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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第97話:花火大会鑑賞の準備。

五日目の夕食は、夏を感じる冷やし中華。

明日の花火大会に行けない凛ちゃんのために、朝陽くんが提案したのはお祭りに行き、屋台を回って料理を調達するという彼らしい案でした。

そして迎えた六日目。仕事に励む凛ちゃんの裏で、朝陽くんは「特等席」の準備に奔走します。

「……ん! 酸味が効いてて最高。生き返るー……」


五日目の夕食、食卓に並んだのは彩り豊かな冷やし中華。

ハム、キュウリ、錦糸卵、それに紅生姜。

凛はそれを幸せそうに頬張りながら、明日の話題を切り出した。


「ねえ、明日の花火大会。飲み物とお菓子は私が用意しようか?」

「いや、それは僕が買ってくるよ。ジュースに、虫除けスプレー、それから……」


僕は手元のメモを読み上げる。

サポーターとして、ベランダからの観覧環境を整えるのは義務だ。

けれど、凛は少しだけ肩を落とした。


「……いいなぁ。本当は屋台とかも行きたかったけど、明日は締め切り前の山場だし、人混みに行くと疲れちゃうもんね」


折角の夏祭りなのに、彼女は仕事に追われている。

そんな彼女のために僕ができることは…。


「……なら、せめて雰囲気だけでも。僕が夕方に屋台を回って、いくつか買ってこよう。焼きそばとか、たこ焼きとか。屋台の料理もたまにはいいだろ?」


「……え!? 本当に!? いいの……?」


パッと顔を輝かせる彼女。

……そんなに喜ばれると、また動悸が早くなる。

僕は平静を装って「役目だからな」と短く返した。


その後のお風呂とマッサージ。

驚いたことに、今日の凛は妙にお淑やかだった。

昨日の「またがりマッサージ」のような無茶はせず、黙って僕の手に身を委ねている。


(……今日は大人しいな)


ホッとした半面、拍子抜けした自分もいる。

どっちなんだ。

けれど、寝る間際に彼女が「……明日、楽しみにしてるね」と小さく呟いたのを聞いて、僕は少しだけ胸を撫で下ろした。


翌朝。六日目の太陽は、昨日よりも一層眩しかった。

僕は凛より一足早く起き、キッチンに立つ。


手早く朝食を作り、彼女を起こす。

彼女が仕事部屋にこもってからは、掃除機をかけ、彼女が煮詰まらないように定期的に飲み物を差し替える。

すべては今夜、彼女に最高のご褒美を楽しんでもらうため。


お昼時。僕は少し軽めのサンドイッチをテーブルに並べた。


「え、今日はパンなの?」

「ああ。夜は高カロリーな屋台飯が並ぶ予定だからな。今のうちに調整しておいた方が、胃もたれしないだろう?」

「……朝陽くん、わかってるね……」


呆れ半分、感心半分といった様子の凛。

僕は彼女の前にメモ帳を置いた。


「さて。これから屋台を回ってくるが、何かリクエストはあるか?」


「えーっとね! りんご飴は絶対! あとチョコバナナと……えへへ、たくさん頼んじゃっていい?」


「……任せておけ。」


夕方。

「じゃあ、行ってくる。……戸締まりはしっかりしておくんだぞ」

「はーい! 朝陽くん、頑張ってね!」


作業部屋のドアからひょこっと顔を出した彼女に送り出され、僕はアパートを出た。

一歩外へ出れば、遠くからお囃子の音が聞こえてくる。

湿り気を帯びた熱風。浴衣姿の若者たち。

かつての僕なら、絶対に近寄らなかった場所。


けれど今の僕の胸には、サポーターとしての義務感以上に、一人の男としての「願い」があった。


(……あいつが喜ぶ顔を、全部揃えて帰る)


人混みの熱気に足を踏み入れながら、僕は凛の「おねだりリスト」をきつく握りしめた。

第97話、ありがとうございました!

凛ちゃんのために屋台をハシゴする決意を固める朝陽くん。

「雰囲気だけでも」という優しさが、仕事中の凛ちゃんにとってどれだけの活力になることか……。

お昼をサンドイッチにして夜に備えるあたり、さすが栄養管理も完璧なサポーターです。


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