表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/220

第64話:プロの眼差しと、不慣れなモデル

ショッピングでのドキドキが残る中、物語は凛ちゃんの「本業」へ。

普段は朝陽くんに頼り切りの彼女ですが、ペンを持てば話は別。

どうしても描けない「男のライン」を前に、彼女が意を決して頼んだのは、一番身近な男子である朝陽くんでした。

「スマホのカメラ」越しに、自分の骨格や筋肉を隅々まで記録される気恥ずかしさと、真剣な彼女の美しさに圧倒される午前中をお届けします!

ショッピングモールから帰宅し、僕の部屋で晩御飯を食べていた時だった。

今日のメニューは、スタミナがつくようにと作った豚肉の生姜焼き。いつもなら「美味しい!」と勢いよく食べるはずの凛が、何度も僕の方をチラチラと見ていた。


「……どうした。言いたいことがあるなら言いな。ご飯、冷めるぞ」


僕が促すと、凛は意を決したように箸を置き、居住まいを正した。


「……朝陽くん。相談……というか、お願いがあるの」

「お願い?」

「次のイラストの仕事、男の人のポーズなんだけど……どうしても腕の筋肉の動きとか、服のシワが上手く描けなくて。……その、もし良かったら、朝陽くんにモデルをお願いしたいなって。スマホで何枚か資料写真も撮らせてほしいんだ」


凛は顔を少し赤くしながらも、その瞳はプロのそれだった。


「僕でいいのか? 他に適任がいそうなもんだけど」

「……朝陽くんがいいの。一番身近で、信頼できるし、背が高くてスタイル良いから。……ダメ、かな?」


上目遣いでそう言われて、断れるはずもなかった。

「……分かった。練習台くらいにはなるだろ」

「本当!? ありがとう! じゃあ明日、朝ごはん食べたらさっそくお願い!」


パッと顔を輝かせた彼女を見て、僕は少しだけ、安請け合いしすぎたかもしれないと後悔し始めていた。


翌朝。

いつものように僕の作った朝食を囲む二人。

メニューは焼き魚に納豆、それから味噌汁という簡素なものだが、今日に限ってはやけに静かだった。

凛はどこか集中しているような、それでいて少し緊張しているような面持ちで箸を動かしている。


「……気合はいってるな。」

「……絵描きにとって、実物を見るっていうのは、その人の骨格とかまで知るってことだからね」


凛が真剣なトーンで言い返す。

「骨格って……。そんな大げさな」

「大げさじゃないの! ……とにかく、今日は遠慮なく見せてもらうからね」


「……ああ。お手柔らかに」


朝食を終え、食器を片付ける。

普段の「サポーター」としての僕ではなく、今日は彼女の「素材」になる。

そう意識した途端、何だか僕の胸の奥も、少しだけ騒がしくなってきた。


「……お邪魔します」

初めて、凛の作業部屋の奥まで踏み入れた。

巨大な液タブが鎮座し、壁には自作のイラストや参考資料が所狭しと貼られている。ここが、プロ絵師「冬月凛」の職場だ。


「じゃあ、朝陽くん。そこに座って。……まず、Tシャツの袖をまくってくれる?」


凛は使い慣れたスマートフォンを構え、カメラアプリを起動した。

「……いくよ」


指示されるままにポーズをとる。

カシャッ、と軽いシャッター音が響くたびに、僕は自分の身体がデジタルデータとして彼女のフォルダに蓄積されていくのを感じて、妙に落ち着かない気分になった。


「……うん、いい感じ。あ、でも、肩から肘にかけてのラインがもう少し……。ちょっと失礼」


凛が椅子から立ち上がり、スマホを構えたまま僕の目の前までやってきた。

彼女の指先が、僕の二の腕に直接触れる。

「……っ」

少し冷たくて、でも細い指の感触。

凛は僕の反応など気にする様子もなく、画面越しと生身の視線の両方で、真剣に僕の筋肉の付き方を確認し始めた。


「……もう少し、こっちに捻って。……そう、そこ。そのまま動かないで」


至近距離。

彼女の瞳が、仕事としての真剣な光を湛えて、僕の鎖骨や腕のラインを舐めるように観察する。

普段のポンコツな凛はどこにもいない。

そこにあるのは、圧倒的な才能と執念を持った、一人の表現者の姿だった。


「……凛、近い」

「……仕事中。静かにして」


釘を刺すような低い声に、僕はそれ以上何も言えなくなった。

触れられる箇所の温度が上がっていく。

真剣な彼女の横顔があまりに綺麗で、僕はモデル失格だと思いながらも、小さく吐息を漏らすことしかできなかった。

第64話、ありがとうございました!

昨夜の晩御飯での何気ない相談から、一夜明けての真剣な撮影会。

凛ちゃんの「プロの顔」に、朝陽くんもタジタジです。

密着した状態でのポーズ指定……モデルを続ける朝陽くんの心臓、最後まで持つのでしょうか?


続きが気になる!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや下の【☆☆☆☆☆】で応援をいただけますと嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ