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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第74話:夕暮れのホームセンターと、二色の歯ブラシ

二人はホームセンターへ。

目的は、共同生活のルールを守るためのアイテムと、瀬戸くんの安眠を守る布団です。

カゴの中に並ぶ二色の歯ブラシに、瀬戸くんの心拍数は上がりっぱなし。

「生活を共有する」という実感が、夕焼けと共にじわじわと染み渡るお買い物編です!

しっかり変装し、夕暮れ時のホームセンター。

広い店内に流れるのんびりしたBGMとは裏腹に、僕の心臓はさっきから落ち着きがない。


大きなカートを押し、その横を少しソワソワした様子で歩く凛。

「……なんだか、不思議な感じ。朝陽くんとこうして日用品を選んでるのって」

「……ああ。でも、十日間を快適に、かつ安全に過ごすためには妥協できないからな」


僕は努めて冷静に答え、カートを日用品コーナーへと進めた。

周りの客からは、これから新生活を始めるカップルか新婚夫婦にでも見えているのだろうか。

そんな予感が頭をよぎるたび、僕は無意味に洗剤の成分表示を熟読してやり過ごした。


まず僕たちが向かったのは、ルール3の要、サインプレートのコーナーだ。

「あ、これ可愛い! 猫が『お風呂中』って看板持ってるやつ!」

凛が目を輝かせて手に取ったのは、パステルカラーの可愛らしいプレートだった。


「……凛、可愛いのは認めるが、 文字が小さくて見落とさないか不安かも。こっちの、赤と緑でハッキリ『使用中/空室』と書かれたスライド式の方が、間違いがなくてよくないか?」


「えぇー、それじゃ味気ないよぉ……。この猫ちゃん、朝陽くんが前に作ってくれたオムライスの猫に似てるよ?」

「…………っ」

そんなことを言われたら、拒否できるはずがない。


「……分かった。ただし、必ず目立つ位置にかけること。いい?」

「やった! ありがと、朝陽くん!」

凛の弾けるような笑顔に、僕は「サポーター」としての敗北と、一人の男としての完敗を認めるしかなかった。


続いて、おばあちゃんから厳命されていた寝具コーナーへ。

「これなんてどうかな。……あ、すごい! 手が沈み込む!」

凛が楽しそうに、展示品のマットレスを押してはしゃいでいる。


僕は、おばあちゃんの『貴方も倒れてはいけないわ』という言葉を思い出していた。

自分の体を労わることが、結果として凛を支えることに繋がる。僕は意を決して、店員さんに相談し、体圧分散に優れた敷布団を選んだ。


おばあちゃんの気遣いのおかげで、普段の僕なら到底手が出せないような安眠が約束された。これなら、リビングの床でも凛に心配をかけずに済むだろう。


「……そうだ。凛、ベッドのシーツも新調しよう」

「え? シーツ? ……あまり汚れてるようには見えなかったけど…。」

「いや、そういう問題じゃないんだ。いくら洗ってあるとはいえ、男の僕が使っていたシーツをそのまま使わせるわけにはいかない。……嫌だろ?」


僕は棚から、肌触りの良さそうな真っさらなシーツを手に取った。だが、凛はなぜか不満げに頬を膨らませる。

「……別に、いいのに。私はそのままでいいよ」

「良くない。僕が気になるんだ。……ほら、これなんてよさそう。凛の好きそうな色だぞ」

「いらない! ……その、朝陽くんの匂いが……ううん、なんでもない! とにかく、今のままでいいの!」

「匂い……? いや、だからこそ替えるんだ。気になって寝れない!」


「あ、ちょっと! 朝陽くん!」


抵抗する凛を押し切る形で、僕は新しいシーツを強引にカートへ放り込んだ。

彼女の顔がなぜか耳まで赤くなっているが、きっと店内の熱気のせいだろう。

男として、女の子を自分の使い古したシーツで寝かせるわけにはいかない。それだけは譲れない一線だった。


「あとは……生活必需品だな」

日用品の棚を回り、凛が忘れた品々をカゴに入れていく。


「あとは……歯ブラシだな。凛、こだわりはあるか?」

「う、ううん……。朝陽くんに任せるよ」

まだ少し納得いかなそうな顔をしながら、凛が僕の後をついてくる。


「じゃあ、この二本パックにしよう。ピンクとネイビーで分かれてるから、これなら間違えなくて済むだろ」

「……。……うん、そうだね。私はピンクがいい」

「じゃあ、僕は残りのネイビーだな。……よし、これで歯磨きセットもOKだ」


二種類の洗顔料、新しいバスタオル、凛のための洗顔ネット。


カゴの中で、彼女のために用意した新しい持ち物が重なり合っていく。

ただの「隣人」だった僕たちの境界線が、このカゴの中で物理的に混ざり合っていく光景に、僕は言いようのない高揚感と、一人の女の子を預かる責任感を同時に覚えていた。



「……重くない? 朝陽くん、私にも半分持たせて」

「いい。これくらい大丈夫だよ」


パンパンに膨らんだレジ袋と、肩に担いだ敷布団。

店を出ると、空には一番星が白く瞬き始めていた。

徒歩圏内にホームセンターがあってよかった。


「帰ったら、すぐ夕飯の準備だな」

「うん。……朝陽くん、今日から十日間、本当によろしくね」


凛が僕の顔を覗き込み、少し照れくさそうに、でも真っ直ぐに言った。

「……ああ。よろしく、凛」


手に持つ袋の中では、新しい二本の歯ブラシがカサリと音を立てた。

秘密の十日間。

僕たちの特別な夏休みが、今、静かに幕を開けた。

第74話、ありがとうございました!

ホームセンターでの買い物、なんとも言えない「特別感」がありましたね。

凛ちゃんの「猫プレート」へのこだわりと、それを結局許してしまう瀬戸くん。

そして、カゴの中に並ぶ二色の歯ブラシ。これこそが同居の象徴です!

新しい布団を敷き、猫のプレートをかけ、同じ屋根の下で過ごす初めての夜。

お風呂上がりの距離感に、二人の理性は保たれるのか!?


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