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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第264話:お揃いのパジャマと、真夜中の恋バナ

今回は引き続き、凛ちゃん視点。

 夜の9時過ぎ。

 3人順番にお風呂に入り終えた私たちは、リビングに集まって、先日一緒に買ってきたお揃いのパジャマにお着替えをした。


 もこもことしたマシュマロみたいな肌触りの、少し大きめのパーカーとショートパンツ。

 陽菜ちゃんは淡いピンク、沙紀ちゃんは爽やかなミントグリーン、そして私は、朝陽くんにも「可愛い」と褒めてもらった、白とグレーのボーダー柄だ。


「わぁ……っ、すっごく可愛い! しかも肌触り最高!」

「でしょでしょ? 奮発して買った甲斐があったねー!」

「じゃあみんな、湯上がりの一杯いきますか!」


 沙紀ちゃんの掛け声で、私たちは冷蔵庫によく冷やしておいたフルーツ牛乳の小さなビンを手に取り、コツンと乾杯した。

 腰に手を当てて、ゴクゴクと一気に飲み干す。


「ぷはーっ! 美味しいー!」

「お風呂上がりの冷たいの、最高だねっ」


 火照った体に冷たくて甘いフルーツ牛乳が染み渡り、私たちは顔を見合わせてケラケラと笑い合った。


「よしっ、じゃあパジャマ撮影会しよ!」


 陽菜ちゃんの提案で、ベッドの上に可愛いクッションやぬいぐるみを並べて、3人で身を寄せ合った。


「それにしても凛の部屋、本当に居心地いいよね。あ、棚に飾ってある小物とかもすっごくオシャレ!」


 パシャパシャとスマホで自撮りをしながら、沙紀ちゃんが部屋を見回して褒めてくれる。


(ふふっ。それね、この間、朝陽くんと一緒に雑貨屋さんで選んだんだよ)


 誰かに自分の自慢の彼氏のセンスを褒められているようで、私は心の中で密かに胸を張った。


「ねえねえ凛、この写真、瀬戸にも送っちゃおうかな〜?」

「えっ!? だ、ダメだよ! 恥ずかしいから!」

「あはは、凛の顔真っ赤!瀬戸に見せたら絶対『可愛い』って言ってくれるのにー!」


 からかってくる陽菜ちゃんからスマホを奪おうと、ベッドの上でわちゃわちゃとじゃれ合う。

 そんな他愛のない、でも最高に楽しい女子高生らしい時間が過ぎていった。


 そして、時刻は夜の11時。

 私たちは部屋の電気を完全に消して、それぞれの布団に潜り込んだ。

 陽菜ちゃんと沙紀ちゃんは私のベッドへ。

 私は、朝陽くんが運んできてくれた、床に敷いてある下の布団へ。


 静かな暗闇の中。

 隣のベッドから、沙紀ちゃんの少しトーンの落ちた、いかにも『夜の内緒話』といった声が降ってきた。


「……ねえ、凛」

「ん?」

「朝陽くんとは、ぶっちゃけ最近どうなの?」


 きた。

 女子会特有のキラーパスだ。


「ど、どうって……普通だよ?」

「えー? 普通の高校生カップルは、あんなプロみたいなとろとろオムライスのルームサービスなんてしてくれませんー!」

「そうだよそうだよ! ねえ凛、朝陽くんのどこが一番好きなの?」


 陽菜ちゃんまで身を乗り出してきて、容赦ない質問攻めが始まる。


「ど、どこって……全部、だけど……」

「きゃーっ! 全部だって! ねえ、ぶっちゃけキスはもうしたの? どこまで進んでるの?」

「〜〜〜っ! じ、実は……まだ、してなくて……っ」


 私が消え入るような声でそう告白すると、ベッドの上の二人がバクッと大きく息を呑む気配がした。


「「えっ!?」」

「うそっ、まだなの!? あんなに同棲カップルみたいな空気出してるのに!?」

「だ、だって……タイミングとか、恥ずかしいし……っ」


 驚愕する二人の前で、私はドッと顔に血が上るのを感じて、バサッと布団を頭まで被った。


「そ、そっかぁ。ピュアだなぁ……。じゃあさ、凛は朝陽くんのどんなところがそんなに好きなの?」


 暗闇の中、ふわりと、お日様みたいな朝陽くんの匂いが私を包み込む。

 その安心しきってしまう匂いのせいか、布団の中で身悶えしながらも、私の口は自然と彼への想いを紡ぎ始めていた。


「……ご飯が美味しいのもそうだけど。一番は、すっごく優しいところ、かな」

「優しいところ?」

「うん。……いつも、私のことを最優先に考えてくれるの。今日だって、ご飯の心配しなくてもいいから、凛は思いっきり楽しんでこいって、笑って送り出してくれて」


 私が自分の言葉で彼を語るたびに、胸の奥がじんわりと温かくなっていく。


「私が絵のお仕事でいっぱいいっぱいになってる時も、何も言わずに温かいご飯を作って待っててくれるし……。朝陽くんと一緒にいると、私、すごく甘えんぼになっちゃうんだ」


 布団を少しだけ下げて、ベッドの上にいる二人を見上げる。

 暗闇の中でも、窓から差し込むわずかな月明かりで、二人の顔は見えた。


「……そっか。凛、本当に朝陽くんのこと大好きなんだね」


陽菜ちゃんが、心底安心したような、優しい声で言った。

沙紀ちゃんも「うんうん」と深く頷いている。


「凛のその目、本当に幸せそう。学校だと『氷の令嬢』なんて言われてるあの瞳が、朝陽くんの話してる時だけ、とろんって甘く溶けちゃってるもん」

「えっ……」

「ごちそうさまでした! いやー、本当にいい旦那さん見つけたね、凛」

「だ、旦那さんって……まだ高校生だよっ」


 からかわれて再び布団に潜り込む私を見て、二人はクスクスと楽しそうに笑い合った。


「うん。……大好き」


 布団の中で、誰にも聞こえないくらい小さな声で、私はもう一度素直に呟いた。


 二人の寝息が聞こえ始めた頃。

 私はこっそりと布団の中でスマホを開き、朝陽くんとのLINEのトーク画面を見つめた。

 数時間前に来ていた『おやすみ。女子会、楽しめよ』という彼からのメッセージ。


『朝陽くんも、おやすみなさい。大好きだよ』


 そう返信を打って、送信ボタンを押す。

 大好きな友達と、大好きな彼氏。

 私は胸の奥がちぎれそうなほどの温かい多幸感で満たされたまま、朝陽くんの匂いがする布団の中で、ゆっくりと深い眠りへと落ちていった。

第264話、ありがとうございました!

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