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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第82話:換気の理由と、白いプレート。

瀬戸くんの提案で二度寝?を始めた凛ちゃんですが、やはり「彼の匂い」に包まれた部屋では落ち着きません。

気分転換に窓を開けた彼女の行動が、瀬戸くんの自己評価の低さと最悪の化学反応を起こしてしまいます。

良かれと思って書いた「置き手紙」と、信じ切っていた「プレートのルール」。

「……やっぱり、無理だよ」


シーツに顔を埋めたまま、私は小さく唸った。

朝陽くんが整えてくれた環境。新品のシーツ。それなのに、部屋のあちこちに残る「彼」の気配が、私の心拍数をちっとも下げてくれない。


少しだけ気分をリフレッシュさせようと、私はベッドから起き上がって窓を大きく開けた。

外の空気が流れ込んでくる。それだけで、少しだけ熱が引いていく気がした。


ふと横を見ると、アパートの隣り合ったベランダで洗濯物を干していた朝陽くんと目が合った。

「……凛? 寝てなかったのか」

「あ……うん。ちょっと、空気を入れ替えようかなって」


「そうか。……邪魔したな」

朝陽くんは短く答えて、またシャツを広げた。私は慌ててカーテンを閉め、部屋の空気が入れ替わるのをじっと待った。




(……そんなに、空気を入れ替えたかったのか)


僕は、干し終えたばかりの洗濯物を眺めながら、静かに焦りを感じていた。

今の凛は、締め切り前の繊細な時期だ。そんな彼女が、部屋に入ってすぐに窓を全開にした。

理由は一つしか思い当たらない。


(……もしかして、僕の部屋、臭うのかな)


一度気になり出すと、もう止まらない。

自分では気づかない、男の一人暮らし特有の匂い。

凜が二度寝もできないほど、自分の部屋は不快な空間だったのではないか。


「……悪いことをしたな。ごめんよ……。」


リビングや廊下の窓も静かに開け、風を通し始めた。

そして、彼女がもし起きてきても驚かないように、ダイニングテーブルの上に一枚のメモを残した。


『ドラッグストアへ行ってきます。すぐ戻ります。 朝陽』


目的地は、駅前のドラッグストア。無香料の強力な消臭剤と、清潔感のある除菌スプレー。サポーターとして、彼女の鼻に届く不快感を一刻も早く取り除かなければならない。


その帰り道。電信柱に貼られた、一枚のチラシが目に留まった。

『花火大会開催』


(……三日後か。確かこのアパートのベランダからは、かなり綺麗に見えるはずだ)

仕事が佳境を迎える頃だろう。消臭を徹底した綺麗な部屋で花火を見せてあげれば、少しは彼女の気分転換になるだろうか。

そんなことを考えながら、彼は家路を急いだ。


「……ただいま。よし、すぐ設置しよう」


外の熱気でうっすらと汗をかいていた。

置き手紙はそのままだった。凛はまだ部屋で休んでいるのだろう。

まずは自分の汗を流してから作業に入ろうと、彼は脱衣所へ向かう。


ドアの前で立ち止まり、念入りに「ルール」を確認した。

ドアノブの横にかかった猫のプレートは――。


『空室(白)』


「よし。いないな…。」


二人で決めたルールだ。凛もあれだけ念押ししたのだから、守っているはず。

何の疑いもなく、ドアノブを回した。


ガチャリ、とドアを開ける。

「…………っ!?」


時間が止まった。

そこには、今まさにTシャツを脱ぎかけていた凛がいた。

腕が袖に引っかかり、顔も半分ほど布に覆われた無防備な姿。


そして、その下は――。

清潔感のある、でもどこか大人びたデザインの白いブラが一枚。


「……あ」


朝陽くんの喉が、引き攣ったような音を立てた。

鏡越しに、目を見開いた凛の瞳と視線がぶつかる。


「……なんで」

プレートは確かに『白』だった。なのに、どうして彼女がここに。

あまりの光景に、買ってきたばかりの消臭剤の袋が指先から滑り落ち、床でカランと虚しい音を立てた。


「…………ひゃ。……ひゃああああああああっ!!!」


凛の絶叫が、狭い脱衣所に響き渡る。

三日目の午後。

瀬戸朝陽が必死に守ろうとした「境界線」は、あまりにも唐突に、無残な形で決壊した。

第82話、ありがとうございました!

朝陽くんの誠実な「置き手紙」と、凛ちゃんの「プレートの裏返し忘れ」。

不運な重なりが、同居生活最大のハプニングを招いてしまいました。

目のやり場に困る、というか見てしまった朝陽くん。


続きが気になる!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや下の【☆☆☆☆☆】で応援をいただけますと嬉しいです!

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