表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/232

第42話:夏の残暑と、無防備な寝顔

合鍵という「新しい繋がり」を手に入れた二人。

夏休み初日の午前中を一緒に過ごし、午後はそれぞれ仕事と買い出しへ。

別々の時間を過ごすことで、逆に「隣に誰かがいること」の大きさを実感する二人。

「お昼は、トマトとツナの冷製パスタ。隠し味にレモンを絞ってあるから、さっぱり食べられるぞ」


「わあ……。夏バテしそうな日でも、朝陽くんのご飯ならいくらでも食べられちゃう」


お揃いのマグカップに冷たい麦茶を注ぎ、二人で並んでパスタを啜る。

食べ終えて一息つくと、凛が名残惜しそうに立ち上がった。


「じゃあ、私は自分の部屋に戻ってイラストの仕事進めるね。夕方までに一点、仕上げなきゃいけないから」

「ああ。僕は生活必需品と、切らしてた調味料を買い出しに行ってくるよ」


「……うん。じゃあ、また後で」


「また後で」という、ごく自然な約束。

けれど、彼女が自分の部屋へ戻り、僕が一人で玄関の鍵を閉めたとき、静まり返った部屋が妙に広く感じられた。


二時間後。

両手に重い買い物袋を提げて帰宅すると、玄関の鍵はすでに開いていた。

(……閉め忘れたか?)

一瞬焦ったが、リビングから聞こえてくるカチカチという液タブのペン音で、僕は合鍵の存在を思い出した。


「……凛? 自分の部屋でやってるんじゃなかったのか」


リビングのデスクには、僕の椅子に収まって集中してペンを走らせる凛の姿があった。

僕に気づくと、彼女は申し訳なさそうに、けれどどこかホッとしたような顔で僕を見上げた。


「……おかえり、朝陽くん。……自分の部屋だと、静かすぎて。全然集中できなくて……寂しかったんだもん」


そんな、迷子の小動物のような顔で言われるとは思わなかった。

「……そうか。それなら、いいけど」

言葉よりも先に、手が動いていた。

僕は無意識に、彼女の柔らかな髪に手を置き、ポンポンと軽く撫でてしまった。


「…………っ!」

「……あ。いや、ごめん。その……」


凛が目を丸くして固まる。僕も自分の行動に驚き、慌てて手を引っ込めた。

「……食材、冷蔵庫に入れてくる!」

赤くなった顔を隠すように、僕はキッチンへと逃げ込んだ。


夕食を終え、それぞれが自室でお風呂を済ませた後、凛が再び僕の部屋へやってきた。

寝る前のストレッチとマッサージ。これは、僕たちが「協力者」として決めた大切な日課だ。


「……ふぅ。体が軽くなった気がする。ありがと、朝陽くん」


「……熱いな。クーラー入れてても、風呂上がりはこたえる」


マッサージを終え、二人でソファの近くに座り込む。

ふと、火照った体に冷たいものが欲しくなった。


「……アイス、食べたくないか?」

「食べる! 私はバニラがいいな!」


「わかった。コンビニでパパッと買ってきてやるよ。……鍵、ちゃんとかけとけよ?」

「はーい。いってらっしゃい」


僕は財布とスマホを手に、夜の街へと駆け出した。


十分後。

袋の中でカサカサと鳴るアイスの感触を楽しみながら、僕は自分の部屋へ戻った。

ドアを開け、リビングへ向かう。


「買ってきたぞ。溶ける前に……」


声が、止まった。


リビングのソファ。

そこには、僕のTシャツを着た凛が、丸くなるようにして横たわっていた。

規則正しい、穏やかな寝息。

仕事で根を詰めていたのか、あるいは僕の部屋が彼女にとってそれほど安心できる場所なのか。

凛は完全に、深い眠りに落ちていた。


「……おい、凛。風邪引くぞ。起きろ」


肩を軽く揺らしてみるが、「うぅ……」と小さく声を漏らすだけで、彼女の瞼はピクリとも動かない。

それどころか、寝返りを打った拍子に、彼女の細い手が僕の手首をぎゅっと掴んだ。


(…………どうしよう、これ)


手元のアイスは、容赦なく溶け始めている。

けれど、それ以上に僕の理性が、彼女のあまりにも無防備な寝顔を前に、静かに悲鳴を上げていた。



第40話をお読みいただき、ありがとうございました!


「寂しかった」と正直に伝えてしまう凛ちゃんと、それに思わず手が動いてしまう朝陽くん。付き合っていないはずなのに、二人の空気はどんどん「特別な場所」へと変わっていますね。そしてラストの寝顔。果たして朝陽くんは、彼女を抱きかかえて隣の部屋へ運ぶのか、それとも……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ