表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/220

第83話:見誤った時間と、開かないはずの扉。

第82話で起きた、同居生活最大級の「大事故」。

今回は時間を少しだけ巻き戻して、凛ちゃん視点であの瞬間に至るまでの軌跡を追いかけます。

朝陽くんがいない隙に、シャワーを浴びてリフレッシュしようとした彼女を襲った、あまりにも「うっかり」で「刺激的」な結末とは。

「……はぁ。外の空気、おいしい……」


窓から入り込んでくる風を浴びて、私はようやく火照った頬を両手で押さえた。

シーツに残る朝陽くんの匂いにあてられて、二度寝なんて到底無理だったけれど、外の空気を吸ったおかげで少しだけ冷静になれた気がする。


そろりとリビングに出てみると、そこにはもう、洗濯物を干していた彼の姿はなかった。

代わりに、ダイニングテーブルの上にぽつんと置かれた一枚のメモ。


『ドラッグストアへ行ってきます。すぐ戻ります。 朝陽』


「……相変わらず、マメだなぁ」


几帳面で、整った彼の字。それを見ただけで、また胸の奥が少しだけ騒がしくなる。

「すぐ戻る」って書いてあるけど、駅前のドラッグストアなら、往復だけでも数十分はかかるはずだ。


(……ねえ、今のうちにシャワー、浴びちゃおっかな)


さっきベッドの中でかいてしまった、なんだかよく分からない変な汗。

体がベタついて気持ち悪いし、シャワーで一度頭を冷やせば、午後の作業もはかどる気がした。


「よし、爆速で浴びる!」


私は自分に気合を入れると、バックからタオルと着替えを引っ張り出し、鼻歌まじりに脱衣所へと向かった。

脱衣所のドアの前。そこには、あの猫のプレートがかかっていた。


(あ、ひっくり返さなきゃ……)


そう思った瞬間、私の脳裏に「すぐ戻ります」という彼のメモがよぎった。


(……でも、朝陽くん、いないし。どうせ私一人なんだから、今はいいよね)


これだ。この「誰もいない」という慢心が、後にあんな地獄を招くなんて、この時の私は一ミリも疑っていなかった。

私はプレートを『白(空室)』のまま放置して、脱衣所の中へと足を踏み入れた。


鏡の前で、パジャマのTシャツに手をかける。

この三日間で、すっかり慣れてしまったこの家。

朝陽くんが守ってくれる、私の居場所。

だからこそ、私は完全に油断していた。


「……ん。ちょっと、髪が引っかかっちゃった」


Tシャツを頭の上まで脱ぎかけた、その時だった。

背後で、カチャリ、とドアノブが回る音がした。


(……え?)


朝陽くんは、まだ帰ってこないはず。

少なくとも、あと五分は――。


「…………っ!?」


勢いよく開いたドアの向こう。

そこには、袋を抱えて目を見開いた、朝陽くんが立っていた。

鏡越しに、バッチリと視線が合う。


「あ……」


私の腕は、脱ぎかけのシャツの袖に囚われたまま。

目の前には、朝陽くん。

鏡の中には、ブラジャー一枚になった、私の無防備すぎる上半身。


「…………ひゃ。……ひゃあああああああああっ!!!」


自分の口から出たとは思えない絶叫が、狭い脱衣所に木霊した。


私の叫び声に弾かれたように、朝陽くんの顔が瞬時に沸騰したかと思うほど真っ赤に染まる。


「うわぁぁぁぁっ!? ごめん! すまん! 悪かった!!」


彼は持っていた袋をぶちまけそうになりながら、凄まじい勢いでドアを閉めようとした。

けれど、完全に閉まる直前、彼はパニックで裏返った声を張り上げた。


「……っ、っていうか、プレート!! プレートは!? 白だっただろ!! なんで!? なんでひっくり返してないんだよ!!」


バァン!! と、壊れそうな勢いでドアが閉められる。

廊下からは、何かにぶつかる音と、「あ、足が……」という彼の呻き声、そしてドタドタとリビングへ逃げ去る足音が聞こえてきた。


私は脱ぎかけのシャツを頭から被ったまま、その場にへたり込んだ。

……プレート。


恥ずかしさと、情けなさで、私はしばらく脱衣所から一歩も動くことができなかった。

第83話、ありがとうございました!

朝陽くん、謝りながらも「ルールへのツッコミ」を忘れないあたりが、いかにも彼らしいです(笑)


続きが気になる!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや下の【☆☆☆☆☆】で応援をいただけますと嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ