、リボンを結ぶ。
「…………」
背後で、ルミが完全に無言になっていた。
「ルミちゃん?」
俺は首を傾げながら、姿見を見た。
――すげー美少女だ。
自分でも意識していなかったが、俺が「最高の造形」として組み上げたこの顔と体は、どうやら高校生くらいの年齢設定に仕上がっていたらしい。
ブレザーとチェックのスカートが、恐ろしいほど完璧に似合っていた。クラシック映画の美少女が、そのまま日本の学生服を着たような破壊力だ。
「貴子ちゃん……ホントは、高校生じゃないよね……?」
ルミが震える声で聞いてきた。
「違いますよ。ちゃんと成人してます」
俺が慌てて否定した、その時だった。
ふと時計を見ると、とんでもない時間になっていた。
「あっ、時間! バビロンに行かなくちゃ! ルミちゃん、さっきのサマーニットとタイトデニム出してください!」
出勤時間に遅刻してしまう。俺が急いで着替えようとすると、ルミが真顔で俺の手を掴んだ。
「えー! このまま学生服で行こうよ!」
「アホですか! 即クビになりますよ!」
俺は全力でルミの提案を却下した。
ドタバタと急いで服を整え、メイクを確認する。
二人の美女は、彼女たちの戦場――夜の街『バビロン』へと向かうのであった。




