表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/219

第39話:秘密の解禁、親友たちのニヤニヤ

「ただいま」と言わんばかりの自然さで、合鍵を使って現れた凛。そこには、怪我の手当てを受けていた大輝と紗紀(寺田さん)がいました。言い逃れ不能、絶体絶命のピンチ!

玄関先で、凛が持ったままのキーケースが、カチリと乾いた音を立てた。

静止する、四人の時間。

僕はあまりの衝撃に、「あ、連絡しておけばよかった」という後悔すら、脳の隅っこに追いやられていた。


だが、この沈黙を破ったのは、パニックになっていたはずの凛だった。

彼女はハッと我に返ると、ソファに座る寺田さんの、包帯に巻かれた足に視線を落とした。


「……寺田さん、だよね? 足、怪我したの? 大丈夫?」


その声には、学校での冷徹な響きは微塵もなかった。ただ純粋に、同級生を案じる優しさがこもっていた。

問いかけられた大輝と寺田さんも、ようやく金縛りが解けたように瞬きをする。


「え! あ……うん。ちょっと慣れてない靴履いちゃって、階段でやっちゃったんだ。でも、朝陽くんがすぐ処置してくれたから、もう大丈夫だよ! ありがと!」


「なら良かった。……無理しちゃダメだよ?」


凛がホッとしたように微笑む。その瞬間、部屋を支配していた刺すような緊張感が、嘘のように霧散していった。


「……冬月さん、だよね?」

寺田さんが、まじまじと凛の顔を見つめて呟いた。

「学校の時と印象が全然違う…。 なんか、すごく明るいというか、話しやすい……!」


「あはは……。学校だと、あまり人と話さないようにしてるからね。……こう見えて、人見知りだから…。」


凛は照れくさそうに頬を掻いた。


その告白を聞いて、大輝は驚いたように目を見開いたあと、どこか優しく、噛みしめるように苦笑した。


「人見知り……。そっか、そんな理由だったのか。……あはは、ごめん、笑うつもりはないんだけどさ。みんな勝手に『氷の令嬢』なんて呼んでたけど、実は必死に耐えてただけだったんだな。……なんか、意外だけど少し安心したよ」


「口調まで変わるなんて、相当だよね。……でも、朝陽には最初から『素』だったの?」


「……朝陽くんは、大丈夫なの」


凛がさらりと、迷いなく答えた。

(……心臓に悪いから、そういうのはもっと、心の準備がある時に言ってくれ)

僕は熱くなる顔を誤魔化すように、咳払いを一つした。


だが、大輝と寺田さんの目は誤魔化せなかった。

二人は顔を見合わせると、同時にニヤニヤと僕たちを覗き込んできた。


「「で、付き合ってるの?」」


「「違うよ!/違います!」」


一糸乱れぬ同時否定。

だが、顔を真っ赤にして僕の背後に隠れようとする凛の姿は、どう見ても「ただの友達」の範疇を超えている。

僕は覚悟を決めた。この二人なら、僕たちのこの奇妙な関係を、きっと理解してくれるはずだと思った。


「凛。……二人には、ちゃんと話そうか。この二人は、信用できる。」


「……うん。朝陽くんがそう言うなら、わかった」


そこから、僕たちは話した。


隣同士の部屋であること。

学校から帰ったら、廊下で凛が行き過ぎた不摂生で動けなくなっていたこと。

見かねて料理を作ってあげるようになり、今ではすっかり「餌付け」状態であること。


「冬月さんが、朝陽の飯に釣られたのか……」

「釣られたんじゃないもん。救われたの!」


さらに、凛がプロのイラストレーターとして活動していることも明かした。

(もちろん、世間を騒がせている超有名絵師だという詳細は、彼女のプライバシーのために伏せておいたが)。


最後に、名前で呼び合うようになった経緯まで話し終えると、大輝は深く、深く頷いた。


「なるほどな。……でも、朝陽が誰かのためにそこまで必死になる理由、なんとなく分かる気がするわ。お前、いい奴だもんな」


「二人とも、すごくいい雰囲気だよ。で、いつ付き合うの?」


「付き合いません!だいたい、凜は無防備過ぎて俺のことを男として見ていないぞ。」


言い終わると、凜のいる方向から視線を感じる。

振り返ると、ジト目をした凜がこちらを見ていた。


「複雑な気分…。」


一部始終見ていた大輝と寺田さんは「朝陽、そうゆうとこだぞ!」と、楽しそうに笑っていた。



一通り話し終えた後、僕は肩の力がふっと抜けるのを感じた。

大輝や寺田さんという「理解者」ができたことで、この秘密は、より確かな絆へと変わった気がする。


「……よかったね、朝陽くん」

「ああ。……でも、合鍵の件は、後でたっぷり大輝たちにイジられそうだけどな」


案の定、大輝は「合鍵なぁ、へぇー、合鍵かぁー」と、さっきからニヤニヤが止まらない様子だ。


不器用な僕たちの、特別な夏。

友人たちを巻き込んで、物語はさらに賑やかで、暖かい方向へと動き出していた。

第39話をお読みいただき、ありがとうございました!


一時はどうなることかと思いましたが、朝陽くんの誠実さと、大輝たちとの友情が実を結んだ回になりましたね。凛ちゃんが「朝陽くんは大丈夫なの」と無自覚?に爆弾を落とすシーンは、書いていてもニヤニヤが止まりませんでした! 秘密を共有したことで、朝陽くんも凛ちゃんも、少しだけ心が軽くなったようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ