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隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第2章

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第255話:映えと、意外な場所にある素敵なお皿

「さて、それじゃあ早速、衣装と食器を探しに行こっか!」


駅前のカフェを出て、俺たちはそのまま近くの大型ショッピングモールへとやってきた。

今日のお目当ては、俺が動画撮影の時に着るための『エプロン』と『部屋着』、そして料理をより美味しそうに見せるための『食器』だ。


「衣装って言っても、ただの部屋着とエプロンだろ?」

「ただの、じゃないよ! 動画の画面にずっと映るんだから、清潔感とか色合いはすっごく大事なんだからね!」


凛がビシッと人差し指を立てて力説する。


「動画の画面作りって、言ってみれば一枚のイラストを完成させるのと同じだと思うの。だから、服やお皿の色が料理の邪魔をしないように、ちゃんと計算して選ばないと」

「なるほど……。そういう画面作りのセンスは、やっぱりイラストレーターである凛に頼りたいな。俺、服の組み合わせとか全然自信ないし」


俺が誤魔化しなしの素直な気持ちでそう言うと、凛はピタッと動きを止め、みるみるうちに耳の先まで真っ赤に染めてしまった。


「も、もうっ……! 朝陽くんはすぐそうやって、サラッと褒めるんだから……っ。わかった、任せてよね! 私の持てるすべてのセンスを使って、朝陽くんを完璧にプロデュースしてあげる!」


照れ隠しのように俺の腕をグイッと引っ張り、凛は意気揚々とアパレルショップへと足を踏み入れた。


「うーん……こっちの明るい色もいいけど、朝陽くんの優しそうな雰囲気と、料理の邪魔をしない色を考えると……これかな!」


生活雑貨も扱っているアパレルショップで、凛が迷いなく手に取ったのは、少し大人っぽいチャコールグレーのシンプルなエプロンだった。

そしてその足でメンズ服のコーナーへ向かい、「エプロンの下に着るなら、これ!」と、清潔感のあるオフホワイトの秋物ニットをチョイスする。


「よし、朝陽くん! これ持って、そこの試着室へゴー!」

「はいはい、分かりましたよ」


俺は専属スタイリストに言われるがまま、試着室に入って着替えを済ませた。

ニットの上からチャコールグレーのエプロンを締め、カーテンをシャッと開ける。


「どうかな、凛。変じゃないか?」

「…………っ」


俺の姿を見た瞬間、凛は目を丸くして固まってしまった。

そして、両手で口元を覆い、あからさまに視線を泳がせ始める。


「えっ、と……その……」

「凛?」

「……っ、すっごく、かっこいい…です…。」


顔を真っ赤にして俯いてしまう凛。

自分でコーディネートしておいて自分で照れている彼女が可愛くて、俺は思わず吹き出してしまった。


「凛が選んでくれたんだから、間違いないよ。ありがとう、これ買うよ」

「う、うん……! 撮影の時だけじゃなくて、普段からそれ着てほしいかも……」


小さな声で呟く凛の頭をポンと撫でて、俺たちはホクホク顔でレジへと向かった。


服とエプロンを無事に買い終え、次に向かったのは食器コーナーだ。

お洒落な洋食器や、パスタに合いそうな丸いお皿はたくさん見つかるのだが、俺が思い描いている『あるお皿』がなかなか見つからない。


「うーん……カレイの煮付けとか、お刺身を乗せるような、横長で渋い和食器が欲しいんだけどな。ここにはあんまり置いてないか」

「そうだね。可愛いお皿はいっぱいあるんだけど、和食に特化したものってなると難しいかも」


二人で腕を組んで悩んでいると、ふと、昨日機材について調べていた時に見つけたネットの書き込みを思い出した。


「そういえば……ちょっと意外な場所なんだけど、心当たりがあるんだ。駅の反対側まで歩いてもいいか?」

「うん? 全然いいけど、雑貨屋さんがあるの?」

「いや、雑貨屋じゃないんだ」


俺に手を引かれ、不思議そうに首を傾げる凛と一緒に、駅を通り抜けて反対側の大きな通りへ。

数分歩いて到着した大きな建物の前で、凛は「えっ?」と驚きの声を上げた。


「朝陽くん……ここって、釣具屋さん、だよね?」

「ああ。全国チェーンの大型店らしい」


大きな看板には、魚のマークと『フィッシング』の文字。

凛が目をパチクリとさせている。


「釣具屋さんに、お皿が売ってるの? お魚を釣る道具とか、エサとかしかないんじゃないの!?」

「俺もネットで見ただけなんだけどさ。とりあえず入ってみようぜ」


自動ドアを抜けて店内に入ると、凛はさらに驚いたように辺りを見回した。


「わぁ……! もっと磯の匂いとかするのかと思ってたけど、すっごく綺麗で明るいね!」

「最近の大型店は、アウトドアショップみたいにお洒落なんだってさ」


広々とした店内を歩きながら、俺はふと隣を歩く凛に尋ねてみた。


「そういえば凛って、釣りとかやったことあるか?」

「ううん、一回もないよ。朝陽くんは?」

「俺もない。海釣りとか、ちょっと面白そうだけどな」

「……私、朝陽くんの作るお魚料理すっごく好きだから、そのお魚がどうやって釣れるのか、ちょっと気になってきたかも。ルアー? っていうのかな、可愛い色のもいっぱいあるし」


興味津々で色とりどりのルアーのコーナーを見つめる凛。

その横顔を見ていたら、自然と言葉が口をついて出ていた。


「じゃあ、動画作りが落ち着いたら……今度、二人で釣りに行ってみるか? 初心者向けの海釣り公園とかなら、道具もレンタルできるみたいだし」

「えっ! 行く!! 絶対行く!!」


凛はパァッと顔を輝かせ、俺の腕にギュッと抱きついてきた。


「約束だよ! 朝陽くんと釣りデート、すっごく楽しみ!」

「ああ、約束だ。釣った魚で俺が最高のご飯作ってやるから」


そんな甘い未来の約束を交わしながら奥へと進むと、お目当てのコーナーが見えてきた。


「あっ、朝陽くん見て! あそこ!」

「おっ、あったあった」


そこは、釣った魚を美味しく食べるための『専用調理器具』や『和食器』がズラリと並ぶコーナーだった。

魚を捌くための本格的な包丁の隣に、お刺身や焼き魚を乗せると最高に映える、こだわりの和食器がたくさん陳列されているのだ。


「うわぁ、すごい! 本当に綺麗なお皿がいっぱいある!」

「釣った魚を写真に撮ってSNSに上げる人も多いから、こういう渋くてカッコいい和食器が充実してるらしいんだ」

「なるほど〜! あっ、朝陽くん、これなんてどう? 深い青色で、お刺身を乗せたら絶対映えるよ!」

「いいな。こっちの横長の黒いお皿も、煮付けにぴったりだ」


意外な穴場での発見に、俺たちのテンションは最高潮だった。

「これにだし巻き卵乗せたいね」「こっちには焼き鮭だな」と、二人でワイワイと言い合いながらお皿を選ぶ時間は、まるで新婚生活の準備をしているようで、胸の奥がくすぐったく、そしてどうしようもなく温かかった。


衣装も、お皿も揃った。

俺たちの新しい挑戦が、いよいよ本格的に動き出そうとしていた。

第255話、ありがとうございました!

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