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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第297話:相談と、ぽかぽか計画

 金曜日の放課後。

 帰りのホームルームが終わった直後の教室は、週末特有の少し浮ついた空気に包まれていた。

 俺はいつものように下駄箱で凛と待ち合わせをしているのだが、俺の方が先に着くため、まだ少し時間がある。

 鞄を手に取ったところで、帰り支度をしている大輝と寺田さんを呼び止めた。


 「悪い、ちょっとだけ時間いいか? 相談があるんだけど」

 「お、どうした?」

 「……凜へのクリスマスプレゼント悩んでるんだ。 二人はどうやってプレゼント決めてるんだ??」


 声を潜めてそう切り出すと、大輝はニヤリと口角を上げた。


 「なんだよ、お前らもついにそういう時期か。まあ俺たちレベルになると、お互い欲しいものを直接言い合ったりするけどな」

 「大輝のドヤ顔は無視していいよ。でも……そうだね、やっぱり普段から相手が何を欲しがってるか、リサーチしておくのが鉄則かな。気持ちが一番大事だけど」


 呆れたように大輝をあしらってから、寺田さんが真面目に答えてくれる。


 「リサーチ、か」

 「うん。そういえば、明日凛ちゃんと手袋買いに行くんでしょ? ラインでそんなこと言ってたよ」

 「ああ。本格的に寒くなる前にと思って」

 「だったら、その買い物の時に凛ちゃんがどんなものを見てるか、さりげなくチェックしてみたら? 一緒にいる時が一番リサーチしやすいし」


 なるほど。明日の買い出しの中でヒントを探る。確かにそれが一番確実だ。

 二人に礼を言い、俺は足早に下駄箱へと向かった。


 「お待たせ、朝陽くん」

 「いや、俺も今来たとこ」


 合流して、二人で並んで帰り道を歩く。

 夕暮れの空気は昨日よりもさらに冷たく、吐く息が白く染まっていた。

 凛は先日コンビニで買った間に合わせのニット手袋を両手にはめている。


 「いよいよ明日だね」

 凛が、自分の手元を見つめながら嬉しそうに口を開いた。


 「ああ。とりあえずこれで寒さは凌げてるみたいだけど、明日はちゃんと温かいの探そうな」

 「うん。これでも十分温かいんだけど……でもね」


 凛は少しだけ歩幅を小さくして、上目遣いで俺を見た。


 「どうせなら、明日は朝陽くんとお揃いの手袋がいいな……なんて」

 「……そうだな」


 照れくさそうにはにかみながら、そんなことを言ってくる。

 俺は思わず緩みそうになる口元を、マフラーに顔を少し埋めて誤魔化した。


 「……俺もそれがいいと思ってた。どうせなら、マフラーも同じ柄のやつ探してみるか」

 「ほんと? えへへ、すっごく楽しみ」


 冷たい風が吹いているはずなのに、胸の奥はじんわりと温かかった。


 その日の夜。

 俺の部屋のキッチンでは、食欲を強烈に刺激する音が鳴り響いていた。


 ジュウウウッ、と分厚い豚肉の脂がフライパンで焼ける音。

 そこに、醤油、みりん、そしてたっぷりのすりおろしニンニクを合わせた特製のタレを回し入れる。

 タレが煮詰まり、甘辛くて香ばしい匂いが一気にリビングへと広がった。


 「んん……すっごくいい匂い……」

 「よし、できたぞ。今日の夕飯はトンテキだ」


 テーブルに皿を並べる。

 メインのトンテキは、タレがよく絡むように切り込みを入れて焼き上げ、千切りキャベツをたっぷりと添えてある。

 汁物は豆腐とわかめのシンプルなお味噌汁にした。


 「いただきます」

 手を合わせて、凛がさっそくトンテキを一口頬張る。


 「んっ……! お肉、分厚いのにすっごく柔らかいっ。それに、このニンニクの効いたタレがご飯にめちゃくちゃ合うよ」

 「よかった。今日は一週間お疲れ様ってことで、ガッツリ系にしてみたんだ。明日は歩き回るし、スタミナつけとけよ」


 「うんっ」と頷き、凛は「ふふっ」と微笑みながら白米をかきこむ。

 彼女が、俺の作ったご飯をこんなに美味しそうに食べてくれる。その姿を見ているだけで、一週間の疲れも吹き飛んでいく気がした。


 「明日は、何時くらいに出発する?」

 「お店の開店と同時に入ろうか。朝から行って、ゆっくり回ろうぜ」

 「わかった。じゃあ、明日の朝ごはんは私がお手伝いするね」

 「お、助かる」


 温かいお味噌汁をすすりながら、明日の予定をすり合わせていく。

 カチャカチャと食器の鳴る音が、静かな部屋に心地よく響いていた。


 夕食の後片付けをして、順番にお風呂を済ませる。

 リビングでのストレッチとマッサージを終えた後、俺は凛を彼女の部屋へと送り届けた。


 「うぅ……お布団、ちょっと冷たい」

 パジャマ姿の凛がベッドに潜り込み、毛布を首元まで引き上げる。


 「すぐ温まるって。明日は朝から出かけるんだから、しっかり寝ろよ」

 「うんっ」


 布団から少しだけ出ている頭をぽんぽんと軽く撫でてやると、凛は目を細めて気持ちよさそうに笑った。


 「おやすみなさい、朝陽くん。……明日、すっごく楽しみ」

 「ああ。おやすみ」


 えへへ、と嬉しそうに笑う顔を見届けてから、部屋の明かりを消してドアを閉める。


 自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がって少し息を吐いた。

 明日のメインは手袋とマフラー選び。

 その合間にクリスマスプレゼントのヒントを探りつつ、隙を見て家用の温かいもこもこ靴下も探す。

 やるべきことは多いが、目を閉じると明日が待ち遠しくて、自然と口角が上がっていた。

第297話、ありがとうございました。

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