表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/226

第43話:お姫様抱っこと、眠れない夜

ソファで無防備に眠りに落ちてしまった凛ちゃん。起こそうとしても起きない彼女を前に、朝陽は究極の選択を迫られます。

「……おい、凛。本当に起きないのか?」


何度か肩を揺らしてみたが、凛は「むにゃ……」と小さく声を漏らすだけで、一向に起きる気配がない。

このままソファで寝かせるのは、さすがに体が痛むだろう。

かといって、隣の彼女の部屋まで運ぶのは……深夜にご近所さんに見られたら言い訳が立たないし、万が一段差や廊下で足を踏み外したら危ない。


(……消去法で、僕のベッド、か)


僕は大きく深呼吸をして、意を決した。

変なところに触れないよう、細心の注意を払いながら、彼女の膝裏と背中に腕を回す。


「……っ」


持ち上げた瞬間、鼻をくすぐったのは彼女のシャンプーの甘い香りだった。

思ったよりもずっと軽く、けれど腕の中に伝わる体温は驚くほど確かで。

心臓がうるさいくらいに鳴るのを無視して、僕は彼女を寝室へと運び、ゆっくりとシーツの上へ下ろした。


「仕事、お疲れ様。……おやすみ、凛」


布団をかけ、最後に一度だけ、頑張った彼女の頭をそっと撫でる。

それから僕は逃げるようにリビングへ戻り、硬いソファに身を投げ出した。


……眠れるはずがなかった。

隣の部屋には、僕のベッドで、僕の布団に包まれて、クラス一番の美少女が眠っているのだ。

結局、僕は一睡もできないまま、カーテンの隙間から差し込む朝日を迎えることになった。


「……飯、作るか」


重い体を引きずってキッチンへ向かう。

気を紛らわすために選んだメニューは、ホットサンドだ。

ハムとチーズ、それに少しのバジルを挟んで、プレス機にかける。

チーズがとろける香ばしい匂いが漂い始め、ようやく少しだけ冷静さを取り戻せた気がした。


だが、出来上がっても凛は起きてこない。

(……生きてるよな、あいつ)

少し不安になり、僕は恐る恐る寝室のドアを開けた。


「凛、朝だぞ。起きろ」


朝の光の中で、僕の枕に顔を埋めてスヤスヤと眠る凛。

そのあまりにも無防備な姿に、僕は溜息をついた。本当に、男として一ミリも警戒されていないらしい。……それはそれで、良かったのかもしれない。


肩をポンポンと叩くと、凛がようやく重い瞼を持ち上げた。

「……ん、……朝陽、くん?」


ぼんやりとした視線が僕を捉え、それからゆっくりと周囲を見渡し――数秒後、彼女の顔が爆速で真っ赤に染まった。


「え、えええ!? なんで私、ここに!?」


「ソファで何しても起きないから、運んだんだよ。……僕のベッドで悪いけど」


「……は、運んでくれたの?」


「ああ。そのまま寝かせるわけにいかないだろ」


凛は布団を握りしめ、上目遣いで僕を盗み見てくる。

「……どうやって、運んだのかな?」


「横抱き。……それ以外に方法、ないだろ」


「…………っ」


凛は絶叫に近い声を上げると、僕の布団を頭まで被り、芋虫のように丸まってしまった。

「恥ずかしい! もう無理、顔が見られない!」


「……それ僕の布団なんだけど。……いいから、冷めないうちに飯食うぞ」


それから凛は一度自分の部屋へ戻って歯を磨き、再び僕の部屋へやってきた。

食卓に並んだホットサンドを、二人で頬張る。


「……よく寝てたな。寝苦しくなかったか?」


「ううん。……すっごく、安心して寝られたよ」


凛は少し照れくさそうに、けれど満面の笑みでそう言った。

その「安心」という言葉。自分への信頼の証だと分かってはいても、あんなにドキドキしていた自分との温度差に、僕はつい彼女をじっと見つめてしまう。


「……なに? 私、また何か変なことした?」


「いや、……よっぽど疲れてたんだなと思ってさ」


僕がそう茶化すと、凛は「むぅ」と頬を膨らませた。

その仕草が、不覚にも、……いや、文句なしに可愛いと思ってしまった。


「さて、午前中仕事するね! またお昼ね、朝陽くん!」


元気を取り戻した凛が、合鍵を揺らして自分の部屋へと戻っていく。

静かになったリビングで、僕は冷めたコーヒーを飲み干した。

僕の夏休みは、想像以上に心臓が保ちそうにない。

第43話をお読みいただき、ありがとうございました!


自分のベッドを明け渡してソファで夜を明かした朝陽くん、本当にお疲れ様でした。凛ちゃんの「安心して寝られた」という言葉は、信頼の証でありながら、朝陽くんにとってはちょっとした試練ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ